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読書暮らし

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#書評

今度の休みはあの物語の舞台に行こうか

今度の休みはあの物語の舞台に行こうか

好きな物語のジャンルは?と聞かれると「ファンタジー」と答えることほぼ200%のわたしだけど、それはもう間違いないのだけど、ひとつだけ困ってしまうことがある。

それはわたしは読んだ物語にすっごく影響を受けやすいこと。

登場する食べものはすぐに食べたくなってしまうし、舞台になる場所は旅行にかこつけて行きたくなる。

ファンタジーの作品は大好きだけど、空想のものが多すぎて再現しようがないのだ。だから

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“借りる”の定義ってなんだろう/『床下の小人たち』メアリー・ノートン

“借りる”の定義ってなんだろう/『床下の小人たち』メアリー・ノートン

金曜ロードショーに合わせてなのか、わたしもジブリ祭りをやっているような気がするこの頃です。

今日読んだのは『床下の小人たち』。

『借りぐらしのアリエッティ』の原作になった作品です。

他のジブリ作品と違って、何度も繰り返し観た!と言えるものではないのですが、音楽とシーンがちょっと斬新だなと印象的だったのと、人間社会で使っているものを小人から見た目線のそこサイズの比率の違いがすごく面白くてきゅん

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読書記録を始めて気がついた3つのこと

読書記録を始めて気がついた3つのこと

「だいすきな本に関わる仕事がしたいなあ」と思ったことが、前に働いていた仕事をやめたきっかけでした。

物語を書いてみるという気持ちとはまた少し種類が違うように思ったので、それに近いかもしれないし、もしかしたらつながるかもしれないことと思ってはじめてみたのが、言葉に関わることと文章に関わること。

経験も知識も関係性も全くのゼロの状態からのスタートだったけれど、本当に本当にありがたいことに少しずつだ

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ひたひたとやってくる静かな狂気/『おとぎ話の忘れ物』小川洋子、樋上公実子

ひたひたとやってくる静かな狂気/『おとぎ話の忘れ物』小川洋子、樋上公実子

「何の遠慮もいりません。元々は忘れ物なのですから」

こういう始まりかた、たまらないなと思います。

だいすきです。

キャンディ屋さんにある、私設図書館。

そこはただの図書館ではなく、世界中の駅にあった『忘れ物保管室』から集められたおとぎ話の忘れ物だというのです。

それは一体どんなお話なのでしょうか。

まるで図書館に入ってしまったかのような、不思議な感覚に襲われる挿絵と一緒に語りかけてくれ

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ミステリーがすきな理由/『屍人荘の殺人』今村昌弘

ミステリーがすきな理由/『屍人荘の殺人』今村昌弘

「本格ミステリ」の定義ってなんだろう。

難しいトリックがあって、人も死んじゃったりなんかして、終盤に差し掛かる頃に「どうぞあなたも考えてみてください」とそれを提示されて。

あとは探偵が「さあ」とか「それでは」とか言いだして、鮮やかに解決したりなんかして。

そんなふうにぼんやりと思っていたけれど、もしかしたらちょっと違うかもしれない。

さらには「新本格ミステリ」というものもあって、なんかちょ

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小さな革命者たち/『斜陽』太宰治

小さな革命者たち/『斜陽』太宰治

読んでいてどこがが捻れていくようなぐにゃりとした感覚に襲われた。

登場人物全員が己の中にだけ確かな正義があり、それに乗っ取って全員が確実に、静かに破滅してゆく物語だ。





『日本で最後の貴婦人』である、お母さまと娘のかず子。父が亡くなったのち、ふたりは優雅な、おままごとのような生活を送っていた。そこへ戦争へ行き行方不明になっていた、弟の直治が帰ってくる。

