マガジンのカバー画像

本とのつきあい

198
本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
運営しているクリエイター

#新型コロナウイルス

『感染症の世界史』(石弘之・角川ソフィア文庫)

『感染症の世界史』(石弘之・角川ソフィア文庫)

新型コロナウイルス感染症以前の本である。単行本としては2014年に出ており、この文庫も2018年である。新型コロナウイルスについて知るところのない本である。おそらく2003年のSARSまでは十分知るところであるにしても、文庫版はその後の情勢をも踏まえて加筆修正を施しているのだという。
 
微生物が人や動物などの宿主に寄生し、そこで増殖することを「感染」といい、その結果、宿主に起こる病気を「感染症」

もっとみる
『日本疫病図説』(畑中章宏・笠間書院)

『日本疫病図説』(畑中章宏・笠間書院)

もちろん、コロナ禍における関心の中から生まれた本であるはずである。だが、それを強調しているところはない。著者は純粋に、日本における民間伝承を、豊富な写真資料から見せたいという思いのようである。民俗学者として、知るところの多くの歴史的産物を、疫病という観点から一覧してくれている。これはありがたい。日本人が疫病に対して古来どのように考えていたかということを、一目で知ることができるからだ。
 
そもそも

もっとみる
『現代思想2020年11月号 特集・ワクチンを考える』(青土社)

『現代思想2020年11月号 特集・ワクチンを考える』(青土社)

様々な論者が力のこもった文章を載せてくれる「現代思想」、テーマに関心が強ければ時々買うことにしている。新型コロナウイルスの感染拡大の年の秋に編まれたそのテーマは、ズバリ「ワクチン」。その後、ワクチンが供給され始めた頃に私がこれを読みたいと思い、手配した。が、実はこの編集がなされたときには、ワクチンが本当に接種されるのかどうか、未定だったのだ。それは常識的にはそうである。あまりにも治験期間が短すぎる

もっとみる
『ユダよ、帰れ』(奥田知志・新教出版社)

『ユダよ、帰れ』(奥田知志・新教出版社)

一読して、主題説教だと分かる。それは著者本人もあとがきのようなところで述べている。キリスト教の礼拝における説教、あるいはメッセージと呼ばれる聖書のお話においては、大きく主題説教と講解説教に分類できると見られている。後者は聖書に書いてあることを説明することを中心とし、前者はあるテーマに沿って聖書を引用しながら話すものである。どちらがよいとも言えないし、私は個人的に、これらの分類も便宜上のものだと思っ

もっとみる
『ポストコロナの生命哲学』(福岡伸一・伊藤亜紗・藤原辰史)

『ポストコロナの生命哲学』(福岡伸一・伊藤亜紗・藤原辰史)

2021年9月発行の集英社新書。ポストコロナを冠する類書はたくさんあるが、これはたぶん抜群のものであると思う。尤も、経済の動向にしか関心がない方にとっては落胆するだろう。人類文明の行く先を、冷静な眼差しで見つめる、現代的な哲学の観点から学びたい人にとって、抜群だということだ。
 
かつて『生物と無生物のあいだ』が広く読まれた福岡伸一氏。そこで直接扱う暇はなかったが、扱うことも可能であったと思われる

もっとみる
『新型コロナワクチンQ&A100』

『新型コロナワクチンQ&A100』

(コロワくんサポーターズ・日経メディカル開発)
 
第一、表紙がいい。コロワくんというキャラクターが、拍子抜けするような呑気な顔で立っている。親しみやすさからしても、十分である。とにかくこのウイルス感染を免れるにはどうすればよいのか、それが知りたいだけである。となれば、手っ取り早く質問形式で回答が与えられているというのがよい。その意味でも、本書の形式は非常によかったと思う。説明も、ワクチンの「ワ」

もっとみる
『疫病の精神史』(竹下節子・ちくま新書・2021年6月)

『疫病の精神史』(竹下節子・ちくま新書・2021年6月)

カトリックでの宗教文化とくればいま一番脂ののった論者かもしれない。パリ在住で、ヨーロッパの今にも詳しい。キリスト教文化についての分かりやすい著作が近年多く、信頼性も高い。このちくま新書からも、『キリスト教の真実』と『女のキリスト教史』が先に出されており、興味深く読ませてもらった。ズバッと言い切ってくれるところなど、むしろ清々しい印象すら与えるものである。
 
この新型コロナウイルスで日本もだが、欧

もっとみる