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日本人サラリーマンも世界を食べる

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【スニーカー文庫《俺のラノベ》コンテスト「笑える話」特別賞入選】 しみじみと面白い。 趣味は料理。外食したものをキッチンで再現して細部を探るのが好き。 外資系サラリーマンだっ…
「日本人サラリーマンも世界を食べる」をマガジンにしました。ここからそれぞれの記事を単品で買うことも…
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#エッセイ

海外で飯に困ったらカレーに限る

海外で飯に困ったらカレーに限る

海外旅行の楽しみの一つはおそらくお食事だろう。
どの国に行っても名物料理があって、それを楽しむのは海外旅行の醍醐味の一つだ。

ところが、である。
国によっては食事がまったく口に合わないことがある。これが個人旅行ならいい。事前に調査も十分しているだろうし、まさか食べられない食べ物ばっかりの国に行く物好きはそうはいないはずだ。

これが仕事だとそうはいかない。問答無用、否応なくその国に行かざるを得な

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マレーシアのジャングルご飯

マレーシアのジャングルご飯

 新婚旅行はマレーシアに行った。
 十泊十一日。会社に無茶を言って長い休みを頂いた。当然犠牲者も出たので、その人には丁寧にお礼を言ってあとでお土産(偽物時計)を渡したのは言うまでもない。
 さて、行った先はマレーシアはランカウィ島のダタイホテル、絶壁に張り付くように作られた豪華なホテルだ。マレーシアは物価が安いと思って来たのだが、ダタイホテルの物価はほとんど日本と一緒だった。お土産のTシャツが三〇

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イタリアのパスタは空港で食っても美味かった

イタリアのパスタは空港で食っても美味かった

 一度イスラエルに飛ぶときにローマで十時間くらい足止めを食らったことがある。

 そもそも、行くはずのない出張だったのだ。
 その頃、僕の会社と広島の某社とのプロジェクトが大炎上し(それも石油コンビナート爆発級の大炎上)、僕は当日まで広島に詰めていた。
 その時のカントリーマネージャーは元コンサルタントで、そのイスラエルの会社が日本市場に参入する事を仕事として手がけたという前歴を持っていた。
 本

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ビールとフィンランド人とアメリカ人

ビールとフィンランド人とアメリカ人

 お風呂が大好きだ。
 モノグサなのだが、お風呂だけは立て続けに入る。特に冬は暖をとるために一日に三回くらい入っちゃう。
 お風呂といえばやっぱり温泉? でも温泉は行くのが面倒臭い。何かのついでに温泉があれば喜んで入るのだが、わざわざ温泉だけの為に旅行しようとまでは思わない。
 もっとも、どうやら僕は日本人としては少数派のようで、多くの人は温泉だけが目的の旅行もするようだ。よく知らないけど。

 

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ゴルフ飯古今東西

ゴルフ飯古今東西

 アメリカ、もっというなら北米大陸においてゴルフはスポーツだ。
 アメリカ、カナダでは特にその傾向が高い。従って料金もリーズナブル(5ドルとかから遊べると思う)だし、市営のゴルフ場なんてものもある。
 この傾向は食事にも反映されていて、アメリカのショミーンなゴルフ場では豪華なものは食べられない。
 例のゴルフ好きの大統領が行くようなゴルフ場なら食事も豪華なのだろうが、市営のゴルフ場なんて行こうもの

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RMSの悲劇

RMSの悲劇

 RMSがよくなかったのは、資本元のレミーマルタンよりも美味しいブランデーを作ってしまったことだった。
 それはそうだろう、あれだけこだわったアルマニャックはそうはない。対抗できるとしたらポールジローくらいじゃなかろうか。

 父が帰国して一週間後、僕はRMSに電話していた。
 ブランデーが切れた。だから在庫確認の電話を入れたのだ。
 ところが何か様子が異う。
 いつもはゆったりしているのに、何か

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ナパの思い出

ナパの思い出

 ナパ、である。
 ナッパではない。

 ナパはサンフランシスコの北に広がる広大な谷である。

<地図はたまこさんのコンパスからお借りしました>

 ワインの生産で世界的に有名で、ナパのワインはカリフォルニアワインの通称で日本でもたくさん売っている。
 ナパバレーには広大すぎて気が遠くなるほどの葡萄畑が延々と広がり、そこここでワインが生産されている。

