マガジンのカバー画像

こころ

146
ひとのこころ、見つめてみます。自分のこころから、誰かのこころへ。こころからこころへ伝わるものがあり、こころにあるものが、その人をつくり、世界をつくる。そんな素朴な思いに胸を躍らせ…
運営しているクリエイター

#痛み

ひとの痛みを

ひとの痛みを

当事者に、なれるわけがない。だのに、当事者のことを分かっているかのように、振舞うのは、失礼なことでもあるし、「ええかっこし」であるとも言える。
 
分かっているのではない。無力感に打ちのめされた、と言えば、自己中心であるに過ぎないかもしれないが、正直なところ、そう言うのが、一番言いたいことに沿うような気がする。
 
1995年1月17日、未明のあの揺れは、まず私が気づいた。カタカタカタカタ……それ

もっとみる
「私たちと一緒に その先の光を見に行こう。」

「私たちと一緒に その先の光を見に行こう。」

コロナ禍での受験は、まことに歯を食いしばるような営みだった。もともと受験勉強というものはストイックなイメージがあるが、束縛の大きさから考えても、全くゆとりのない生活を強いられていた受験生である。
 
兵庫県立大学の広報チームが教えてくれた。受験生へのエールである。最初の言葉は、そこで呼びかけられたものである。

https://www.u-hyogo.ac.jp/message2021/index

もっとみる
「護られなかった者たちへ」

「護られなかった者たちへ」

妻がどうしても見たいと言ったのは、佐藤健さんの故であったが、ようやく機会ができて、貴重な午後をこの長い映画で満たした。
 
もちろんネタバレは御法度である。映画のストーリーや見所をお伝えするのはよろしくない。ただ、東日本大震災を踏まえた話であること、保健福祉センターが舞台であり、その生活保護というデリケートな事柄について深い問題意識をもたらすこと、これくらいは触れてもよいものと判断する。
 
震災

もっとみる
『女性の生きづらさ その痛みを語る/こころの科学 SPECIAL ISSUE 2020』

『女性の生きづらさ その痛みを語る/こころの科学 SPECIAL ISSUE 2020』

(信田さよ子編・日本評論社)
 
私は基本的に男性である。女性の気持ちを分かっているなどとは言わないが、一定の理解はもっているつもりだった。だが、そんな甘いものではなかった。本書でそれを思い知らされた。だからまた言う。男性という立場にいる者は、本書を読まなければならない、と。
 
書かれてあることを一つひとつここで並べることは無理だ。母と娘という問題も、耳では聞くが、生活をしていく中でどれほどそれ

もっとみる
ただ非難だけをする前に

ただ非難だけをする前に

出入国在留管理局において死亡事故があったことで、いまもなお議論が続いている。当然これは問題であり、蔑ろにしてはならない。
 
だが、これに乗じてか、出入国在留管理局が悪の権化であるかのように一方的に非難する人が、一部だがいることは非常に残念である。
 
仕事の上でのミスや勘違い、至らぬ点があることは軽視してはならないが、さも管理局がけしからん存在であるかのように叫んだり、それに近い言い方で(世論と

もっとみる
熊本地震から5年

熊本地震から5年

2016年4月14日、熊本地震の最初の一撃は、塾での授業中のことだった。もう間もなくすべて終わり、帰りの仕度を始めようかという呼吸の頃だった。さすがイマドキである。教室中に、突然ウワンウワンと異常な音が響きわたった。
 
これは何だ、と私が驚いている中で、初期微動が始まった。これで私の脳裏にはすべてがつながった。「机の下に潜れ!」
 
かなり強く揺らされた。横揺れだったと思う。これが熊本に震源をも

もっとみる