短編小説 後悔する男
自分のことが嫌いな男がいました。男はこれまで自分がしてきた選択は、どれもすべて間違っていたような、そんな気がしていました。
ああ、あのときこんなことをしなきゃよかった。が、男の口癖でした。
朝、起きると男はあくび混じりに呟きます。
「もう朝か。あんまり寝れなかったな。昨日もっと早く寝たらよかった」
昼間、会社で男はこう呟きます。
「ああ、つまらない。もっと別な仕事ができたらいいのに。若い時にもっと勉強しておけばよかった」
仕事から帰ると、男はこう呟きました。
「また無駄な一日を過ごしてしまった。こんなはずじゃなかった」
そんな男を哀れに思ったのでしょう。ある日、男がふと気づくと、目の前に神様がいたのです。
神様は言いました。
「お前はそんなに生きるのがつまらないかね」
「つまらないですね。もしできるなら、人生をもう一度やり直したいものです」
「ほう」と神様は微笑みました。そして、この可哀想な男にこう言ったのです。
「よかろう。お前にもう一度人生をやり直すチャンスを与えよう」
「本当ですか?」
「うむ。ただし、一つだけ条件がある。それは、自分の人生に心から後悔していない人に出会うことだ。そういう人をお前が見つけることができたなら、そのとき、わしはもう一度お前の前に現れよう。そして、お前の願いを叶えてやろう」
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