思うと、その日あたりが私た

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立ち止まって考えること/『魔女の宅急便②』角野栄子

立ち止まって考えること/『魔女の宅急便②』角野栄子

今年の夏は魔女関連の物語と、文豪系を攻めてみようと思っているらしいわたし。

意識してなかったのだけど、手に取る本がそういうのばっかりなので多分そういう気分なのだと思うのです。

少し前にキキの物語を始めたので、今日はその続き。

物語は1巻につき、ひとつ歳を取るので2巻のキキは14歳になりました。

里帰りしていたキキがコリコの町に帰ってくるところから始まります。

ただただ、町の人に受け入れら

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かすかな冷覚/『檸檬』梶井基次郎

かすかな冷覚/『檸檬』梶井基次郎

暑さゆえにか、体力がどんどん失われてゆく。

読書をするには体力が必要だ。

単純に文字を追い続けるので、目が疲れてしまってはどんなに面白い物語だって先に進むことはできないし、持ち上げ続ける腕もそうだ。

それに、物語を読むということは「はじめまして」から始まり、誰かや何かの人生を覗き見したり、また追体験をすることになる。

わたしは自他共に認める活字中毒だと自覚しているけれど、それでも本を読めな

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どこまでが現実なのか/『魔女を忘れてる』小林めぐみ

どこまでが現実なのか/『魔女を忘れてる』小林めぐみ

すっかり魔女めいているここ最近。

今日、読んでいたのは『魔女を忘れてる』という物語だ。

あらすじには幻想ミステリーと書いてあった。

ミステリーなら大好物である。

でも読み進めていくうちに「おや…」と気付き、中盤に差し掛かる頃には「おやおや…」と思いながら読んでいた。

これはミステリーというよりもホラーよりではなかろうか。

どんなにえげつなく血が出ようが、わけも分からぬ殺人が起きようが、

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魔女の生きかた/『西の魔女が死んだ』梨木香歩

魔女の生きかた/『西の魔女が死んだ』梨木香歩

魔女というのはいったい何なのだろうか。

“ファンタジー”に目がないわたしは、当然のように「魔法」がすきだし、それを使える「魔法使い」にも憧れるし、とりわけ同じ性別だからか「魔女」への憧れは気が付いたときから持っていた。

とはいえ、単純に「魔法」が使える女性の「魔法使い」だから「魔女」という感覚にはならないのはわたしだけだろうか。

「魔女」にはもっと神秘的で、もっと魅力的な何かを感じてしまう。

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風に吹かれて/『風にのってきたメアリー・ポピンズ』

風に吹かれて/『風にのってきたメアリー・ポピンズ』

その人が、門をはいると、いきなり、風で空中にもちあげられて、家のところまで、吹きつけられたように見えました。ちょうど、風が、はじめに門のところまで運んできて、その人が門を開けるのをまって、またもちあげて、バッグやなにもかもいっしょに、玄関のところへ、ほうりつけたようなぐあいでした。

メアリー・ポピンズの登場はこんな風でした。

バンクス家にいるマイケルとジェインと双子の赤ちゃんのナニーさん。(乳

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すぐお隣の遠い世界/『地下室からのふしぎな旅』

すぐお隣の遠い世界/『地下室からのふしぎな旅』

すっかり柏葉幸子さんの世界にひたりっきりです。

今日、読んでいたのは『地下室からのふしぎな旅』。

ちょっとしたことがきっかけでふしぎな世界に行ってしまうのは『霧のむこうのふしぎな町』や『大おばさんの不思議なレシピ』とも少し似ているかもしれないけれど、この物語はこちらから行くのではなく向こうから飛び込んできました。

叔母であるチィおばさんの家におつかいを頼まれたアカネ。

変わり者であるチィお

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ぶきっちょのおせっかい/『大おばさんの不思議なレシピ』

ぶきっちょのおせっかい/『大おばさんの不思議なレシピ』

自分でも不思議なもので、以前このブログで『霧のむこうのふしぎな町』を紹介するまで、この『大おばさんの不思議なレシピ』のことをすっかり忘れていた。

読んでいるなかで、なんだかこういう女の子知っている気がする、と思い作者の名前を検索しタイトルをみて思い出したのだった。

「ああわたし小さいころ、この本のことだいすきだったな」って。

『レシピ』とか『ハーブ』とか『花言葉』とか、あとは『魔女』や『神話

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少しの不思議をあなたに/『家守綺譚』

少しの不思議をあなたに/『家守綺譚』

それはいつの時代のことなのだろうか。

現代なのか。少し前のことなのか。

それともずうっと昔のことなのか。

亡くなった友人・高堂の実家に住むことになった物書きの主人公は、その家を中心に起こる、不思議な現象の数々に出会いながら過ごしていくようになる。

ーーサルスベリのやつが、お前に懸想をしている。
ーー……ふむ。
先の怪異はその故か。

そして、亡くなったはずの高堂も時折ふらりと出てきては、主

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