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読書日記

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自分が読んだ本の感想記録をまとめました
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#読書

【読書録】天の光はすべて星 / フレドリック・ブラウン

【読書録】天の光はすべて星 / フレドリック・ブラウン

2022年3月5日 読了

数年ぶりの再読。アニメ『天元突破 グレンラガン』の最終話サブタイトルになった小説として有名で、実際アニメがきっかけで当時は小説がプレミア価格になったとか。アニメ内のセリフにも「天の光はすべて星だ!」というセリフがあり、文庫版あとがきもアニメ脚本の中島かずきさんが書いている。

初めて読んだときも良い小説だと思ったが、改めて再読して大きく印象が変わり、涙腺が緩むほどものす

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【読書録】ゼロ時間へ / アガサ・クリスティ

【読書録】ゼロ時間へ / アガサ・クリスティ

2022年2月22日 読了

タイトルがSFみたいで前から気になっており、さらにクリスティ本人の選書でもファン投票でもベスト10内に入っていると知って手に取った。

通常の推理小説は殺人が起こってから推理が始まり犯人を見つけ出すが、この小説は殺人が計画された時間から始まり、犯行の瞬間である「ゼロ時間」へ向かっていく、ということが作品内でも冒頭で語られる。前情報としてその叙述法を聞いていたので、どん

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【読書録】大聖堂 / レイモンド・カーヴァー

【読書録】大聖堂 / レイモンド・カーヴァー

2022年1月31日 読了

漫画「バーナード嬢曰く。」6巻で取り上げられていて気になったため手に取った。村上春樹翻訳による短編集。

あとがきでも村上春樹が解説している通り、どの短編も「failure(敗者)」が登場する。人生において、何かの要素が欠けている人たち。そんな生々しい人物たちの、やるせなく、なんでもない日常の中で起こるちょっとした出来事を通して、喜怒哀楽では表すことができない絶妙な感

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【読書録】カーテン / アガサ・クリスティ

【読書録】カーテン / アガサ・クリスティ

2022年1月18日 読了

名探偵ポアロ最後の事件ということで、これまでポアロシリーズを読み漁ってきた締めくくりとして手に取った。ただ単にポアロが最後に登場する作品というわけではなく、ポアロという人物の顛末がしっかり描かれた内容。これがまた、ポアロシリーズの最後、そしてポアロという男の最期にふさわしい、素晴らしい内容だった。

ポアロ最後の作品という感傷的な要素もあるが、それ以上にミステリーとし

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【読書録】オリエント急行の殺人 / アガサ・クリスティ

【読書録】オリエント急行の殺人 / アガサ・クリスティ

2022年1月8日 読了

タイトルがここまで有名な作品なのに、内容について何の前知識もなく読むことができたのは本当にラッキーだと思う。こんな大胆なトリックならどこかで知ってしまってもおかしくないようなものだが、まんまと結末にすごい衝撃を受けた。

正直なところ結末まではかなり退屈だった。列車内で起こった殺人について、大量の登場人物を一人ずつ呼び出して順番に証言をとっていくだけの展開が延々と続く。

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2021年に読んだなかで特に面白かった本ベスト5

2021年に読んだなかで特に面白かった本ベスト5

2021年は自分の人生史上、もっとも「何もしなかった1年」だったように思います……。
でもこんな年が1年くらいあっても良いよねという気持ちで、来年は色々やりたいことをやる1年にしたいです。

さて、2021年はあまりたくさん読書もできず、20冊くらいしか読めなかったのですが、そのなかでも自分の中で殿堂入りするほどの出会いがいくつかありました。今回はそんな、2021年に自分にとって大切な出会いとなっ

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【読書録】スタイルズ荘の怪事件 / アガサ・クリスティ

【読書録】スタイルズ荘の怪事件 / アガサ・クリスティ

2021年12月28日 読了

ポアロ初登場作品ということで、ルーツを知る意味で手にとったのだが想像以上の面白さに驚き。

ミスリードを複雑に絡ませ続け、どんでん返しに次ぐどんでん返しで最後の最後まで驚かされ続ける。この人が真犯人だと思ったらやっぱりこの人が、いやこの人が……という具合に、まんまと翻弄され続けてしまった。
ただ、どんでん返し的な面白さこそ魅力ではあるが、フェアプレーな推理を期待して

