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【読書録】死のドレスを花婿に / ピエール・ルメートル

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2021年12月19日 読了

いわゆる「イヤミス」(嫌な気持ちになるミステリー)小説で、湊かなえ「告白」の、パズルのような復讐劇をよりおぞましくしたようなお話。
気分が悪くなるほどの気持ち悪さ、胸糞の悪さで読んでいて辛かったが、緻密に作り込まれた構成にどんどんのめり込んでしまい、後半はページを捲る手が止められず一気に読み終わってしまう面白さだった。

第1章は統合失調症のような症状を持つ女性・ソフィーの視点で描かれ、彼女のまわりで巻き起こる猟奇的な殺人が、「信頼できない語り手」の手法で描かれていく。
正体不明の不気味さが漂う第1章から、第2章では視点が変わり、ある人物の日記が綴られていくが、そこで段々と明らかになる真相は、吐き気を催すほど邪悪なものだった。
第2章はとにかく胸糞で読むのが辛いが、最後に第1章と時系列がつながる瞬間の絶望的な真実には鳥肌が立った。
第3章以降は、これまでそれぞれ描かれた二人の視点が同じ時系列でつながって描かれていく。真相を知った状態で繰り広げられる展開や人物同士のやり取りは、読んでいてとにかくヒヤヒヤさせられ、どうなってしまうのか目を離すことができない。

最後の最後で標題の意味がわかる結末がとても印象深く、グロテスクさに潜む映像的な美しさを感じさせるラストがこの作品に花を添えている。エピローグ含め爽快感すら感じる見事な構成だったが、それでいてドロッとしたわだかまりを残してくれるイヤ~な読後感こそまさにイヤミスの中毒性という感じで、それを高いクオリティでやってのけている素晴らしい作品だった。イヤミス特有の、登場人物が全員狂気的すぎて誰にも感情移入できないところもまた良く、大満足の一冊。


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