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「在宅で長く過ごす」ためのサポート⑤
Mさんは、ここ数年は終日ベッドの上で過ごす在宅療養をしています。もともとは畑仕事をしていて腰を痛めたのが原因ですが、入院治療を続けるうちに筋力や臓器の働きが低下してしまい、食事はベッド上で取ることができますが、それ以外は全介助となり、要介護度も最も高くなっています。
介護をしているのは主に70 代の妻と、訪問介護のヘルパーです。近くに娘さん2 人が住んでいて、時々ご両親の様子を見にきています。
「在宅で長く過ごす」ためのサポート➃
L さんは、70 代の女性です。夫と別れて子どもが独立したあとは1 人暮らしをしていた時期もありますが、長男夫婦が家を新築したときに同居。以来、共働きの長男夫婦のためにL さんも家事の多くを担い、3 人で生活をしていました。L さんの健康状態は少し血圧が高いくらいで、大きな病気の経験はありません。
そんなL さんに「あれ?」と思う症状が出てきたのは、4、5 年前だそうです。もともとは掃除好き
「在宅で長く過ごす」ためのサポート③
K さんは70 代の男性で、仕事をしている60 代の妻と2 人暮らしです。子どもはおらず、ずっと夫婦共働きで生活をしてきました。
K さんは、長年ヘビースモーカーだったこともあり、60 代のときに慢性閉塞性肺疾患と診断されています。
それから、地域の病院の呼吸器内科に定期的に通院し治療をしていましたが、だんだん息切れが強くなり、通院も難しくなってきたため、病院からの紹介で在宅療養を開始しまし
「在宅で長く過ごす」ためのサポート②
J さんは、自宅で1 人暮らしをしている90 代の女性です。
3 年前80 代のとき、外出中に転倒してしまい、大腿骨を骨折。それから何度か入退院を繰り返し、病院や老人保健施設などで過ごすうちに全身状態が低下。移動も車椅子になりました。心配したJ さんの娘さんがインターネットで検索し、当クリニックに連絡をしてきたのが在宅療養を始めるきっかけです。
J さんの自宅近くに住む娘さんが毎日、様子を見に
「在宅で長く過ごす」ためのサポート①
「在宅でできるだけ長く生活する」ことが目標
在宅医療が軌道にのってくると、要介護の本人も見守るご家族も、気持ちにゆとりが出てきます。
住み慣れた自宅で、自分のペースで生活ができることには何ものにも代えがたい価値があります。「家に帰ってきてよかった」「やっぱり家がいちばんいい」と皆さんが実感されると思います。
けれどもその一方で、在宅療養をしている時間のすべてが“穏やかな時間”というわけで
患者・家族と在宅医療チームの信頼を築く⑤
Hさんは、70 代後半の男性です。Hさんはもともと食べるのも飲むのも好きな方で肥満があり、長く糖尿病も患っていました。
そして4 年前に脳出血を経験。救急車で運ばれて一命はとりとめたものの、体を動かすことはできなくなり、食事も胃ろうを作ってそこから栄養をとる形になりました。
半年ほど病院で治療とリハビリをしたあと、本人もご家族も「家に帰りたい」「帰らせてあげたい」という意向があり、在宅療養に
患者・家族と在宅医療チームの信頼を築く➃
70 代のGさんは、子どもたちが独立したあとは、夫婦2 人で生活していました。
3 年前、Gさんは自宅にいるときに脳梗塞を発症。妻が気づいて救急車を呼び、病院で治療を受けました。このときは治療が早かったこともあり、大きな後遺症もなく回復することができました。
しかし、1 年ほどして再び脳梗塞を起こして入院。Gさんの手足には軽い麻痺が残るようになりました。本人が懸命にリハビリを続けて、杖をつい
患者・家族と在宅医療チームの信頼を築く③
F さんは、80 代後半の女性です。60 代半ばで糖尿病を発症。以来、血糖値を下げる薬を飲みながら、食事療法や運動などの生活指導と併せて治療を続けてきています。
5 年前に夫が亡くなり、1 人暮らしになったため、2年前からは有料老人ホームに入居しています。現在は、杖や手すりなどの補助があれば自分の足で歩くことができ、息子さんや孫たちが時々面会に来て、話をしたり、一緒に車で外出し食事をしたりする
