0711のコピー

すぐお隣の遠い世界/『地下室からのふしぎな旅』

すっかり柏葉幸子さんの世界にひたりっきりです。

今日、読んでいたのは『地下室からのふしぎな旅』。

ちょっとしたことがきっかけでふしぎな世界に行ってしまうのは『霧のむこうのふしぎな町』や『大おばさんの不思議なレシピ』とも少し似ているかもしれないけれど、この物語はこちらから行くのではなく向こうから飛び込んできました。

叔母であるチィおばさんの家におつかいを頼まれたアカネ。

変わり者であるチィおばさんのことが苦手なアカネはいやいや行くのですが、おばさんの家の地下室であやしい男の人が突然現れます。

チィおばさんの地下室は男の人がいた世界と微妙に重なりあう位置に属しているようで、その場所の契約更新のために男の人がやってきた世界に行かなくては行けないんだとか。

「ついて行かなくてもよかったのに」とアカネは後悔するのですが、とんでもなく自由に生きるおばさんだけには任せておけず、一緒に旅をすることになります。アカネはおばさんのことをこう怒ります。

もう、のんきで、食いしんぼうで、変わり者で、おこりっぽくて

そんなアカネ自身も、ぼうっとしているからという理由でカスミという名前で呼ばれ続けます。

チィおばさん一言めはだいたいいつもこうです。

「もう、カスミなんだから」

納得がいかないことばかりですが「すぐだから」と連れて行かれた先であちこち旅に出なくては行けなくなってしまいます。

風変わりなキャラクターと設定ですが、決してむちゃくちゃな訳ではなく、ふわ〜〜っと「ふしぎ」につつまれるように読み進めることができることがこの作者の魅力だなと思います。

それから細部の設定がなんて夢があるんだろう、と。

アカネたちが訪れたある町に置いてある白い糸の名前なんですが、

「さぎ草のさきはじめの白。」
「夕立ぶくみの夏の雲の白。」
「泡だてクリームの白。」
「くもの糸の白。」

これだけの種類が同じ白でも出てくるなんて、、。

しかもどの白も微妙に違うんだなと想像ができることが本当に素敵な表現だなと思うのです。


結局、アカネは「カスミ」ではなく「アカネ」と呼んでもらえるのか、チィおばさんと仲良くなれるのか、元いた世界に戻れるのか、、、手元に置いて何度でも読みたい作品にまた出会うことができました。

ほんとうの自分になりたくて、もやもやもがいてる人に読んでほしい一冊。



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