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シン映画日記『劇場版 センキョナンデス』

渋谷のシネクイントでドキュメンタリー映画『劇場版 センキョナンデス』を見てきた。

フランス出身の日本人ラッパーのダースレイダーと時事芸人のプチ鹿島によるYouTube番組「ヒルカラナンデス(仮)」の選挙特番部分を再編集して劇場公開のドキュメンタリー映画に仕上げた作品。
かと言ってYouTube番組の総集編かと言えばそんなことはなく、類としてはマック赤坂を題材とした『立候補』や香川県の衆議院議員・小川淳也氏にスポットを当てた『香川1区』のような選挙ドキュメンタリー映画をマイケル・ムーア的にやったのが本作である。

主に取り上げたのは2021年10月31日に行われた第49回衆議院議員総選挙と2022年7月10日に行われた第26回参議院議員選挙の2つの選挙。
前半の衆議院議員選挙はドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』と『香川1区』で取り上げられた香川1区にスポットを当て、基本は3人の全候補者を平等にニュートラルな立ち位置でマイケル・ムーアのようなアポ無し突撃取材スタイルを敢行。
既に『香川1区』にて大々的に小川淳也サイドを取り上げている不利さをこの「ニュートラルさ」で上手くクリアし、見事に『香川1区』のB面としての役割を果たしている。
その中で、明らかに「おかしい」と思える部分に二人はアタックをし、やはりそこは面白くなり、二人の嗅覚の凄まじさを垣間見る。
前半は『香川1区』B面作戦とおかしい対象物へのアタック作戦が上手く回り、完成度が高い。

後半も2022年の参議院議員選挙を大阪・京都における「菅氏対維新」を軸に突撃取材を繰り返し、前半と同様のスタイルで行けるかと思いきや、ある大事件が偶然起きてからは明らかに映画のボルテージがだだ下がりしている。
これはどちらかというと取材対象者側の変化なのでやむを得ないが、そこでもうひと工夫入れてほしかった。BGMも悪くない。ドラム主体の楽曲はアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の『バードマン』の音楽演出に非常に似ており、他もマーサ&ザ・ヴァンデラスの「ヒート・ウェイヴ」のアレンジなど音楽でも程よく楽しませてくれる。

マイケル・ムーアのような取材スタイルだが、ドキュメンタリー映画作風としてのクオリティーはマイケル・ムーア監督作品というよりも取材者の体験を中心としたモーガン・スパーロック監督作品に近く、本作はいわば野次馬選挙体験記と言えよう。そのモーガン・スパーロック監督作品においても完成度が高い『スーパー・サイズ・ミー』ではなく、テレビシリーズ「モーガン・スパーロックの30デイズ」のシーズン1のような趣。おそらく、『劇場版 センキョナンデス』としては第二弾、第三弾があるものと考えられるが、本作は顔見世興行としてはまずまず。

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