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激化するガザ情勢④

11月24日から12月1日までの8日間の短い停戦期間が明けた後、イスラエル軍はガザ北部での包囲戦を継続しながら、南部への侵攻を本格化させている。

出所:War Mapper

12月4日、ガザ南部に進軍したイスラエル軍は、ガザの南北を結ぶ幹線道路であるサラーフッディーン通りに到達し、ガザ南部の主要な町であるハーン・ユーニスとガザ中央部のダイル・バラフを寸断することに成功した。イスラエルはハマースの幹部がハーン・ユーニスに隠れていると考えており、戦線を南部に拡大していく方針である。開戦当初は北部に集中していた空爆も、停戦明け以降はハーン・ユーニス近郊が空爆の標的として優先順位が高くなっているようである。また、発見した地下トンネルの入り口は800カ所を超えたようであり、そのうち500カ所を爆破して使用不可能な状態にした模様である

ガザ地区の犠牲者数は12月5日時点で15,899人になったとされており、一時停戦が明けてから1,000人弱の死者が発生していることになるが、実態を正確に反映しているかは不明である。病院等がイスラエルの攻撃対象となっていることから、死者数を確認する作業も阻害されており、事実、一時停戦が成立する前の11月22日から29日までの間、ガザ地区で確認された死者数は14,854人から変動しなかった。行方不明者数は6,000人を超えるとされているが、実数は当局の発表や推計を大きく上回る可能性もある。

12月5日時点のイスラエル軍の犠牲者数は404人に上っているが、このうち300人超が10月7日のハマースによる奇襲攻撃によって亡くなっている。10月28日以降に100人前後の兵士が死亡していることから、地上戦の開始に伴いイスラエル軍の兵士の犠牲が急増していることが分かる。一方、イスラエルの民間人の死者数は、10月7日の奇襲により859人の死亡が確認されているものの、それ以降はほとんど発生していない。また、拉致された人質はおよそ250人と推定されているが、停戦以前に4人が解放、1人が救出され、2人の死亡が確認されていた。一時停戦期間中にハマースは105人の人質を解放し(うちイスラエル人78人、タイ人23人、ロシア・イスラエル二重国籍者3人、フィリピン人1人)、イスラエル側は代わりにパレスチナ人の囚人180人を釈放した。

イスラエル当局によるとハマースに拘束されている人質は残り137人とされているが、人質のさらなる解放をめぐって今後もハマースとの交渉や一時停戦が成立することは有り得るだろう。もっとも、今回の一時停戦が成立した時点からイスラエルは停戦明け後に戦闘を再開することを明言していたように、イスラエルの軍事作戦は今後も継続していく方針である。ネタニヤフ首相は、イスラエルへの脅威をガザから完全に排除するまで作戦を継続するとし、その目標を達成する唯一の手段はガザでの地上作戦であると述べている

今後、南部での地上作戦も激化していくことが予想されており、パレスチナの犠牲者は更に増大していくだろう。ハマース側の反撃も続いているが、イスラエルに大きな打撃を与えることはできておらず、イスラエルに作戦継続を断念させる程の軍事的な被害を与える可能性は乏しい。現在の戦況が続くようであれば、イスラエルの軍事作戦は数カ月の単位で継続していくものと見られる。最終的なイスラエルの行動計画は確定していないようであるが、ガザ地区において治安維持のみを担う事実上の再占領となる可能性は日に日に高まっている。

破壊されたガザの街並み
出所:UNRWA

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