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ともみの部屋 #2

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伊佐知美の、世界一周の旅とエッセイ。2016年10月〜
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#小説

一度は暮らしたいと思った国を、自由に歩ける人生の、なんと軽やかで美しいことだろう【🇪🇸スペイン・サンティアゴ/レオン】

一度は暮らしたいと思った国を、自由に歩ける人生の、なんと軽やかで美しいことだろう【🇪🇸スペイン・サンティアゴ/レオン】

一度は暮らしたいと思ったことのある国を、自由に歩ける人生の、なんと軽やかで美しいことだろう、とスペインのサンティアゴを眺めながら思い出す。世界中、たくさんの国を訪れたけれど、いくつかの国は私にとって特別で、スペインも、そう、その特別な国のひとつだった。きっとこれからもそうなのだろう。もしかしたら、人生の中で長く過ごすこともあるかもしれない場所だ、とすらやっぱり思う。

スペインを訪れるのは4回目。

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「歩いていきたい日々」を、自覚することから全ては始まる #沖縄移住日記

「歩いていきたい日々」を、自覚することから全ては始まる #沖縄移住日記

目が覚めて、窓の外から射す光を確認する日々が、ずうっと続くと思っていたのに、どうやら南の島々にも冬のかけらというものは到達するようで、私はカーテンを開けて、今日も沖縄が厚い雲に覆われていることを知る。

けれど問題は、あなたがここに居ないことだった。ずうっと居ないなら、それでいいのに、たまに居るから、「居ない」が空白のように思える。

大丈夫、でも私は、「ひとり」が得意。「ひとり」がないと、「わた

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島と、花と、日々と。きっとこれからの私を、彩るもの。

島と、花と、日々と。きっとこれからの私を、彩るもの。

新しい部屋に足を一歩踏み入れたとき、「あぁ、風が通り抜ける美しい場所だな」と思った。

高台の、ビンテージマンションの最上階。二面採光どころではない、三面、ほぼ四面、みたいな明るさで、部屋にいながらにして朝陽と夕陽、さらには海と、誰もが知っているであろう歴史的建造物が見えた。

「窓を開けると、風が気持ちよく吹きます」。この部屋を知るひとは、私にそう言伝をした。着いたら、まず窓を開けよう。

そう

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「このまま旅を続けていても、どこへもたどり着けないから」

「このまま旅を続けていても、どこへもたどり着けないから」

愛していた、愛していた「旅」と「書くこと」。今も変わらず「愛している」。けれどそれはまた別の顔をもって、いま私の横にそっと立つ。

「どこへ向かいたいの?」。旅に出てから数年経って、私がわたしに、もっとも問うていた一言。

「このまま旅を続けていても、どこへもたどり着けないから」。あの夜ぽつりとこぼした私に、あなたはそっと、「どこかへたどり着きたい、の?」とだけ聞いた。

その返された言葉の響きを

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それでも抱えて生きていく人たちの|カツセマサヒコ『明け方の若者たち』

それでも抱えて生きていく人たちの|カツセマサヒコ『明け方の若者たち』

人は、生きていかなければならない。

感情が水たまりのようにこぼれ落ちていく悲しみを経験しても、その悲しみが時間とともにゆっくりと霞んでいったとしても、しっかりとまだ心の奥に残っていて、ふとした折につんと胸を苦しくさせること。

捨てられなかったプライドや見栄、大切にしたかった記憶、間違っているとわかっていても、この道ではないのだと「物分りのいいほうの私」は自覚できていたとしても。それでも手放した

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時に写真は、言葉よりも鮮明に気持ちを示す。半径数メートルになった私たちの世界で

時に写真は、言葉よりも鮮明に気持ちを示す。半径数メートルになった私たちの世界で

これは、私の独白、みたいなもの。

そうそう。「旅に出てはいけない」と世界がなって、私がそのうちに感じたのが、「出なくてもいいのか」という、じつは少しだけ安堵に似た気持ちだったこと。

「急いで生きなければならない」とか、「頑張る」……つまり「背伸びをし続けて走る」とか、「誰かと競争したり、比べられたり、比べちゃったり」というような世界から、少しだけ距離をとって、「私を取り戻したい」とこの数年感じ

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朝のルーティン、時の刻みを教えてくれる花さえあれば

朝のルーティン、時の刻みを教えてくれる花さえあれば

朝、目が覚めたら私はまず指先で大切なものを探す。それから、カーテンを開け、窓を開けて、新しい空気を部屋の中に取り込む。すべてはそこから始まってゆく。1日。

「Verseau」というハーブブランドを、友人がつくっている。「Akeru」というなんとも朝にぴったりのお茶があるので、それを淹れよう、とお湯を沸かそうとする……ところで、昨夜飲みかけのまま、シンクに置いてしまったワイングラスに入ったビールを

