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掌編小説 恋薬
仲睦まじい夫婦がいました。恋人時代からずっと仲が良く、結婚してからもそう。互いの友人はこの二人のことをよく話題にしたものでした。
ところが、近頃妻の方が塞ぎ込んでいる様子です。夫がどれだけ理由を尋ねても、妻は頑なに答えようとしないのです。
たまりかねた夫は言いました。
「もし、何か、僕が君を不愉快にさせているのなら、どうか教えてくれ。そうしたらちゃんと謝るし、直せるところは直すようにするから」
しかし妻は、そんなことは何もない、と言います。
それで夫は、今度は心配そうに尋ねました。
「どこか体調が悪いのなら、ちゃんと医者に診てもらった方がいいよ」
しかし妻は、どこにも体に悪いところはない、と答えます。
夫は少し考えて、言いました。
「もしも、君がもう、僕との暮らしに飽きてしまったのなら、仕方がない、少し離れて暮らしてみるのもいいんじゃないか」
すると妻は泣きながら、どうかそんなことは言わないでほしい、と夫に頼み込むのです。
夫は困り果ててしまいました。
「だけど、こんなふうに君に暗い顔ばかりされていては、そのうち僕も耐えられなくなるよ」
すると妻はしばらくの間黙っていましたが、ようやくこんな話を始めたのです。
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1,398字
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