vol.40  秋分「ニラの花」9/23〜10/7

vol.40 秋分「ニラの花」9/23〜10/7

   お隣りのお宅の庭にニラの花が咲き始めた。白くて可憐な花。朝、出がけに見かけて、そのかわいらしさにホッと和まされたのも束の間、草刈りをされたのだろうか。翌朝にはきれいさっぱり姿を消し、草刈り後の草の匂いに混じって香る、かすかなニラの匂いだけがそこにいたという存在を感じさせてくれるのだった。なんだかそのこと自体が短い秋を象徴するかのような出来事だった。  祖母が生前、まだ元気で自宅の庭の片隅で畑をやっていた頃、そこに自生していたのか植えたのかは今となってはわからないけれど、

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地域広報誌 掲載エッセイ⑦

地域広報誌 掲載エッセイ⑦

今回もまた、 地域の農協広報誌に掲載させていただいた過去のエッセイを紹介させていただきたいと思います。 今回は、今年の4月号の記事です。 『火の鳥』 ある日の夜、 外で国際宇宙ステーション「きぼう」を 眺めていたときに、 頭上で気配を感じ視点をずらしてみると、 なんと、 火の鳥が飛んでいました。 …… かのように見えました。 よく見てみるとタンチョウヅルでしたが、 夜空を飛ぶタンチョウは 日中見るよりもかなり大きく見え、 それはまるで、 以前、 手塚治虫記念館で見た 火

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vol.39 白露「井戸」 9/7〜9/22

vol.39 白露「井戸」 9/7〜9/22

 自宅の敷地内には古い井戸がある。この辺りの水はその昔、三春城下の名水のひとつに数えられていたそうで、今もその石碑は名残の石碑はあるものの、飲用としては使えなくなっている。現在は水道水へと切り替えられているが、ご近所の方に伺うと数十年前までは一帯は井戸水を使っているご家庭がほとんどだったようだ。  我が家の井戸は、ポンプが壊れて使われなくなったまま、おそらく何十年も経ってしまったのだろう。井戸を覗きこむと、底の方にはまだ少し水が溜まっているので、枯れ井戸ではないと夫は言う。ポ

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vol.38 処暑「送り火」 8/23〜9/6

vol.38 処暑「送り火」 8/23〜9/6

 お盆が近づくと、in-kyoの二軒隣にある花屋「まるおん」さんの店先にはお供え用の花が束となってズラリと並ぶ。お寺が多い三春町。お盆以外の時期でもきれいに整えられた墓地が多く、お花がお供えされていたりする。「まるおん」さんの冷蔵ケースに通年のように扱われている1〜2輪の白い紫陽花。聞いたことはないのだけれど、故人のためにどなたかがいつも買い求めるからなのだろうかと勝手に想像している。そうだとしたらなんて素敵なことだろう。「白い紫陽花が大好きだった人」そのことが故人の記憶とし

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さなぎの時間 #10 - 黒い円の真ん中で、悪魔は。

さなぎの時間 #10 - 黒い円の真ん中で、悪魔は。

私の住みついていた「円」は、半径2kmほどの広さだった。 円の中にはスーパーマーケットやコンビニエンスストアーがあり、病院や小さな書店などがあり、私の衣食住に関わるほとんどはこの中で済ませられた。 円の中央には、寂れて空家の目立つ新興住宅団地「△▷×〇△ニュータウン」が広がり、円の中心には私たち家族の住む中古の賃貸住宅が建っていた。 家の中には父がいて、私の黒い重りになっていた。父の曲がった足首には足枷がはめてあり、それは2kmの長さの鎖で私の体と繋がっていた。 気休

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地域広報誌 掲載エッセイ⑥

地域広報誌 掲載エッセイ⑥

今日は、 地域の農協広報誌に掲載させていただいている 連載エッセイの記事紹介をさせていただきたいとおもいます。 いつもは週末にしていますが、 今回は少し遅れました。 今回は 今年の8月号に掲載させていただいた記事を 紹介させていだきます。 ちょうど執筆に取りかかろうとした6月、 地元の友人や姉たちから、 職場や家庭内で、 「ほうれんそう」が欠けたり 共有が成されなくて、 トラブルが起きたー! というエピソード話を立て続けに聞いたので、 このような内容の記事を執筆させていた

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地域広報誌 掲載エッセイ⑤
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地域広報誌 掲載エッセイ⑤

今日はまた、地域の農協広報誌に掲載させていただいた過去のエッセイ記事を紹介させていただきたいと思います。 今日紹介させていただくのは昨年の8月号の記事です。 『天窓のおきゃくさま』  3年前の8月のある夜、リビングで本を読んでくつろいでいると屋根の上で物音がしました。 普段から屋根の上をカラスが歩いたりして音がするので、 「またカラスが歩いている」 と、はじめは気にも留めずそのまま本を読んでいたのですが、その後もカタンカタンという音はなかなか止みませんでした。 そこでふと

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vol.37 立秋「蝉」 8/7〜8/22

vol.37 立秋「蝉」 8/7〜8/22

 朝からジリジリと強い陽射しが照りつける。気づけば家の軒下や木戸には、セミの抜け殻があちこちにしがみついている。いつだったか、セミの羽化を自宅の庭先で見たことがある。子供の頃はテレビや図鑑でしか見たことがなかったというのに、生まれて何十年も経って三春のこの土地に来て、初めて目にするとは思いもしなかった。  その日は朝、仕事へ行くために表へ出ると、玄関先でまさに羽化が始まるところだった。白緑(はくりょく)と言ったら良いのか、白みを帯びた淡く美しい緑色をした羽のセミが、地上の日の

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vol.36 大暑「駅」7/22〜8/6

vol.36 大暑「駅」7/22〜8/6

 今年に入って、以前から興味のあったアロマテラピーを学ぶために、月に一度いわき市にお住いの先生のご自宅まで通っている。私が車の運転をしないものだから、はじめの1~2回は夫が用事を兼ねて送ってくれたものの、それもなんだか気が引けて列車で通うことにした。  三春駅からいわき駅までは本数は限られるけれど、磐越東線の直通運転の列車に乗れば約1時間半で行くことができる。私が乗る時間に通学で使っている学生は、田村高校へ通っているようで三春駅で皆降りる。入れ違いに乗り込んだ車内は大抵ガラン

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北川悦吏子さんと半分、青いと五平餅③

北川悦吏子さんと半分、青いと五平餅③

北川悦吏子さんの作品は、歳を重ねた主人公になっていってる。 お気づきですか? ある時、岐阜県美濃市を舞台にした単発ドラマがあった。美濃市はより北部で、山で田舎です。和久井映見さんと谷原章介さん。ラストシーンでしか会わず。連絡を取り合う中で、惹かれ合う。台詞や、文字、頭の中の“言葉”と、美濃市の“景色”のみで構成され、地味とも言える。 で、逆と言える初監督作品映画フランス・パリを舞台にした「新しい靴買わなくちゃ」私は、向井理くんのファンで行ったはずなのに中山美穂さんの振る舞い

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