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何度でも読みたい。

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何度でも読みたい。noteで読ませていただいた、そんな記事をまとめています。
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#荻田泰永

地域で経済を如何に回していくか

地域で経済を如何に回していくか

冒険研究所書店を開業してから、5月で2年になる。日々、書店として街で営業していると様々なことが起きる。印象的な出来事が今日はあった。

今日店にいらっしゃった年配の上品そうな女性。「本の注文できますか?」と。

女性「いつもは便利でAmazon使っちゃうのよねぇ」

私「ぜひウチも使ってください」

女性「そうねぇ」

私「うちで買ってくれたら、私は向かいの喫茶店でコーヒー飲めるし、喫茶店の人は隣

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行為を言葉でどこまで説明できるか。冒険探検に変わる第三の言葉を探す

行為を言葉でどこまで説明できるか。冒険探検に変わる第三の言葉を探す

冒険と探検

私は「北極冒険家」という肩書きを名乗っている。

昨年から冒険研究所書店という本屋をやっているので、書店主でもある。一般的には、冒険家の方で通っているのだが、私は「探検家」ではない。

時々「北極を探検している、冒険家の荻田さん」と紹介されたりするが、それは仕方ない。多くの人は、冒険と探検をごちゃ混ぜに使っていることが多く、それこそその二つの言葉の語義をいちいち分解して考えるなんてこ

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自然は如何に導くか

自然は如何に導くか

3年前にFacebookに書いていたものを、過去の今日書いていた記事として発見した。ハロルド・ギャティ「自然は導く」を読んだ感想。3年前のものに追記して紹介。

GPSはもちろん、六分儀や地図やコンパスに頼らずに、かつての人たちはどのようなナビゲーションを行なって旅をしてきたか。

単純な話だが、五感をフル活用して、周囲の状況を観察し、理論があれば、それを持たない人からすればまるで第六感の超能力で

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冒険研究所書店は「不自由の牢獄」

冒険研究所書店は「不自由の牢獄」

ミヒャエル・エンデの作品のひとつ「自由の牢獄」は、ある男が無数のドアがあるふしぎな空間に落とされ、どれでもひとつのドアを自由に選ぶことができるが、結局どれを選ぶこともできずに永遠の時間をそこで過ごす、という話。

無限の自由を与えられると人間は不自由になってしまうという、文明批評的な童話だ。

なぜ際限のない自由を与えられると、不自由に陥るのだろうか。その理由の一つは「選んだもの」ではなく「選ばな

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冒険と読書

冒険と読書

昨年5月より「冒険研究所書店」を開設し、おかげさまでたくさんの取材などをしていただいた。

取材となると、インタビューを受ける訳だが、まず100%聞かれるのが「なぜ書店を始めようと思ったんですか?」というものだ。冒険家が書店を始めた、というのが皆さん相当に疑問のようだ。

例えば、私がもともと出版社に勤めていて、会社を辞めて書店を始めました、という人物であれば、おそらくここまで「なぜ書店を始めたん

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判断の下し方。希望的観測について

判断の下し方。希望的観測について

近年、自然災害が発生した時などに「正常性バイアス」という言葉をよく聞く。

これは客観的な情報を見ずに、事態を過小評価したり都合の悪い情報を無視して「自分だけは大丈夫だろう」という無根拠な偏見を拠り所にしてしまう心理作用のことだ。

これと似た言葉として「希望的観測」がある。自分にとって都合の良い、期待感を込めた結果を想定して、その結果になるのではないかという無根拠を妄信して判断を下してしまう行動

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私は私ではない、だから私である

鈴木大拙「日本的霊性」を、この半年くらい読み返している。

鈴木大拙は、1870年に石川県に生まれた仏教学者。堪能な英語を駆使して、多くの英語著作も残し、欧米に広く「禅」「仏教」を紹介した。1963年にはノーベル平和賞の候補にもなっている、日本を代表する文化人と言える。

「日本的霊性」は、1944年(昭和19年)に出版された。日本が戦争で負けることを予期していた鈴木大拙は、当時盛んに叫ばれていた

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自分は褒めて育てられなくて良かった

褒められた覚えのない少年時代私は子供の頃、両親から褒められた覚えがない。

と言っても、よほどのヤンチャ少年で毎日叱られてばかりいたからだ、というわけではない。いや、実は叱られた覚えも(あまり)ない。

では、両親から無視されてネグレクト状態だったか、と言えばその全く逆だ。私の両親ほど、子供を心配しかつ信頼してくれる親はいないんじゃないかというくらいに愛を注いでくれた。

冒険家という生き方私はい

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多様な視点を持つための、冒険

多様な視点を持つための、冒険

先日、とある冊子に小学生向けに寄稿した原稿です。多様な視点を持つとは何か?冒険することとは何か?そんなことを書きました。

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皆さんは、北極と南極の違いを知っているでしょうか?

色々な本を読むと、ペンギンがいるのは南極で、シロクマがいるのは北極、なんて書いてあり

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「勇気ある撤退」は誰のための言葉か

「勇気ある撤退」は誰のための言葉か

冒険家なんて肩書きで活動していると、よく言われる言葉として「勇気ある撤退」というものがある。

かつて、私も北極点無補給単独徒歩というかなり難しい課題に臨み、途中で撤退して帰ってきた時も「素晴らしい、勇気ある撤退ですね」なんて言われることがあった。

そう言われる度に、その返答に困る。大抵は、間抜けな顔をしながら「はぁ」とか「へぇ」と気の抜けた返事でお茶を濁すしかない。真面目に答えようとすれば面倒

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