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【読書録】死のドレスを花婿に / ピエール・ルメートル

【読書録】死のドレスを花婿に / ピエール・ルメートル



2021年12月19日 読了

いわゆる「イヤミス」(嫌な気持ちになるミステリー)小説で、湊かなえ「告白」の、パズルのような復讐劇をよりおぞましくしたようなお話。
気分が悪くなるほどの気持ち悪さ、胸糞の悪さで読んでいて辛かったが、緻密に作り込まれた構成にどんどんのめり込んでしまい、後半はページを捲る手が止められず一気に読み終わってしまう面白さだった。

第1章は統合失調症のような症状を持つ女性

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【読書録】予告殺人 / アガサ・クリスティ

【読書録】予告殺人 / アガサ・クリスティ



2021年11月14日 読了

老婦人探偵 ミス・マープルシリーズ。クリスティ作品の中でもかなり評価が高いということで手に取ってみた。公式ファンクラブの人気投票でも「そして誰もいなくなった」「アクロイド殺し」「オリエント急行」に並ぶほどの人気らしい。実際、ミステリーとしてかなりクオリティが高く、面白かった。

新聞広告に殺人が予告され、その時刻に停電の中で人が殺されるシーンが劇的で印象深い。ミ

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【読書録】ナイルに死す / アガサ・クリスティ

【読書録】ナイルに死す / アガサ・クリスティ

2021年10月25日 読了

250ページくらいずっと殺人が起こらない展開に驚き。じっくりと多くの登場人物を描いていく前半がしっかりとキャラクターの魅力や伏線を描いていて、複雑に積み上げたプロットを最後に解放させるカタルシスはさすがだった。
伏線を積み上げながら同時に人物の魅力を描くプロット力もすごいが、それゆえに読者にとって、殺人が起こるシーンがとてもショックなものになっている。殺人事件が起き

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ABC殺人事件 / アガサ・クリスティ

ABC殺人事件 / アガサ・クリスティ



2021年10月6日 読了

とても有名な作品だが、内容もトリックも知らない状態で読めたのは幸福だった。

Aから始まる名前の町でAから始まる名前の人物が殺され、Bの町でBの頭文字の人物が殺され、Cの町でCが殺され……という連続殺人が起こるあらすじ。探偵エルキュール・ポアロ宛に犯人から挑発的な殺人予告状が届くなど、あらすじだけを見ればよくあるライトな連続殺人ミステリーのような印象もあるが、実際

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カササギ殺人事件 / アンソニー・ホロヴィッツ

カササギ殺人事件 / アンソニー・ホロヴィッツ



上巻 2021年9月6日 読了
下巻 2021年9月22日 読了

あらゆるミステリー賞を総なめした作品とのことだが、個人的にはいまひとつハマりきれない作品だった。

まず苦手意識を持ったのが、文章にも物語にも冗長さを感じた点。文体が説明的で長ったらしく、展開にも退屈さを感じる点が多かった。

これは本の背面にあらすじとして書かれているのでネタバレでは無いと思うが、上巻では作中作として「カササ

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緋色の研究 / コナン・ドイル

緋色の研究 / コナン・ドイル



2021年8月20日 読了

シャーロック・ホームズの作品ってそういえば読んだことがないなぁと思って手に取った。この作品は、ホームズとワトスンが出会う第一作として、ワトスンの視点でホームズの変わり者ぶりと、その超人的な推理が描かれていく。

ホームズのキャラクターはとても個性的で、人並外れた観察眼に驚かされるワトスンだが、読者もワトスンと同じ視点でホームズという変人を目の当たりにできるのが面白

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ハローサマー、グッドバイ / マイクル・コーニィ

ハローサマー、グッドバイ / マイクル・コーニィ



2021年8月10日 読了

このタイトル、女の子が表紙の爽やかな装丁、「恋愛SF小説」と銘打たれた紹介で、ライトな内容を想起させるが、実際はかなり硬派なSF作品だった。

地球ではない惑星の、人間によく似た異星人の物語で、その気候、自然現象、生物、文化、国家間の戦争、政治といった世界設定が緻密に作り込まれている。見慣れない言葉もたくさん出てくるが、そこまで複雑ではなく、読んでいれば普通に理解

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