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峰庭梟
2023年4月27日 23:01
箱がある。ただの箱である。そこらじゅうにあり、誰でも中を覗ける箱である。なぜなら、それは箱だから。もしも開けてはならない箱があるとするなら、それは恐らく、もはや箱ではない別の何か別のものだろう。
2021年11月28日 00:50
とある村の高い山に、高名な魔法使いが暮らしていました。魔法使いの名声は外国にまで響き渡っていたので、はるばる海を越えて貴族や高官や王様までもが訪れるほどでした。ところが、不思議なことに、山の下に住む村の人は誰も、その魔法使いがどんな魔法を使うのかは知らなかったのです。そんな魔法使いの元に、ある日一人の少年が訪れました。そして少年は魔法使いに、どうか弟子にしてほしいと頼み込んだのです。魔法使
2021年11月25日 00:31
誰でも思い出したくない過去というのがあるでしょう。あるところに、一人の旅人がいました。その旅人もそうでした。心に深い傷を負っていました。そして彼は、その辛い過去から逃げるように旅を続けていたのです。ある日、そんな彼にこう言う者がいました。「そんなに辛いことがあるのなら、酒でも飲んで忘れるがいいさ」すると、旅人は答えました。「でも、酒を飲むとつい、辛いことを思い出してしまいます」
2021年11月23日 05:48
仲睦まじい夫婦がいました。恋人時代からずっと仲が良く、結婚してからもそう。互いの友人はこの二人のことをよく話題にしたものでした。ところが、近頃妻の方が塞ぎ込んでいる様子です。夫がどれだけ理由を尋ねても、妻は頑なに答えようとしないのです。たまりかねた夫は言いました。「もし、何か、僕が君を不愉快にさせているのなら、どうか教えてくれ。そうしたらちゃんと謝るし、直せるところは直すようにするから
2021年11月20日 13:54
絵を描くのが大好きな少女がいました。少女はいつも外に出ては、お気に入りのクレヨンで風景を描いていたのです。 その日も少女は公園で絵を描いていました。朝からとてもいい天気だったのです。 少女が画用紙に絵を描いていると、画用紙の上にちょこんと何か白いものが乗りました。どうやら、空から落ちてきたようです。 それは少女の手の甲くらいの大きさで、綿の塊のようにも、なにかの繭のようにも見えました
2021年11月19日 00:29
自分のことが嫌いな男がいました。男はこれまで自分がしてきた選択は、どれもすべて間違っていたような、そんな気がしていました。ああ、あのときこんなことをしなきゃよかった。が、男の口癖でした。朝、起きると男はあくび混じりに呟きます。「もう朝か。あんまり寝れなかったな。昨日もっと早く寝たらよかった」昼間、会社で男はこう呟きます。「ああ、つまらない。もっと別な仕事ができたらいいのに。若い
2021年11月16日 00:31
ある日、神様が天使に言いました。「世の中には、優しい人間もいれば、そうでない人間もいる。それはそれで仕方のないことだが、優しい人間には、そうでない人間よりも、何かよいことがあってほしいものだ。そこでお前に頼みがある。ここに、見えるようで見えない粉がある。とても美しく輝いている粉だ。お前はこれから天の下に降りていって、誰か優しい人を見かけたら、頭の上からこの粉を振りかけてやりなさい。
2021年11月15日 01:02
私には、自慢のおばあちゃんがいた。おばあちゃんは長年図書館司書として働いて、ついには館長にまで上りつめた人だった。それでいながらお母さんのこともしっかりと育て上げた。我が家の誇りだ。お母さんはよく言っていた。亀の甲より年の功って言うけど、うちのおばあちゃんは亀の甲と年の功両方だから最強なのよって。亀の甲が何だかはよく分からないけれど、豊富な人生経験に加えてさまざまな本を読んで身につけた
2021年11月13日 12:06
蜘蛛という生き物について、君はどう思うだろうか。あんまりいい印象は持たないかもしれない。そうだよね、僕だってそうだ。まあ、そもそも僕が、その蜘蛛なんだけどさ。ある日のこと、仕掛けた罠に一匹の蝶がかかっていたんだ。それはそれは美しい羽を持った蝶だった。そのとき、不思議な気がした。僕は自分の糸がその蝶の羽に絡まっているのが許せなくてね。せっかく仕掛けた罠だったけど、自分で糸を切ったんだ。
2020年2月7日 00:33
かつてカラスは七色だったんだ。人間が生まれるずっとずっと前の話だけどね。 その頃、カラスは赤や青、白に黄色とさまざまな色の羽を持っていた。カラスにとって色彩は豊かさの象徴だったんだ。彩り豊かなオスはメスを魅了した。メスは美しいオスと愛し合い、より美しいカラスを生んだ。そうして美しいカラスはその数を増やしていったのさ。 虹色のカラスが空を飛んでいた頃、世界はカラスのものだった。カラスは空を