短編小説 緑の妖精
誰でも思い出したくない過去というのがあるでしょう。
あるところに、一人の旅人がいました。その旅人もそうでした。心に深い傷を負っていました。そして彼は、その辛い過去から逃げるように旅を続けていたのです。
ある日、そんな彼にこう言う者がいました。
「そんなに辛いことがあるのなら、酒でも飲んで忘れるがいいさ」
すると、旅人は答えました。
「でも、酒を飲むとつい、辛いことを思い出してしまいます」
「それは、どこにでもある普通の酒を飲んでいるからさ。特別な酒を飲めば、辛いことだって忘れられる」
「それは、どんな酒です?」
「その酒は、緑の妖精と呼ばれている。その名の通り、美しいエメラルドグリーンの酒さ」
旅人はその幻の酒を求めた末、ある山上の村にやってきました。そこは立派な時計塔のある村でした。緑の妖精という酒は、どうやらこの村で作られているらしいのです。
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