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綴らなければ手のひらからこぼれ落ちてしまう日々のこと

綴らなければ手のひらからこぼれ落ちてしまう日々のこと

陽の光で目が覚めて、家のことを済ませて自宅で仕事をはじめ、お昼ごはんを食べて仕事やらなにやらをしていたら空が暗くなって、そして眠ってまた朝の光に包まれる。

そんなことを繰り返していたら、3月が終わろうとし始めた。さっきまで3月3日くらいで、「そろそろ『3月9日』聴かなきゃな」とかって思っていたのに、いつの間に30日なんて数字を迎えたのだろう?

世の中が、大きく変わる音のした一ヶ月だった。

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アンテナを張って生きること、蕾咲きゆく美しさ

アンテナを張って生きること、蕾咲きゆく美しさ

『灯台もと暮らし』という媒体をつくっていた時、チームの中で暗黙のルールみたいなものが存在していた。それは、「3つ揃ったかどうか」ということ。

もとは、鈴木絵美里さんという、女性編集者の方をインタビューさせてもらったときに、話題に出たのがきっかけだったと思う。

「3つ揃ったか」というのは、生息地や価値基準の異なる(と思われる)まったく違う層に生きる人たち「3方から、同じキーワードを聞くようになっ

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【11/20@福岡】シャンディ&伊佐知美 旅大学でトークイベントします!

【11/20@福岡】シャンディ&伊佐知美 旅大学でトークイベントします!

旅好きならきっともうみんなが知っている、言わずと知れたTABIPPO。

私も例に漏れず大好きです。運営している人たちが、とにかくいいやつなんだよね。

初めて、ふたりでトークします!

たのしみ。九州ですが、近くにいる方、ぜひ遊びに来てください☺️

きちんと開示していった方がいいよ、あなたは。と彼は言った

きちんと開示していった方がいいよ、あなたは。と彼は言った

遠い異国の景色を撮ることが、わたしの生きる意味なんだと思っていたけれど。

なんだかそんな大層なことはなかったようで、日常と非日常のあいだにある、閉じ込めなければ流れていってしまうような、そんな何気ない瞬間を、おさめたかっただけなのかもしれないと。

最近、日本に帰ってきて、そして昔から付き合いのある友だちの家族なんかを撮らせてもらって、改めて思う。

私は、日常における選択肢を、ただ増やしたかっ

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「いつもと違う」を少しずつ取り入れてゆくだけで

「いつもと違う」を少しずつ取り入れてゆくだけで

すごくくだらなくて、小さなことを書こうと思う。けれど、きっと毎日にとって大切なこと。

最近、秋だ。まぎれもない事実として。冬に向かいつつある秋。地球が時折「困っているの」と叫び声を上げる昨今だから、「当たり前じゃん」と言われるような、秋の次は冬、というような順番が愛しい。

ちゃんと、その季節の美しさを享受して生きたい、と思う。できうる限りの時間を使って。

そう、私はいま、「秋だから、紅葉が見

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#Z6の世界はどんなだろう フォトウォークを開催しました! #Nikon #GENIC

#Z6の世界はどんなだろう フォトウォークを開催しました! #Nikon #GENIC

キンモクセイ香る、秋の恵比寿。カメラを持って、街を歩き、写真を撮る。

ただそれだけ。たったそれだけなんだけれど、それを「フォトウォーク」と呼んだら、土曜日の午後がぱっと幸せで、照らされる。

そんな時間を過ごしてきました。名前は、「伊佐知美とGENICと、Nikon Z 6でフォトウォーク」。

▽ GENIC×伊佐知美 コラボイベントこのフォトウォークイベントは、主催者の身で言うのもなんだけれ

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「写真が上手くないと、胸を張ってカメラが好きと言えない気がして」#旅と写真と文章と

「写真が上手くないと、胸を張ってカメラが好きと言えない気がして」#旅と写真と文章と

仕事終わりの、六本木。ひょんなことから一緒にトマト坦々麺とビールを飲んで帰ろう、とオススメの店に立ち寄る。

雨が上がったあとの、東京の匂い。水たまりがあったら、映る景色が、きっと綺麗だったろうな。それは昔読んだ小説『卒業写真』の世界のように。と、今夜の食事を選ぶ前に、カメラのことを考える。

私は、写真一本で食べていけるような、歴史に名を残せる写真家ではない。きっと、一世も風靡できない。

けれ

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