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教育のはしくれ

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塾産業の中で教育などと偉そうには言いませんが、父親として息子たちと向き合ってきた一人としての体験と意見。時代的に早すぎた「イクメン」としての背景から、言葉を零してみます。
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#大学

『東京大学の式辞』(石井洋二郎・新潮新書)

『東京大学の式辞』(石井洋二郎・新潮新書)

東京大学の教養学部学位記伝達式において、学部長として式辞を告げたことが、マスコミの話題になったことがある。2015年のことである。1964年の東京大学の卒業式で大河内一男総長が語った、J.S.ミルの式辞がメディアで大きく報道されたことについて、三つの間違いがそこにあった、と話したのである。そこから、「けっして他者の言葉をただ受動的に反復するのではなく、健全な批判精神を働かせながらあらゆる情報を疑い

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筋道を立てて

筋道を立てて

どだい、すべての人に同じ教育を施すという発想に、無理があるのかもしれない。勉強したくないという子は、なにもすべての勉強が嫌だというわけではないのだ。エリートを作ろうとするシステムに基づく教育制度の勉強が、自分のあり方とは違うというケースが多々あるのではないだろうか。
 
先月末の、日本経済新聞のコラム「春秋」の前半を引く。
 
「おじさん、大学へ行くのは何のためだ」。受験勉強中の満男が、ふと寅さん

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大学と問い

大学と問い

私は不良高校生だった。社会悪をしていたという意味ではなく、勉強に不誠実だった、という意味だ。しかし、優等高校生も世の中にはたくさんいる。ストイックに受験勉強に向かい、目的を達成して、花の大学生活が始まった人も多いだろう。
 
そこへ待っている魔の手がコミカルに表現されたのが、「四畳半神話大系」で、いま福岡ではそのアニメが放映されている。再放送らしいが、私は初めて見たので、新鮮に喜んでいる。実にクリ

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カルト宗教に注意

カルト宗教に注意

息子が大学生となった。入学式には、学生は入ることができたが、保護者はだめだった。そのためいまはネット配信というものがあり、家でそれをずっと見ていた。
 
式の後のオリエンテーションまで配信してくれ、学生生活の注意などがアナウンスされていた。その中でまず、気をつけてほしいということで、そのために制作されたアニメーションがひとつだけ流された。アニメとは言っても、紙芝居的なものだったが、ストーリーも声も

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一里塚

一里塚

私は、国立大学に属したことがない(通ったことはある)。なまくらな理系信者は現役の時に落ち、一校しか受けていなかったので浪人となった。金銭的負担をかけたくなかったのもあり、宅浪をした。それは文系に転じたせいでもあったが、結果、翌年も届かなかった。後に、国立大学の大学院を受験したが、これも嫌われた。もとより、それに見合う論文ではなかったから、評価は適切だったと思う。
 
行ってもよいということで受験し

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大学について少し考えてみる

大学について少し考えてみる

大学とは何か。歴史を辿ると、ヨーロッパにおけるその成立をひとつ押さえなければなるまい。いまから800年ほど昔の世界に、大学は生まれた。人類は過去に大帝国をいくつか経験したが、ヨーロッパでは国家という概念よりも、むしろ私たちのイメージする都市国家としての機能が通例であったものと考えられる。その中で、互いの関係はより進展しており、いわゆる自治都市という考え方で成立した共同体は、自由に人の流れを形成して

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