 そしてここはグルメ拠点としても有名だ。有名

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サウナ・パーティとは一体なんだ

サウナ・パーティとは一体なんだ

 日本とフィンランドは文化的にかなり似ている部分がある。
 例えばお風呂の楽しみ方。
 フィンランド人も日本の温泉のようにサウナを楽しむ。
 それも、集団で。

 僕が勤めていた北欧系の携帯電話会社はフィンランドのタンペレに一大開発拠点を構えていた。そこにはヘルミア2からヘルミア6まで、5棟の開発棟があったのだが、なんとその全てのビルのペントハウスはサウナになっていた。
 ちなみにこれは日本も同様

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シアトルのフレンチディップ

シアトルのフレンチディップ

 フレンチディップというサンドウィッチをご存知だろうか?

 日本でフレンチディップを食べられる店はほとんどないので、知らない人が多いかも知れない。
 フレンチディップはロス・アンジェルス発祥のサンドウィッチだ。フレンチとあるが、フランスとは全く関係がない。というか、むしろフランス人はこれを避ける気さえする。
 フレンチディップの組み立て自体は簡単だ。
 とりあえず、アメリカ風の柔らかいフレンチロ

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アメリカ人と日本のイザカヤ

アメリカ人と日本のイザカヤ

 以前、イタリアの血が薄すぎるイタリア系アメリカ人のクリスのことはみなさんにも紹介したと思う。
 今回は立場を逆にして、そのクリスが日本に長期出張した際の顛末をお話ししたい。

∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴

 当時、僕たちはA5サイズの小さなタブレットを開発していた。
 売りはインターネット機能で、モデム内蔵というところがミソだった(当時は無線LANなん

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微笑みの国の屋台ラーメン

微笑みの国の屋台ラーメン

 タイにダイビング旅行に行ったときのこと。
 プーケットで泊まった安宿の向かいに、いつも夜に店を出している屋台ラーメンの店があった。
 正直、しがない。
 子連れのおばさんが一人でやっている店なのだが、パラソルとかを一生懸命設置している割には客が少ない。
 向かいが大きな中華料理の市場だったのもまずかったのだろう。
 その屋台はいつも閑古鳥が泣いていた。
 子供は我関せずとその辺を走り回り、おばさ

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フィンランドの車窓から

フィンランドの車窓から

 国際便が世界各地から到着するフィンランドのヘルシンキからタンペレという街までは距離にして二百キロくらいある。
 タンペレまでは国内便の飛行機もあるのだが、電車で移動することも可能だ。
 その時勤めていた北欧系携帯電話メーカーの開発部はタンペレにあったので、東京から飛行機でヘルシンキまで飛んだ後、タンペレまで移動しないといけない。
 いつもは飛行機で移動していたのだが、何しろ二百キロだ。ほとんど弾

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香港の銀糸湯麺

香港の銀糸湯麺

 それは香港返還直前の一九九六年の十一月。
 中国に返還されて香港がグッチャグチャになってしまう前に一度訪れておこうということになった。
 一緒に行ったのは大学の時の友達三人。キャンプ仲間でもあったので気心は知れている。
 羽田を出発して香港に向かう。
 当時はまだ香港の空港は啓徳空港だったから、着陸はめちゃくちゃスリリングだった。ジェット機でビルの谷間を縫うようにして飛ぶ。窓からは隣のビルで働い

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ピザを食べるならアメリカで

ピザを食べるならアメリカで

 アメリカといえばピザである。
 そして、ピザといえばアメリカである。
 異論は認めない。

 もちろん、イタリアにもピザはある。しかし、アメリカのピザはもはやアメリカン・ピザと言っていいくらい独自の進化を遂げているのだ。
 幸か不幸か、日本のデリバリー・ピザはアメリカのピザの影響を強く受けているので、アメリカでピザを食べるとどこか懐かしい気持ちになる。
 分厚いパンのような生地、これでもかと盛ら

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