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【読書録】オリエント急行の殺人 / アガサ・クリスティ
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2022年1月8日 読了
タイトルがここまで有名な作品なのに、内容について何の前知識もなく読むことができたのは本当にラッキーだと思う。こんな大胆なトリックならどこかで知ってしまってもおかしくないようなものだが、まんまと結末にすごい衝撃を受けた。
正直なところ結末まではかなり退屈だった。列車内で起こった殺人について、大量の登場人物を一人ずつ呼び出して順番に証言をとっていくだけの展開が延々と続く。「作品が有名なだけで実は面白くないのでは?」という疑問がラスト数ページになるまでずっと消えなかった。
しかし、あとは真犯人の名前を言うだけ、という本当に残りわずか数ページ、「ここから面白くなることがあるだろうか?」と半ば諦めかけていた瞬間、驚きの真相にまんまとやられてしまう。
「最後までずっと退屈だがラストがすごい」というような書き方をしてしまうと安っぽい作品と思われてしまいそうだが、真相がわかった状態で振り返るといかによく作り込まれているかがわかる作品だと思う。真相だけを聞けば「ふ~ん」となってしまいそうなオチでも、登場人物の証言、列車内の状況、すべてにしっかり意味があり、伏線として作り込まれているからこそ得られるカタルシスで、この驚異的なプロットの構築力は毎度のことながら脱帽する。
また、この作品の面白さは真相のみではなく、その犯行の手口と、探偵・ポアロが最後に提示する推理にある。ネタバレになるのでここでは詳しく書かないが、最後の推理を終え「それでは私はこれで退場しましょう。」の一言で作品が終わるラストは粋だった。
クリスティ作品は基本的に終わり方があっさりしていて、「事件のその後」を描くことはまず無い。この作品も例外ではないが、「その後」を想像させるような余韻を残しているのもまたこの作品の魅力といえるだろう。
そして、クリスティ作品をここ最近でたくさん読んできたが、似たようなトリックが一つもなくどれも斬新で毎回驚かされることが凄すぎる。この作品も然り、のちのミステリーのいちジャンルとなるほど影響を与えるトリックを連発していて、本当に怪物作家だったのだなあと圧倒させられる。
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