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シン映画日記『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』

ユナイテッドシネマ浦和にてデヴィッド・ボウイのドキュメンタリー映画『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』を見てきた。

60年代後半から亡くなる直前の2016年まで活動してきたロックアーティスト、デヴィッド・ボウイが30年にわたって保管してきた未公開映像を、カート・コバーンのドキュメンタリー映画を手掛けたブレット・モーゲンが2年かけて、貴重な映像を厳選し編集したドキュメンタリー映画。

前半は主に1970年代前半の『ジギー・スターダスト』、『アラジン・セイン』、『ダイアモンド・ドッグス』の頃のライブとライブ会場周辺を映した映像を中心に構成。ここまでなら過去のデヴィッド・ボウイのドキュメンタリー映画でも見られたものだが、本作の本番はむしろそれ以後のベルリン時代、80年代、90年代のデヴィッド・ボウイの軌跡を追ったものである。

70年代前半の活躍で得たロックスターの座、人気に甘んずることなく、常に新しいロックと己の興味の変化を素直に取り入れる。それは音楽・ルックスの変容はもちろん、アメリカからヨーロッパへ、アジアなど、次々とまだ見ぬ地に訪れ、その土地その土地の文化に触れ、新たな刺激を得て、己の生き方や音楽、アートに投影する。

それをIMAXの巨大スクリーンで味わうので、まさしくデヴィッド・ボウイが歩んできた軌跡と変化をモロに身体に浴びるように体感出来る。
それは音楽以外にも俳優として参加した映画出演作品も映し出される。

映画は21世紀に入ってからの映像はない。
正直、このやらなかった部分への不満があったが、
映画の趣旨としては70年代から90年代まで常に時代の先を行っていた、いわば20世紀に21世紀的な行動を一人していた稀有なアーティスト、人間、デヴィッド・ボウイを映している。
それは自身のバイセクシャルという性傾向のカミングアウトや21世紀を見据えた音楽、
そして人種や宗教を超えた概念など、デヴィッド・ボウイが見てきたもの、体験したものを映像にアウトプットし、これをスクリーンを通して我々観客が見る。
それはまるでデヴィッド・ボウイが20世紀から21世紀の我々に時空を超えて語りかけるような、そういう不思議な体験が出来るドキュメンタリー映画である。
「Space Oddity」、「Life On Mars?」、「Starman」、「Moonage Daydream」などがかかるが考えてみれば宇宙に関係がある曲が多いが、
「Changes」や「Rock'N'Roll Suicide」、「Heroes」や「Let's Dance」はデヴィッド・ボウイ自身に関する曲だから、選曲もかなり考えられている。
そんな中で70年代前半や半ばの一部の超名曲がかからない不満が見た直後にはあったが、作品のコンセプトを優先するためにカットした可能性が高い。

コンセプトとしては悪くないが、
終盤が弱いのが惜しい。
それでも既に亡くなっているデヴィッド・ボウイによる20世紀から21世紀の観客への挑発というのが、なんともデヴィッド・ボウイらしいドキュメンタリーである。

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