患者・家族と在宅医療チームの信頼を築く②
80 代のEさんは、2 年前に心筋梗塞を発症し、病院で治療を受けています。その後も何回か入退院を経験し、入院をするたびに体力が落ちてきており、在宅で療養を始めることにしました。
Eさんは8 年前に夫を亡くしたあとに、長男一家と同居をしています。在宅医療を始める際も、40 代の長男と妻が在宅療養のために介護ベッドのレンタルなどの環境を整えてくれ、比較的スムーズに在宅生活に入ることができました。
患者・家族と在宅医療チームの信頼を築く①
在宅医療のスタート期は、遠慮をせずに何でも相談を
このパートでは、在宅医療をスタートして間もない時期によく見られる事例を取り上げ、皆さんに知っていただきたい情報を解説したいと思います。
初めて在宅療養や在宅介護をすることになったとき、何の心配もない、という人は少数派でしょう。ほとんどの人は、大なり小なり気掛かりなことがあると思います。
病院に入院していた人の場合、在宅では、病院のように
在宅医療を始めるまでの物語③
Cさんは、55 歳のときに肝臓がんがあることがわかり、病院で手術や治療を受けました。一時は休職も考えたようですが、職場の理解もあり、短時間勤務をしながら、通院での抗がん剤治療を続けてきました。
当初は治療が奏功し、2 年ほどは状態が落ちついていたため、通常勤務にも復帰することができましたが、それから少しして58 歳のときに再発。肺にがん細胞の転移があることもわかりました。
Cさんはやむなく職
在宅医療を始めるまでの物語②
B さんの家庭は、70 代の夫婦2 人暮らしです。
B さんは30 代の頃に精神疾患を発症。夫と結婚してからは、良いとき・悪いときの波はありましたが、夫の理解もあり、全体的にはおおむね状態は落ちついていました。そのなかで一人息子を育て、無事に成人させています。40 代の息子さんは独立し、今は隣県で仕事をしています。
60 代の終わり頃から、B さんは認知症の症状が現れるようになったそうです。最初
在宅医療を始めるまでの物語①
「在宅医療」という選択肢があることを知ってほしい
最近では、「在宅医療」という言葉自体を聞いたことがある人は、増えているのではないでしょうか。
書店へ行けば、在宅医療にまつわる一般書もたくさん発刊されていますし、在宅死をテーマにした映画なども作られています。社会の高齢化が急速に進むなかで、年を取ったとき、あるいは大きい病気をしたときに、どこでどういう医療を受けたいか、どのように療養生活を送りたい
新しい感染症の出現で注目される「在宅医療」とは?③
在宅医療チームを支える多職種と主な役割
在宅医療では、医療・介護の多職種のスタッフが連携し、要介護の人の生活を支えます。
病院では、医師が治療方針を決めてリードしていく形になりますが、在宅医療では、医師よりも患者さんや家族と接する時間が長い訪問看護師やヘルパーも、とても重要な役割を担っています。多職種の専門家が1つの「チーム」となって、日々細やかに情報共有をしながら在宅療養を進めていきます。
関
新しい感染症の出現で注目される「在宅医療」とは?②
医療保険と介護保険、2つの制度で高齢者を支える
それでは次に、在宅医療を利用するときに知っておきたい制度や利用できる医療・サービス、利用方法などを解説します。在宅医療で受けられる医療・サービスは、大きく2つに分けられます。1つは医療保険(健康保険)による医療・看護です。そしてもう1つが介護保険による介護サービスです。
「医療」の部分は健康保険に加入している人であれば誰でも利用できます。一方「介
新しい感染症の出現で注目される「在宅医療」とは?①
2020年春から、新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行しています。この新しいやっかいな病原体は、ごく短い期間に世界をまさに一変させてしまいました。
変わったのは通勤や仕事の仕方、マスク着用、手指消毒といった日常生活だけではありません。国民の医療との付き合い方や医療のあり方そのものも、大きく揺さぶられています。
これまでは頻繁に病院に通っていた人も、感染を避けたい気持ちから、受診を控えてい