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毎日書くやつ

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ルールは以下。 ・書く時間は1時間以内。 ・書く分量は原稿用紙1枚分以上。 ・書く頻度は毎日。 ・書く道具はスマホ。 ・書く内容はなんでもいい。
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2019年6月の記事一覧

さよなら、おつがつい(12日目)

3歳の娘の言語能力がここしばらくすごい勢いで成長している。
今年の初めごろにはまだあまり会話が通じなかったのに、春ごろにはよく読み聞かせた絵本を開いたらとつぜん読み上げはじめ、最近は複雑な構文の文章がいきなり口から飛び出てきて驚くことも多い。

そんな娘が近ごろいちばん好きな絵本はせなけいこ著『おばけのてんぷら』で、毎日何回もくりかえし読んでいる。

主人公のうさこちゃんは食いしん坊かつ『らんま1

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忘れてしまう夜のこと(11日目)

酒を飲みながら波長の合う人と話していると、ICレコーダーを回しとけばよかったなんて思うことがしばしばある。
話しているうちに自分の感覚がどんどん拡張されていって、そのテリトリーが相手の感覚と接触して共鳴し、永遠に終わらない卓球のラリーみたいに会話が加速していって、心が知らないどこかへたどり着いたような気分になる時がある。

で、こういう夜のために生きているんだよな、と思いながらいつのまにか家に帰り

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リア充なのにルサンチマン(10日目)

先日観に行った湯浅政明監督『きみと、波にのれたら』が、正直とても合わなくってがっかりしていたのだが、その後タイムラインでいろんな方の感想を見ると、自分の目がルサンチマンで曇っていたのだろうかと思えてきてなかなか辛い。
リア充爆発しろの精神が爆発して、この映画の美点をまるっと見逃していたのだろうか、と思ってしまう。

あ、今回、この映画のネタバレをしますので、その点ご留意の上でお読みください。

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「好き」の深さ(9日目)

山崎まどか著『「自分」整理術 好きなものを100に絞ってみる』という本が、本棚のわりと取り出しやすい場所に鎮座している。
コラムニストの山崎まどかさんが、ジョン・ヒューズの映画とかジョン・スメドレーのカーディガンとか、好きなもの100個についてひたすら語っている本。
とても好きで、いつも真似したくなる本。

なんかね、このnoteもそういう風にできるとすごく素敵だなと思ったりするわけですよ。
でも

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写真を撮れない(8日目)

写真を撮るのが苦手だ。

大学生のころ、親が昔使っていたフィルムカメラを譲り受けた。
ローライ35という、小ぶりで余計なものが削ぎ落とされた、でも愛嬌のあるカメラだった。検索したら今でもけっこう人気があるらしい。
当時はすでにデジカメ全盛期だったが、近所の写真屋でモノクロフィルムを買って、カメラを携えて街に出てみた。

カメラを持って歩くと、ただぼんやり視覚情報を摂取していた目が、「何を撮るか」と

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両方やれや(7日目)

一週間毎日書くのを続けてみて、そのネタの思いつき方によってこれは別のタイプの精神的筋トレになるようだ、とわかってきた。

事前に書くテーマのもとをメモる形と、ぶっうけでイチからワンテーマ書く形とで、使う脳みその場所というか、使い方が違う。

まず、思いついた時にメモを取って、後からそれを完成させる形にすると、当然だけどメモする習慣が鍛えられる。

頭の中にぽこっと浮かんだ泡を逃さず、割れないままで

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義務感について(6日目)

子供を寝かしつけていたら逆に寝かしつけられて2時間半が経過したところで目覚めてこれを書いている。

たぶんこの毎日書くやつをやっていなかったら、真っ暗な部屋のベッドでいったん目覚めたあと、まあいいか、と二度寝をかまして朝を迎えていたはずだ。
毎日やる、という義務感だけがベッドからおれを引きはがしたわけだが、ひとたびベッドと接すると異様なまでの吸着力を発揮する自分を引きはがすとは、やるな、義務感。

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いちばん「東京」な場所(5日目)

東京にずっと住んでいるが、いまだに東京という都市を語る言葉を見つけられていない。

速水健朗氏が『東京β』で、たしか「東京は更新され続ける都市」ということを言っていて深くうなずいた。
でもその更新の速度が速く、しかも色彩の違う街がそれぞれバラバラに更新され続けるので、どうにも都市としてうまく捉えられない。

個人的な体験としての東京、というのも、そもそもあまり個人的な情報を流したくもないので語りづ

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ひいきでないチームの試合を見ること(4日目)

ひいきチームの破滅的にしょっぱい試合をまんじりともせずに見つめながら、「なぜおれは好きでやってるはずの趣味でわざわざこんなみじめな思いをしているんだろう」という、悟っていない修行僧のような心境に陥ることは、スポーツファンなら誰しもが覚えがあると思う。

そのくせ、「そんなにイライラするくらいなら見なけりゃいいのに」という家族からのごもっともすぎるツッコミを背に受けながら、「この苦境を見届けてこそフ

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ぼくは覚えていない(3日目)

ジョー・ブレイナードという美術家が書いた、『ぼくは覚えている』という本がある。白水社のエクス・リブリスから翻訳が出ている。
ちょっと変わった本だ。
何しろすべての文章が、「ぼくは覚えている。」という言葉で始まる。200ページ以上、一冊分まるまるすべて、一切の例外なく。
ブレイナードはその一言を鍵にして、記憶の詰まった小箱を開き、自分の通り過ぎていった瞬間の断片を語る。
昔好きだった人の体を思い浮か

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間違うための訓練(2日目)

きのういきなり思い立ってこの「何か毎日書いて公開する」を始めてみたわけだが、とりあえず1日は24時間もあるのに自分はほとんどの時間「考え」ずに「思って」るだけだということがわかってきた。

思うというのは感情の動きで、あの人のこの言い方がむかつくとか、外に出たとき不意に吹いた風の温度が気持ちよかったとか、昼飯に出た唐揚げの衣の揚がり具合が舌に快感をもたらすとか、そういったいろんな評価軸のなかを揺れ

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部屋着を脱ぐ(1日目)

雑に書きたい。
考えたことが、指先からするすると流れ出るような回路を作りたい。

とりあえずバーッと書いて後から全部直す、という書き方がすごく苦手だ。
最初から校正の余地があまりない、"ほぼ正解"くらいの文章を書きたいと思ってしまう。
書きながら考えるほうではある、というか書かないと何も考えられないという困った思考形式の持ち主なのだが、考えたことを文字に落としこむときに、きちんとした文章であること

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