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【読書録】スタイルズ荘の怪事件 / アガサ・クリスティ

2021年12月28日 読了

ポアロ初登場作品ということで、ルーツを知る意味で手にとったのだが想像以上の面白さに驚き。

ミスリードを複雑に絡ませ続け、どんでん返しに次ぐどんでん返しで最後の最後まで驚かされ続ける。この人が真犯人だと思ったらやっぱりこの人が、いやこの人が……という具合に、まんまと翻弄され続けてしまった。
ただ、どんでん返し的な面白さこそ魅力ではあるが、フェアプレーな推理を期待しているミステリー好きにとってはもしかすると「何でもアリすぎる!」となってしまうかもしれない。自分はあまり推理しながら読むタイプではなく素直に伏線回収を楽しむタイプなので気にならなかったが。
また、少し要素を盛り込みすぎてゴチャついてる感もあり、複雑すぎてついていくのが大変な部分も見られるが、それでも緻密に作り込まれて最後まで楽しませてくれる秀逸なミステリーであると感じた。

いつものことながらなかなか真相を話さず、謎を匂わせる発言しかしないポアロだが、語り手である友人ヘイスティングズが読者の代弁者としてポアロへのもどかしさや苛立ちを肩代わりしてくれるので、読んでいてイライラすることもなくむしろ「この発言はどういう伏線なんだ?」と終始ワクワクした。

また、この頃からポアロがカップルの幸福を成就させるキューピッド的立ち回りをしているのも面白い。「男女の幸福こそが何よりも大切」という言葉が出てくるが、後の『ナイルに死す』などでもこの信念が貫かれていて、ポアロの人間性がしっかり第1作から描かれていたことにも感心した。むしろ第1作めだからこそ、ポアロの人間的な傲慢さや身勝手さといったキャラクター性が深く描かれているようにも感じ、本当に面白い作品だと思う。


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