中東情勢ウォッチ

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記事一覧

オマーンで「イスラーム国」によるものと見られるテロ事案が発生

7月15日夜、オマーンの首都マスカットの郊外に位置するワディ・カビール地区にあるモスクにおいて襲撃事件が発生した。実行犯は自動小銃を用いてモスクに集まっていた人々…

イラン大統領選の決選投票で改革派が勝利

第14期イラン大統領選挙の決戦投票が7月5日に実施され、改革派のマスウード・ペゼシュキヤーン候補が保守強硬派のサイード・ジャリーリー候補を破り、当選した。同選挙は6…

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第14期イラン大統領選挙の結果

選挙の概要 6月28日、第14期イラン大統領を選出するための選挙が実施された。同選挙は5月19日にヘリコプター墜落事故で現職のエブラーヒーム・ライーシー大統領が死亡した…

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激化するガザ情勢⑤

1月から続いてきた停戦交渉が決裂し、5月6日にイスラエルはガザ最南端の街であるラファへの侵攻作戦を開始した。イスラエルは当初、これが米国がレッドラインだと警告する…

第10回中国・アラブ諸国協力フォーラム閣僚級会合が北京で開催

5月30日、北京にて第10回中国・アラブ諸国協力フォーラムの閣僚級会合が開催された。2004年にエジプトのカイロで初めて開かれた中国・アラブ諸国協力フォーラムの閣僚級会…

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クウェート:サバーハ・ハーリド元首相が皇太子に指名

6月1日、クウェートのミシュアル首長は勅令を発出し、サバーハ・ハーリド元首相を皇太子に指名した。昨年12月16日にミシュアル首長が就任して以降、クウェートでは皇太子の…

イランのライーシー大統領が事故で死亡

イランのエブラーヒーム・ライーシー大統領が搭乗したヘリコプターが5月19日に墜落、20日に大統領含めた搭乗者9人全員の死亡が確認された。同乗者にはアブドゥルラヒヤーン…

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クウェート議会の解散、憲法の一部条項の凍結

5月10日夜、クウェートのミシュアル首長は、議会の解散と4年を超えない期間において憲法の一部条項を凍結させる首長令を発布した。議会の権限は首長と政府が引き継ぎ、この…

ガザ停戦交渉、最終局面か

ガザ地区最南部のラファへの軍事侵攻の準備を整えてからおよそ2カ月、イスラエルは米国や国際社会からの強い圧力を受けて地上作戦の開始を延期し続けてきた。イスラエル軍…

イスラエルによるイランへのミサイル攻撃

4月19日午前4時頃、イスラエルはイラン中部のイスファハーンにある空軍基地に向けてミサイル攻撃を実施した模様である。断定的に書けないのは、本事案では攻撃を実行したと…

イランによるイスラエルへのミサイル・ドローン攻撃

4月13日夜、イランの革命防衛隊はイスラエル本土に向けてミサイル・ドローンを用いた直接攻撃を実施した。14日朝のイスラエル国防軍(IDF)の発表によると、イランはドロー…

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ガザへの人道支援強化に踏み切ったバイデン政権

イスラエルによるガザ侵攻は、ラファでの地上作戦を控える一方、他の戦線では戦闘が収束に向かいつつある。3月9日、ガザ地区における戦死者数は30,960人に達したとガザ地区…

ネタニヤフ首相が提出したガザ戦後計画案

イスラエルによるガザでの軍事作戦は、南部の主要な町であるハーン・ユーニスの制圧をほぼ終え、エジプト国境沿いにある最南端の町ラファへの大規模な空爆を2月から開始し…

紅海情勢への懸念を高める中国

ガザ戦争の勃発以降、米国や欧州諸国、ロシアが活発に外交を繰り広げてきたのに対し、中国の存在感は希薄な状態が続いてきた。グローバル・サウス諸国からの支持を意識し、…

戦線の拡大が懸念されるガザ情勢③ - フーシー派による船舶への攻撃の拡大

10月31日にイスラエルへの宣戦布告を表明したイエメンのフーシー派は、10月中旬から続けられているイスラエル南部へのドローン・ミサイル攻撃と並行して、11月19日の商船拿…

激化するガザ情勢④

11月24日から12月1日までの8日間の短い停戦期間が明けた後、イスラエル軍はガザ北部での包囲戦を継続しながら、南部への侵攻を本格化させている。 12月4日、ガザ南部に進…

オマーンで「イスラーム国」によるものと見られるテロ事案が発生

オマーンで「イスラーム国」によるものと見られるテロ事案が発生

7月15日夜、オマーンの首都マスカットの郊外に位置するワディ・カビール地区にあるモスクにおいて襲撃事件が発生した。実行犯は自動小銃を用いてモスクに集まっていた人々を銃撃、現場に到着した治安部隊と銃撃戦となり、実行犯3人を含めて9人が死亡、30人超が負傷した。

