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一度は暮らしたいと思った国を、自由に歩ける人生の、なんと軽やかで美しいことだろう【🇪🇸スペイン・サンティアゴ/レオン】

一度は暮らしたいと思ったことのある国を、自由に歩ける人生の、なんと軽やかで美しいことだろう、とスペインのサンティアゴを眺めながら思い出す。世界中、たくさんの国を訪れたけれど、いくつかの国は私にとって特別で、スペインも、そう、その特別な国のひとつだった。きっとこれからもそうなのだろう。もしかしたら、人生の中で長く過ごすこともあるかもしれない場所だ、とすらやっぱり思う。

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スペインを訪れるのは4回目。サグラダファミリアを見た1度目、マドリードやセビージャ、グラナダ、ミハス、トレドなど、国内を周遊した2度目。3度目は、モロッコなどヨーロッパ近辺の国を旅していた時、ふと「サグラダファミリアが見たいな」と思い立って、数日だけだけど滞在した。

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4回目となる今回は、過去の旅で訪れたことのない、新しい地域へ足を踏み入れた。スペインの北西、海を渡ればフランス、ポルトガルに程近い、北西部のサンティアゴとレオンという旧市街を抱く街。

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ローマは知ってる。エルサレムも知っている。けれど私たち(少なくとも私)は、サンティアゴが、「キリスト教の三大聖地のうちのひとつ」という意識が今まで本当に欠けていた。サンティアゴ。サンティアゴ・デ・コンポステーラの名前は、旅好きであれば一度は聞いたことがあるだろう。世界遺産に指定されている、巡礼の道。「歩くもの」というイメージしか、正直なかった。長い距離を、長い時間、神聖な気持ちで、歩いて目指す。その最終目的地が、サンティアゴという地であった。

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旅のはじまりの形のひとつである、巡礼の道のそれは、私が稚拙に想像していたよりもずっと多様で、懐が深く、広く世界に開かれている魅力的なものだと、今回の旅の間で私は学ぶ。

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もちろん、救済を求めて、宗教的背景から歩く人も、世界中たくさんいる。一方で、その形は多様で、そもそも巡礼路はフランス、ポルトガル、そしてスペインの3カ国に広がり、決められた出発点は厳密にはなく、「歩きたい距離を、歩きたいペースで、ありたいスタイルで進んでいい」という事実も知った。家族で週末に短距離だけ歩く人、スポーツのように楽しむ人、自分と向き合う時間を得るために選んだ人、年一度の休みのたびにサンティアゴ・デ・コンポステーラに戻ってくる人。

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ただ、多様で自由である「カミーノ・デ・サンティアゴ(スペイン語で巡礼路を歩くこと)」旅の根底に、ひとつ共通する軸が在るとしたら、それは「皆のゴールが同じ場所に定まっていてること」だった。

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私が今まで実行してきた旅と、大きく違うのはそこである。それぞれが、それぞれの時間を過ごして、やってくるその先は、皆がサンティアゴ。出会ったり、別れたり、名前も知らない誰かと交流して、道中でまた再び出会うこともあるだろう。だって、最後は同じ場所を目指すのだから。

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不思議で、美しい道のりなのだろう、と想像する。全長2000キロを歩く人もいれば、サンティアゴ巡礼の証明書は、「100キロ以上」となっているから、ミニマムの100キロで終える人もいるそうだ。最近は愛犬と歩く人も増えているし、姉妹やカップル、団体も多く見た。余談だけれど、サンティアゴの1年でもっとも大切な日は、サンティアゴ大聖堂に眠っているヤコブの生誕を祝う「ヤコブ祭」の日なのだけれど、私の誕生日は偶然にもヤコブと同じ7月25日だった。いつか、そう遠くない未来に、7月25日のゴールを目指して、1ヶ月、2ヶ月、この巡礼の道を歩くのもいいなと思う。

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今回は、巡礼にゆかりのある街を、訪れるという旅する仕事のためここに来た。そうしたら、まんまとその魅力にやられてしまった。流れゆく街並み、石畳に反射するスペイン語、朝から晩まで賑わうバルのタパスの良い香り、世界中から訪れる旅人たち。

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歩いてみたい、と純粋に思うようになった。大人になって、新しい夢が芽生えるなんて。今年、先に富士登山を実行していてよかった。今まで、熊野古道の巡礼や、お遍路にもそこまで現実味を持って憧れることはなかったけれど、サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路と、熊野古道は姉妹「道」協定を、結んでいるそうなので、もしかしたらスペインを歩いた先に、和歌山を歩く日もあるかもしれない。

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スペイン。2020年に世界が変わらなければ、数年暮らしていたかもしれない、住むことを計画していた国へ、2022年戻ってきた。海外。私、旅することが、やっぱり好きだ。沖縄と、東京と、海外と。「ここ」と「どこか」を、行ったり来たり。会社の名前を、Somewhere&Here、と名づけた理由は、私の根底に流れる血、みたいなものの表出なのだろうと思う。

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行ったり来たりする中で、生まれる気持ちや出会う何か。紡いでいって、感じたことを可視化していく人生を歩みたい。経験したことを、風に溶かして記憶の向こうに流してしまうのではなくて、手のひらですくって、残ったものを愛でるように。そう、忘れないように、忘れられないように、旅もモノも記憶も景色も、自然も色も匂いも感情も。紡いでいきたい。その繰り返しで、きっと私は生きていきたいのだろうと思うから。

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