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哲学のかけら

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哲学も少しはかじっています。なにもそんなこと考えなくてもいいんじゃない、と言われるところも、でもさ、と考えてみる、それが哲学。独断と懐疑に終わらずに常に自分の至らなさを認めるあた…
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#カント

カント生誕300年

カント生誕300年

イマヌエル・カントは1924年4月22日に生まれたと伝えられている。ケーニヒスベルクの町から出ずして、世界中の情報を得ていた。大学教授としての哲学者の出現は、カントを嚆矢とする、と言ってもよいであろう。論文はラテン語の時代から、じわじわと母国語に移る時期であったが、哲学者が専門的になってゆくにはまだ早い時代であった。
 
つまり、カントは当初は自然科学者であったのであり、論理学は当然かもしれないが

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京都の先輩の話

京都の先輩の話

福岡から、京都の大学に来た私をあたたかく迎えてくれたものは、たくさんある。まず逆の意味から言えば、田舎者の私を騙すような輩に出会うことがなかったのは幸いであった。そのうち、学生を大事にする京都の風土があるのもよく分かった。大学に紹介してもらったアパートは、自炊ができるという条件で探した、古いもので、その分家賃もいくらか抑えられていたが、私には決して安くはなかった。一か月の食費は、家賃の半分で賄った

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『聖書を読んだら哲学がわかった』(MARO・日本実業出版社)

『聖書を読んだら哲学がわかった』(MARO・日本実業出版社)

著者の肩書きは表紙に書かれている。「上馬キリスト教会ツイッター部」である。いま一時の勢いは静かに落ち着いたようだが、それでも10万人を越えるフォロワーがいるツイートというのは、キリスト教関係では異例である。つまりは、クリスチャンでない人にたいへんな支持を受けているということだ。
 
それは、キリスト教らしからぬ、おふざけと、若者の感覚のツボを突いてくる、気取らない呟きなのである。教会そのものは、極

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コミュニケーション能力

コミュニケーション能力

上白石萌歌さんについてご存じない方は、申し訳ないが少しばかり検索をして戴きたい。映画「羊と鋼の森」での姉妹共演で私はよく知るようになったが、姉の萌音さんのラジオ番組にゲストで出演していたのが最初だったかもしれない。「未来のミライ」での声も新鮮だったが、「いだてん」の前畑秀子役も好演していた。ラジオ番組をレギュラーでパーソナリティとして務めるのは今年の春からだが、それを聞くと、彼女のコミュニケーショ

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法

中学で生徒会役員をしたとき、それはどこか「ごっこ」めいていたと思う。何かしら事務の手続きを覚えるための練習の場のようなものだった。事務レベルで何をするか、それを総会という建前の中でどう営むか。いろいろ教えてもらった。
 
それでも、生徒総会で、靴下のライン数についての校則を変更するに至ったのは、ひとつの成果であったかもしれない。規則を変えるにはどういう手続きが必要なのか、学んだ。
 
ブラック校則

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『晩年のカント』(中島義道・講談社現代新書・2021.1.)

『晩年のカント』(中島義道・講談社現代新書・2021.1.)

2021年1月発行の知らせを聞いてすぐに注文。中島義道氏といえば、過激な発言で知られる哲学者を思う人も多いだろう。当人は過激だとは考えていない。当たり前のことを当たり前に言っているだけだ。これが出版社側からしてもいけると思ったのか、その著述は幾多の本となって、書店を賑わせている。
 
れっきとしたカント学者だ。著者は当初から、死への拒否感を丸出しにして本で叫び、世間の道徳的不条理に吠えてきていたが

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