同事案についてイスラーム過激派組織の「イスラーム国」の広報機関であるアアマーク通信が翌16日に以下の犯行声明を発出している。

上記の犯行

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イラン大統領選の決選投票で改革派が勝利

イラン大統領選の決選投票で改革派が勝利

第14期イラン大統領選挙の決戦投票が7月5日に実施され、改革派のマスウード・ペゼシュキヤーン候補が保守強硬派のサイード・ジャリーリー候補を破り、当選した。同選挙は6月28日の第一回投票にて過半数の票を獲得した候補がいなかったため、第一回投票での得票数上位2名による決選投票となっていた。

選挙結果は以下の通り。

事前の予測では、有力な保守穏健派・改革派の候補が資格審査で排除され、残された唯一の改

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第14期イラン大統領選挙の結果

第14期イラン大統領選挙の結果

選挙の概要

6月28日、第14期イラン大統領を選出するための選挙が実施された。同選挙は5月19日にヘリコプター墜落事故で現職のエブラーヒーム・ライーシー大統領が死亡したことによる選挙である。

監督者評議会による事前資格審査により80人の立候補者は6人にまで絞られ、保守強硬派のアフマディーネジャード元大統領やアリー・ラーリージャーニー前国会議長、保守穏健派のロウハーニー政権期のジャハーンギーリー

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激化するガザ情勢⑤

激化するガザ情勢⑤

1月から続いてきた停戦交渉が決裂し、5月6日にイスラエルはガザ最南端の街であるラファへの侵攻作戦を開始した。イスラエルは当初、これが米国がレッドラインだと警告する「全面的な(full/major/all-out)」軍事作戦ではなく、「部分的な(partial/limited)」作戦だと表明していたものの、侵攻開始から1カ月、ラファ全域が戦場となっている。イスラエル軍は作戦開始直後にラファ検問所を制

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第10回中国・アラブ諸国協力フォーラム閣僚級会合が北京で開催

第10回中国・アラブ諸国協力フォーラム閣僚級会合が北京で開催

5月30日、北京にて第10回中国・アラブ諸国協力フォーラムの閣僚級会合が開催された。2004年にエジプトのカイロで初めて開かれた中国・アラブ諸国協力フォーラムの閣僚級会合は、その後2年置きに中国といずれかのアラブ諸国において交互に定期開催されてきた。前回の第9回会合は2020年7月に開かれており、今回と4年の月日が空いてしまっているが、2022年12月にはサウジアラビアのリヤードで初となる中国・ア

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クウェート:サバーハ・ハーリド元首相が皇太子に指名

クウェート:サバーハ・ハーリド元首相が皇太子に指名

6月1日、クウェートのミシュアル首長は勅令を発出し、サバーハ・ハーリド元首相を皇太子に指名した。昨年12月16日にミシュアル首長が就任して以降、クウェートでは皇太子の座が空位のままになっていた。通例では首長就任から数日で皇太子の指名が行われるものの、憲法上は首長就任から1年間の猶予がある。これまでの首長交代と異なり、今回は皇太子候補となる有力者が複数いたことから、新皇太子の指名をめぐって国内の議論

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イランのライーシー大統領が事故で死亡

イランのライーシー大統領が事故で死亡

イランのエブラーヒーム・ライーシー大統領が搭乗したヘリコプターが5月19日に墜落、20日に大統領含めた搭乗者9人全員の死亡が確認された。同乗者にはアブドゥルラヒヤーン外相、ラフマティー東アゼルバイジャン州知事、アリー=ハーシェム東アゼルバイジャン州最高指導者代理等がいた。墜落の原因やライーシー大統領等の直接の死因は不明であるが、事故当時に現場付近では濃霧が発生しており、墜落した機体は大破しているこ

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クウェート議会の解散、憲法の一部条項の凍結

クウェート議会の解散、憲法の一部条項の凍結

5月10日夜、クウェートのミシュアル首長は、議会の解散と4年を超えない期間において憲法の一部条項を凍結させる首長令を発布した。議会の権限は首長と政府が引き継ぎ、この期間において憲法の改正について進めることになる。1962年に成立したクウェートの憲法が停止されるのは、1976-81年の5年間、1986-92年の6年間に続き3度目となる。

首長令の発布にあわせてミシュアル首長は国民向けの演説を実施し

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ガザ停戦交渉、最終局面か

ガザ停戦交渉、最終局面か

ガザ地区最南部のラファへの軍事侵攻の準備を整えてからおよそ2カ月、イスラエルは米国や国際社会からの強い圧力を受けて地上作戦の開始を延期し続けてきた。イスラエル軍によるハマース掃討作戦は継続されているが、その規模は開戦時よりも縮小しており、ガザ地区における戦死者数も減少傾向にある(下グラフ参照)。

