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日記3

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月の井のお猪口

月の井のお猪口

 お猪口が割れた。粉々に。もはや修復は不可能であった。
 お猪口が割れた、のだが、溜まりに溜まった憤怒に任せて壁・床に叩きつけて割ったわけではない。僕以外の人間が実行に移したのだ。誰か。従姉妹の息子、つまり従甥が割ったのだった。
 従甥はなぜ割ってしまったのだろうか。思うに、お猪口に注がれていたオレンジジュースがなくなったことに絶望、「なんで俺のお猪口にはオレンジジュースが無いんだ。見てみなさい、

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山之口貘『鼻』という詩について

山之口貘『鼻』という詩について

 沖縄を故郷としている詩人 山之口貘が書いたものの一つに『鼻』という詩がある。短い詩なので引用してみる。

 たった四行の詩である。たった四行であるが、この短い詩の中に含まれている場面というものがありありと頭の中に浮かんでは積まれていった。平坦な気持ちで詩を読むと、「その鼻GOODやね」「うわ、恥ず。やめろや」と言っただけの内容であるのだが、なぜ鼻がいいと思うのか、いつどのような時合で言ったのか、

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三栖一明

三栖一明

 これまで自伝というものにあまり興味を持つことができなかった。なぜか。他人の人生に興味を持つことができないからである。と、ソリッド・スネークの如く答えることができるのは、他人の人生を顧みないほどに自身の人生を何かに捧げた経験がある人間だけである。つまり、なにも成し遂げていない一般ピープルくんが「他人の人生なんか興味ないです」と口にすると、ただの恥をまとった人間である。痛い人間である。
 しかしなが

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頭アッパラパーで詩を踊る

頭アッパラパーで詩を踊る

 酒を飲んだときには詩を読むのが一番に具合がいい。
 この具合がいいというのは、酒でアッパラパーになった頭には何かを理解するための能力が欠如しているので、難しいことは理解できないことに由来する。
 文章というのは言葉の羅列ですよという様相をしておきながら、探ってみると何かしらの意味を含んでおり、それがどんどん長くなっていくと理解する為にはそれ相応の理解力を要求してくる。素面の間であればなんとか付い

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愛社精神がないないら何に帰属するのか

愛社精神がないないら何に帰属するのか

 「愛社精神がありませんね。真面目な態度で仕事に取りん組んでいますか?」と言われた。上司との面談の場だった。
 正直、背筋がゾッと冷えた。なぜか。この後の返答次第で仮初の社会生活が崩壊するかもしれないと思ったからだ。なーんか人と関わるのは嫌だけど、かといって其れをまるっきり切って生活できるかといえば否であるから会社に属して社会生活を営んでいるよう取り繕う、というのが仮初の社会生活なのだが、それが崩

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大衆中華 足立屋

大衆中華 足立屋

 最近、近所に『大衆中華 足立屋』という店ができていた。名前から察するに沖縄の大衆酒場界を支配している足立屋の系列店であろう。
 この足立屋というのは、飲酒運転ワースト1位の沖縄県に本土の大衆酒場文化という、さらに酒の依存度を加速させんが如く彗星のように現れた救世主のことである。これまた近所にある『大衆劇場 足立屋』では、千円を払えば当時沖縄では珍しかったモツ煮込みとそれなりの酒三杯を舐めることが

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「これがイッセー尾形です」

「これがイッセー尾形です」

 高校時代、なんの授業か全くもって忘れたのだが「本日はイッセー尾形が出演している映画を観ようと思います」と言い放ち、予定されていた授業を放り、イッセー尾形が出演している映画『悲しい色やねん』という映画を放映するという先公がいた。最高だと思った。
 だが、この先公がかなりの問題だった。なにが問題か。映画の内容にてイッセー尾形が出る度に「見てください! 彼がイッセー尾形です。いやぁ、若いなぁ、いい感じ

