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シン映画日記『シャザム!~神々の怒り~』

イオンシネマ浦和美園でDCコミックスの『シャザム!』シリーズ最新作『シャザム!~神々の怒り~』を見てきた。

前作『シャザム!』は外見は大人だけど中身は少年というスーパーヒーローのボンクラぶりをフル活用していたが、
本作はスーパーヒーロー6兄妹のヒーロー活動と迫りくる三女神&ドラゴンの脅威との戦いがメインで、
特にへスペラ、カリプスら女神とドラゴンとのバトルはアメコミらしさ満点である。

ストーリーはへスペラとカリプスら女神が力を取り戻すためにある物を探しに地上にやって来て、シャザム6兄妹と戦うエピソードに、
女神姉妹の末の妹アンテアが人間態でフレディらが通う高校に転校してきて、フレディと友情を育むハイスクール青春もののエピソード、
もうすぐ18になる6兄妹(義兄妹)の上の方とバスケス夫妻との疑似家族の問題をも含めた映画になっている。

三女神にはそれぞれ能力があり、
へスペラは物質を操る能力、
カリプスは人に囁くことで混乱に陥れるカオスの能力、
アンテアには時空を操る能力があるが、
シャザムブラザーズとのバトルはヒーローの能力を奪う杖の光線とドラゴンやモンスターを使っていて、
それぞれの能力が活かし切れたとは言い難い。
カリプスの囁きはかつての野村克也の囁やき戦術みたいで見ていて面白いが、
へスペラの物質を変える能力はチート過ぎるし、
アンテアの時空をいじくるやつは絵的には悪くないが、魔法としての効果があまり見られない。

中盤からのバトルは力まかせというか派手な建物破壊描写中心で、
同じDCの『マン・オブ・スティール』や『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』で見られたものと同様。
それとバトルの内容もDCEUの前作『ブラックアダム』に近く、どこか大味な印象を受ける。

それと本作のストーリーの性質はシャザムブラザーズ&魔術師シャザムと三女神の間を往復するだけで進んでいく。これは日本映画『シン・仮面ライダー』の本郷&ルリ子の緑川教授及びアンチSHOCKERの情報機関とSHOCKERとのやり取りのみで終始したストーリーラインに似ていて、狭い世界観の中で展開するストーリーはまるで漫画そのものであるかのようである。
けど、本作では後半になると、カリプス&ドラゴン・モンスター軍団が街中で暴走するので、一応主人公以外の世界の繋がりは見せているし、その段階でバスケス夫妻も微力ながらシャザムブラザーズらに援軍的に関わる。
そういう意味では『シン・仮面ライダー』よりも評価したいし、全体的にスッキリしたストーリーとしても『ブラックアダム』よりも楽しめる。

もう一つ、前作『シャザム!』でも見られたフレディ視点のハイスクール青春もののエピソードも今回も健在だが、それが障害者いじめからフレディとアンテアの恋に移行し、ややありきたりな展開だが悪くはない。これによって終盤でもフレディとアンテアのシーンはあるので、『シャザム!』シリーズの一つの顔となっている。
そうなると他の兄妹の描写が少ししか触れられずモブキャラと化してしまっているのは残念。
メアリーの進学問題、
ゲーマーでアジア系のユージーン、デブでLGBT恋愛にも目覚めているペドロ、まだまだおしゃまなアフリカ系のダーラ、
というように個性はしっかりとしているが、尺の長さのためか見せ場が僅か。
こういう多様的な複数性ヒーローとしては同じDCEUなら『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』、MCUなら『ブラック・パンサー』、『アントマン・アンド・ザ・ワスプ』、それこそ『アベンジャーズ』など器用な見せ方をしているのを見ているだけに、
本作の複数ヒーロー制は上手く見せているとは言い難い。はっきり言って不器用である。

しかし、『シャザム!』シリーズとしては前作で多く見られた子供/大人の描写がすっかり陰を潜めてしまい、ボンクラ感や無邪気さも大幅になくなっている。それが主人公らの成長と言われれば仕方ないが、エンドロールのサービスシーンで思い出したかのようにやり出したから、ひょっとしたら忘れていた可能性さえ考えられる。

概ね悪くはないが、前作『シャザム!』と比べてしまうと不満点がいくつかあるのは確かである。

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