見出し画像

ハローサマー、グッドバイ / マイクル・コーニィ

画像1

2021年8月10日 読了

このタイトル、女の子が表紙の爽やかな装丁、「恋愛SF小説」と銘打たれた紹介で、ライトな内容を想起させるが、実際はかなり硬派なSF作品だった。

地球ではない惑星の、人間によく似た異星人の物語で、その気候、自然現象、生物、文化、国家間の戦争、政治といった世界設定が緻密に作り込まれている。見慣れない言葉もたくさん出てくるが、そこまで複雑ではなく、読んでいれば普通に理解できる程度に抑えられているのも上手い。

お偉い役人の息子である主人公・ドローヴと、酒場の娘のヒロイン・ブラウンアイズとの身分差のある恋愛を軸に物語が進むが、語り手である主人公の絶妙な心理描写など、文章表現の巧みさも目立つ。SF作品でここまで文章の良さにうっとりしてしまう作品も珍しいと思ってしまうほどで、作品の世界に入り込まされた。

物語は戦争の重苦しい影のなかで進行し、全体的に暗い雰囲気が続くので読むのがしんどい部分もあるが、そのなかで描かれた細かい世界設定のすべてが伏線として一気に回収されるラストの怒涛の展開が凄まじい。
天文学的なSF要素あり、政治的なディストピア要素ありのたたみかけに大興奮させられたが、もはやバッドエンド以外あり得ないだろうという状況からの、これまた伏線を巧みに活かしたラスト1ページの大どんでん返しで完全にノックアウトを食らい、全身に鳥肌が立った。興奮しすぎて眠れなくなったほど。
ややわかりづらいので、ラストがどういうことなのかわからなかったという人もいるかもしれないし、力技すぎると感じる人もいるかもしれないが、しっかりと世界設定の下地を作り込んだうえでのどんでん返しだったので、自分にとってはこれだけでマイ・ベストSFを揺るがすほどの衝撃だった。

設定の作り込み、構成の作り込み、青春小説としての描写の上手さ、ラストの衝撃、すべてが完璧な小説に出会ってしまった。これだから小説を読むのはやめられない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?