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丸くなって、普通になって、転がって

丸くなって、普通になって、転がって

 あくる日、友人と酒を交わしていると「あいつは恋人ができて丸くなった」と嘆いては、酒を何杯も飲んでは吐き戻す行為を繰り返していた。
 そのまた別の日、友人から「あいつは結婚して子供を育てるようになって普通になった」と落胆の連絡が届いていた。
 そのまたある日、定期的に覗いているブログを読んでいると書き手に対して「あなた最近尖ったこと書かなくなりましたよね。はっきり言ってキモいっす」というコメントが

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『コミティア魂』がかなり良かった

『コミティア魂』がかなり良かった

 コミティアという「自主制作漫画誌展示即売会」という文字にすると堅苦しいこの上ないイベントに行ったことがある。堅苦しい旗揚げを飲み込みやすく噛み砕くと「オリジナル作品だけの同人誌即売会」と言った具合になる。つまり、自分の欲望を紙という媒体を通して世間に知らしめる発表会と言った具合のイベントだ。
 これが猛烈に良かった。猛烈に良かったというのには理由が存在する。当たり前だ。理由なく良かった良かったと

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繰り返される諸行は無常

繰り返される諸行は無常

 「繰り返される諸行無常」という言葉をいつまで聞き続けることができるであろうか。そんなのは既に決まっている。死ぬまでである。諸行無常と言い続ける人間が死ぬまで聞くことができる。それとも永遠に聞き続けることができるのだろうか。誰かに伝播し、その誰かが言い続けることによって聞き続けることができるのだろうか。そんなことは知らん。
 ZAZEN BOYSを最後に見たのはいつだったかを思い出す。吉田一郎がベ

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儀間真常と踊るにわ

儀間真常と踊るにわ

 頭の中では常に儀間真常が鎮座している。なぜ鎮座しているのか。それは他の人より少しばかり知っているにほかならない。例えば、あなたが今春のアニメについて知っているとして、何から観ようか何々は面白そうだと思うことがあるだろう。それと同じように、僕の頭の中では儀間真常がずんと鎮座している。
 つか、儀間真常ってなんすかと思うかもしれない。それに関しては大いなる同意をぶつけなければならないと思う。なぜか。

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街路樹を殴る中学生 in tha 夕暮れ

街路樹を殴る中学生 in tha 夕暮れ

 影響を受けやすい質をしており、良いなと思うものがあればすぐさまに同化願望が湧き上がり、その境地に至ろうと真似をする。だが、体外は失敗や碌でもない物に変貌し中途半端に終わる。生活は此れの繰り返しである。
 話は変わるが、中学の思い出といえば骨折に限る。これは部活動や勉学、課外活動などに粉骨砕身取り組んだという意の骨折りではなく、身体的に骨折したのだ。それも街路樹を殴って。実に若くて蒼い初期衝動的な

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頭の中で踊るH.O.K.K.E.

頭の中で踊るH.O.K.K.E.

 頭の中では常にH.O.K.K.E.が泳いでいる。無惨にも腹を割かれ水分を抜き取られた乾物の姿でも、元気に海原を駆け巡っていたであろう生身の姿でも、どちらの姿でも泳いでいるし、代る代る泳いでいる場合もある。本日は乾物のH.O.K.K.E.が縦横無尽に泳いでいた。
 酒を飲みに店に入った際、品書きにあるH.O.K.K.E.の文字を目にすると心が踊る。すかさず頼んでは塩味豊富で肉厚な身を頬張り酒を流し

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ソーシャルゲームはエロいイラストを見ることが出来ないと続けることはできない

ソーシャルゲームはエロいイラストを見ることが出来ないと続けることはできない

 あれだけ好きだったソーシャルゲームに一時も向かい合わない時間が増えてしまつた。ローンチしてから3年以上、片時も離さずに続けていたはずなのに今や起動すらしなくなったし、誤って起動したら無慈悲無感情にスワイプを行い停止させる。そして二秒後には起動したことすら忘れ、ソーシャルゲームの存在を記憶の彼方へと飛ばす。これの繰り返しだ。
 なぜこんなことになってしまつたのか。単純に飽きがやってきたのだろうと断

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