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2021年に読んだなかで特に面白かった本ベスト5

2021年は自分の人生史上、もっとも「何もしなかった1年」だったように思います……。
でもこんな年が1年くらいあっても良いよねという気持ちで、来年は色々やりたいことをやる1年にしたいです。

さて、2021年はあまりたくさん読書もできず、20冊くらいしか読めなかったのですが、そのなかでも自分の中で殿堂入りするほどの出会いがいくつかありました。今回はそんな、2021年に自分にとって大切な出会いとなった本を紹介したいと思います。
(こういうことをしないと年末感が出ないので……)

1.『朗読者』ベルンハルト・シュリンク

1995年の作品。15歳の少年である主人公と、母親といってもおかしくないほど年齢が離れた女性との恋愛物語……というあらすじですが、ナチスの戦争問題などが色濃く絡んでくるとても重たい内容。
徹底した主観視点で主人公の後悔や自責が描かれ、とにかく読後感が凄まじい。一体何が正しかったのか、どうすれば良かったのかという答えは作品内では一切明かされず、主人公の苦悩を読後も追体験させられる感覚が、未だかつて味わったことのない読書体験でした。
あとがきで引用されている著者の「(過去の)克服は存在しない。しかし、過去が現在においてどのような問いや感情を引き起こすのかを意識しつつ生きる生というのは存在する」という言葉は今後人生に影響を受けそうなほど感銘を受けました。まさにこの作品はその言葉を表している内容で、今年読んだ中でもずば抜けて素晴らしかったです。
2008年には『愛を読むひと』という標題で映画化もされており、こちらも見てみたいところ。

2.『アルジャーノンに花束を』ダニエル・キイス

1959年の作品。とても有名な作品で、日本でもジャニーズ主演でドラマ化されているほどなので正直お涙頂戴系の小説だと侮っていましたが、物凄く感動させられました。
32歳にして幼児並の知能しか持たない主人公・チャーリーが、手術によって天才的な頭脳を手に入れるという、あらすじだけ見ると安易な設定にも思えますが、どんどん頭が良くなる過程、見える世界の変化など、ひとつひとつの描写が物凄くリアルで、読んでいてとにかく没入させられました。
チャーリーの手記という形で最初はひらがなと誤字だらけの状態からどんどん文章が上手くなっていく構成も面白いし、急速に頭が良くなることで起こる自己乖離の過程も科学SFばりに詳細で、その描写力に圧倒させられます。「人間の幸福とは?」というありがちな問いについて、没入感だけで深く考えさせてくれるすごい一冊でした。

3.『ハローサマー、グッド・バイ』マイクル・コーニィ

1975年の作品。余談ですが今更ながら施川ユウキ先生の『バーナード嬢曰く。』にハマり、その中で「どんでん返しが面白いSF」として紹介されていて手に取りました。可愛い装丁やちょっとクサいタイトル、恋愛SF小説というジャンルもあってライトな内容なのかと思いきや、ガチガチに設定が作り込まれた硬派なファンタジーSFでした。
地球ではない惑星の、人間に似た異星人の物語で、その世界の気候や自然現象、生物、文化、戦争、政治などの設定がとにかく作り込まれています。それでいて、主人公の絶妙な心理を描写する文章力も素晴らしく、恋愛小説としての面白さもしっかり持ち合わせているのが魅力的です。
しかし何よりも、その作り込まれた世界設定がすべて伏線として回収される怒涛の展開と、ラスト1ページでのどんでん返しは鳥肌モノ。読み終わったあと興奮で眠れなくなりました。マイベストSFを揺るがすほどの小説と出会ってしまった…。

4.『ナイルに死す』アガサ・クリスティ

1937年の作品。今年は個人的にアガサ・クリスティの年でした。前から読みたかったアンソニー・ホロヴィッツの『カササギ殺人事件』が、いざ読んでみたら個人的に合わず、ミステリー消化不良を起こしてしまい、それがきっかけでクリスティ作品を読み漁りました。
なかでも面白かったのがこの『ナイルに死す』でした。ポアロシリーズのなかでも名作と名高い作品ですが、まず250ページくらい殺人が起こらない内容に驚き。事件が起こるまでじっくりと登場人物を描く前半パートで、しっかり伏線を張りながら人物の魅力を描く設計が面白いです。だからこそ、殺人が起こるのがとてもショッキングで、事件が起こるのが当たり前な推理小説において殺人にショックを受けるというのは新鮮な体験でした。
登場人物全員がなんらかの思惑を抱えていて、それが複雑に交錯してミスリードを張り巡らせながら、キャラクター同士のロマンスをも描いていくという立体的なプロットが素晴らしくよく出来ていて感心させられます。すべての真相が明らかになるラストのカタルシスも凄い。

5.『死のドレスを花婿に』ピエール・ルメートル

2008年の作品。いわゆる「イヤミス(嫌な気持ちになるミステリー)」に属する小説ですが、ここまでおぞましい気持ちにさせられるとは思っていませんでした。気分が悪くなるレベルの胸糞展開ですが、緻密に練られた構成が素晴らしく、後半はページを捲る手が止まらなくなるほどの面白さでした。
統合失調症のような症状を持つ女性と、その周りにつきまとう猟奇的な殺人。正体不明の不気味さが漂う第1章から、第2章では視点が変わり、段々と真相が明らかになります。この第2章のラストで時系列がつながる瞬間に明らかになる真実が絶望的で鳥肌が立ちました。第3章以降の2つの視点が交錯していく展開は目が離せません。
ラストのタイトル回収、映像的にグロテスクな美しさ、しっかり決着がつく爽快感なども素晴らしいのですが、それでも読後にドロッとした嫌〜な気持ちがしっかり残ってくれるあたりも魅力的で、イヤミスならではの「みんな狂ってて誰にも共感できない」感じも最高でした。

みなさん良いお年を

こうしてみると今年は海外小説ばっかり読んでいた気がします。来年は日本の小説も色々読んでいきたいです。
また、普段まったく読まない漫画も今年は色々読みました。『宝石の国』『HUNTER×HUNTER』『チェンソーマン』『バーナード嬢曰く。』……。世の中にはまだまだ面白い物語がたくさんあるなぁ……。

これからもチマチマと読書録をつけていこうと思いますので、来年もまたよろしくおねがいします。

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