ハマース殲滅を掲げるイスラエルがラファへの地上侵攻を控えていたのは、ガザ地区内の人道危機が深刻化し、

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イスラエルによるイランへのミサイル攻撃

イスラエルによるイランへのミサイル攻撃

4月19日午前4時頃、イスラエルはイラン中部のイスファハーンにある空軍基地に向けてミサイル攻撃を実施した模様である。断定的に書けないのは、本事案では攻撃を実行したとされるイスラエルも攻撃を受けた側であるイランも、攻撃の事実を公式に認めていないからである。もっとも、双方の政府関係者や米国の政府関係者が匿名でメディアに情報を流しており、イスラエルがイランへのミサイル攻撃を実施したことはほぼ確定的な事実

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イランによるイスラエルへのミサイル・ドローン攻撃

イランによるイスラエルへのミサイル・ドローン攻撃

4月13日夜、イランの革命防衛隊はイスラエル本土に向けてミサイル・ドローンを用いた直接攻撃を実施した。14日朝のイスラエル国防軍(IDF)の発表によると、イランはドローン170機、巡航ミサイル30発、弾道ミサイル120発の計300発超による複合的な攻撃を実施したものの、イスラエルは弾道ミサイル数発を除いて領域外にて迎撃することに成功、被害はイスラエル南部のネヴァティム空軍基地の施設に軽微な損害が出

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ガザへの人道支援強化に踏み切ったバイデン政権

ガザへの人道支援強化に踏み切ったバイデン政権

イスラエルによるガザ侵攻は、ラファでの地上作戦を控える一方、他の戦線では戦闘が収束に向かいつつある。3月9日、ガザ地区における戦死者数は30,960人に達したとガザ地区の保健省は発表した。これには推計7,000人に上る行方不明者は含まれていない。戦死者数の推移を見ると、開戦時には1日平均350人を超える死者が発生していたが、2月には平均100人超/日と、開戦時の3分の1の規模にまで縮小してきている

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ネタニヤフ首相が提出したガザ戦後計画案

ネタニヤフ首相が提出したガザ戦後計画案

イスラエルによるガザでの軍事作戦は、南部の主要な町であるハーン・ユーニスの制圧をほぼ終え、エジプト国境沿いにある最南端の町ラファへの大規模な空爆を2月から開始し、ガザ全土の制圧に向けた最終段階に入った(下図参照)。ラファは人口27万人程度の小さな町であるが、ガザの人口の半数以上となる100-150万人規模の市民が避難してきており、イスラエル軍の攻撃による人道被害が拡大することが懸念されている。エジ

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紅海情勢への懸念を高める中国

紅海情勢への懸念を高める中国

ガザ戦争の勃発以降、米国や欧州諸国、ロシアが活発に外交を繰り広げてきたのに対し、中国の存在感は希薄な状態が続いてきた。グローバル・サウス諸国からの支持を意識し、また米国と対抗する観点からアラブ諸国寄りの立場を取ってきた中国は、国連等の場で厳しいイスラエル批判をしてきたものの、紛争からは距離を置く姿勢を保ってきたと言える。中国の中東政策は伝統的に全方位外交を追求するものであり、域内の紛争には不関与を

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戦線の拡大が懸念されるガザ情勢③ - フーシー派による船舶への攻撃の拡大

戦線の拡大が懸念されるガザ情勢③ - フーシー派による船舶への攻撃の拡大

10月31日にイスラエルへの宣戦布告を表明したイエメンのフーシー派は、10月中旬から続けられているイスラエル南部へのドローン・ミサイル攻撃と並行して、11月19日の商船拿捕を皮切りにイエメン近海での船舶への攻撃を増加させている。

11月19日、紅海にて日本郵船が運航する自動車運搬船Galaxy Leaderを拿捕。同船はイスラエルの富豪Abraham Ungar氏が経営するRay Shippin

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激化するガザ情勢④

激化するガザ情勢④

11月24日から12月1日までの8日間の短い停戦期間が明けた後、イスラエル軍はガザ北部での包囲戦を継続しながら、南部への侵攻を本格化させている。

12月4日、ガザ南部に進軍したイスラエル軍は、ガザの南北を結ぶ幹線道路であるサラーフッディーン通りに到達し、ガザ南部の主要な町であるハーン・ユーニスとガザ中央部のダイル・バラフを寸断することに成功した。イスラエルはハマースの幹部がハーン・ユーニスに隠れ

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