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激化するガザ情勢⑤
1月から続いてきた停戦交渉が決裂し、5月6日にイスラエルはガザ最南端の街であるラファへの侵攻作戦を開始した。イスラエルは当初、これが米国がレッドラインだと警告する「全面的な(full/major/all-out)」軍事作戦ではなく、「部分的な(partial/limited)」作戦だと表明していたものの、侵攻開始から1カ月、ラファ全域が戦場となっている。イスラエル軍は作戦開始直後にラファ検問所を制圧すると、ラファ中心部に入る前にエジプトとガザの国境地帯フィラデルフィア回廊を支配下に置いてガザ地区内のヒト・モノの出入りを完全に掌握、そしてラファ市街を包囲するかたちで作戦を進めてきた。
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ラファにはガザ人口の3分の2にあたる140万人の住民が避難していたが、この1カ月間で100万人が同市を離れたと見られており、戦火を避けるために再避難を強いられている。10月の開戦以来ガザ地区における1日当たりの平均死者数は減少傾向にあったが、侵攻の開始に伴い死者数は上昇傾向にある。また、6月8日にイスラエル軍は人質奪還のための特殊作戦を実施して4人の人質を救出したものの、パレスチナ側に300人弱の死者を出している。
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ラファ侵攻により人道危機がさらに悪化したことに対し、米国のバイデン大統領は5月31日に突如として「イスラエルが提案した(offered)」停戦案を発表、ハマースに同停戦案を受け入れるよう呼び掛けた。この新たな停戦案は、1月のパリ合意にて既に原型が出来ており、5月のラファ侵攻直前まで議論されていた停戦案から内容は大きく変わっていない。しかし、イスラエルの連立政権に参画する極右政党はこの「米国案」に激しく反発、さらにハマースも停戦案の修正を要求したことで、交渉は頓挫している。
ラファ侵攻により俄かにガザの被害規模が拡大しているが、近い将来にイスラエル軍のラファ制圧が完了すれば被害者数は減少していくことになるだろう。しかし、交渉による停戦の成立と人質の解放が実現しない限り、ゲリラ的な戦闘は継続するものと見られる。イスラエル軍による人質奪還作戦はガザ住民の付随的損害の発生にほとんど配慮しておらず、仮に大規模な戦闘が終結したとしても平穏とは程遠い状況が続くことになるだろう。
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出所: UNRWA
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