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京都 - 紅葉艶めく時節に

昨秋、一泊二日で京都を訪れた私は、二日目、朝から予約していた無鄰菴むりんあんを訪ねた。

一日目に訪れたエルメスの展覧会 - 京都とエルメス

雨の京都

美しい青空に恵まれた二日目の京都

無鄰菴むりんあん

無鄰菴は事前予約制を取っており、かつ時間枠毎の上限人数も設けている(入場後の時間制限はない)。事前の下調べで朝一の予約がベストとにらんだ私は午前9時の予約をしたのだが、前日の雨が止み、まるで当たりくじを引いたかのように美しいお天気に恵まれた。この日、私は京都での秋の朝の美しいひと時を楽しむことができた - そう、この日の朝は本当に素晴らしかった。

瀟洒しょうしゃな玄関口。ここから見える正面の “絵” もバランスよく美しい

11月も下旬だというのにそれほど寒くもなく、入ってすぐの広間で、アナウンサーのような語り口のスタッフの方の流暢なガイドを聞いた後、同じタイミングで入場したゲストたちは、思い思いに行きたい場所に散っていった。庭園を散策する人、縁側に腰を下ろして早速飲み物を注文する人…

庭園から望む右手二棟が日本家屋、左手が洋館

この無鄰菴むりんあんは、明治時代の政治家、山縣やまがた有朋ありともによって建てられた別荘で、今は京都府の管理下になっているという。美しくしつらえられた庭園、古いながら手入れされ、清潔感と趣ある邸宅内、さらには前日の雨で庭園の苔は十分に水分を含んで青々と美しく、どこをとっても見応えがあった。一歩無鄰菴に足を踏み入れると、それはまるでサンクチュアリーのようで、私は京都のこの混雑ぶりをひと時忘れ、それは穏やかな秋の朝を過ごすことができた。

陽当たり良し、眺め良しで素晴らしい時間を過ごせた “特等席”
喫茶セットはお抹茶と村上開新堂のロシアケーキ

無鄰菴では喫茶セット(飲み物とスイーツ)を付けることができる。私も朝の “おめざ” にと予約時から楽しみにしていたのだけれど、これもまた当たりで、縁側の陽の当たる特等席(眺めがよく陽も当たる暖かい縁側の一席だった)で、喫茶セットを楽しみながら、気がつけば小一時間もぼんやりと庭を眺めていた。それは本当に気持ちのいい場所と時間で、他のゲストのために…この良い席を空けるべきだろうか、とそんな呟きがうっすら脳裏をよぎったものの、その気持ち良さに私の腰はすっかり重くなってしまい、気がついたら本当に、長い間そこに佇んでいた。特に何をするわけでもなく、ぼんやりと美しい庭園を眺め日なたぼっこをしながら。

Webサイトによれば “コロナウイルス感染防止のため” の事前予約制、とあるので、まだしばらくはこの状況が続くと思われるが、紅葉だけでなく四季折々楽しめそうな無鄰菴、つい自分のサンクチュアリーとして取っておきたくなるような、すてきな場所であった。

無鄰菴むりんあん
https://murin-an.jp

南禅寺

午前中の大半を無鄰菴で費やしてしまった私が、次の目的地南禅寺へ到着したのはお昼近く。紅葉の秋も桜の春も、早起きで朝一に乗り込むのが鉄則だと悟ったその時。南禅寺は観光客で溢れかえっていて、私は人をかき分けながら南禅寺を巡った。

門からすでに美しい紅葉が望む
燃えるように赤い紅葉もみじが青い空に映える
門の向こうの紅葉が一際きれいに見えるのは、気のせいだろうか
前日の雨で苔も青々と繁る

秋の京都の美しさは、言葉より何より、写真が雄弁に語ってくれるというもの。私は一頻ひとしきり南禅寺をまわると満足し、今回のもう一つの目的、大学の恩師と会うため、待ち合わせ場所のホテルオークラへ徒歩で向かった。それはもちろん、京都の街歩きを楽しむために。

南禅寺
https://www.nanzenji.or.jp

街歩きを愉しむ

ビートルズの “アビーロード” 風に撮れた平安神宮の大鳥居前
お寺と黒猫。和む京都散歩の午後
京都に来る度、まるでご機嫌を伺うように様子を見ずにはいられない鴨川。この日の鴨川も穏やかで心和んだ

楽しい時間はあっという間に過ぎ去る。私は束の間、秋の晴れ間の京都を堪能し、ここもまた人でいっぱいのオークラのカフェで恩師を待った。恩師とは5年半ぶりの再会で、話に花が咲き帰りの新幹線ホームにたどり着いたのは発車5分前。ぎゅっと楽しみが凝縮した、お気に入りのおもちゃ箱のようだったこの二日間。ふとした思いつきで訪れた今回の京都は、神様からの思いがけないギフトのようでもあり、思い返す度ほっこりと胸が温かくなる、そんな思い出ばかりになった旅。袖振り合うも多生の縁で、関わった方々にお礼を申し上げたい。次はいつ京都に行こうかと、ペンを走らせるそばから京都に想い馳せる私である。

※ 挿入されている写真及び画像はすべて筆者の撮影によるものです。

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