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ボツネタ御曝台【エピタフ】混沌こそがアタイラの墓碑銘なんで#012




元歌 中森明菜「スローモーション」

砂の上 刻むステップ
ほんのひとり遊び


病院坂 首をくくった
横溝ってる物件



この頃の中森明菜ちゃんは本当に可愛らしかったっすよねー

ほっぺを押したらホイップクリームがにゅるっと出てきそうなくらい可愛かったです


で、横溝ってる物件

田舎の方に行くと、時々すっごいデカいお屋敷があったたりするじゃないですかー

鬼武者の中ボスが出てきそうな感じの

あれも、横溝ってる物件っていってもいいんじゃないっすか?

この表現、いろいろ応用がききますよね

乱歩ってるゲーミングチェアとか

そうそう、清張ってるアンジェリーナ・ジョリーとか

……なんか、ただの悪口になってんなー、先輩


横溝正史といえば、角川文庫!

おどろおどろしい装丁が、子供心をくすぐりました

別に読まなくたっていいんです

不気味なイラストを眺めながら、きっと恐ろしいことが書いてあるんだろうなぁ、と想像して、そっと戻す、それだけで満足でした


でも、角川といえば、角川映画ですねー、やっぱり

とりわけ、相米慎二監督との出会いがアタイを大きく変えてしまいました

正直にいうと、最初はよくわからなかったんです、相米監督の凄さが

『お引越し』で衝撃を受けて初めて、これはとんでもない才能だと……

『お引越し』を観たあと、2週間くらいは夢遊病者みたいにボーとしてましたからねー

そして、海老一染之助・染太郎がテレビで「おめでとうございます!」をいうたびに涙が溢れてきちゃう状態がしばらく続きました

児童映画のような始まり方に油断していたら、血まみれシーンはあるは、どんな芸術映画よりも美しい火祭りの映像が出てくるは……

そして、フェリーニのような幻想的で感動的な大団円を迎え、ラストはトリュフォーの『大人は判ってくれない』ばりのフリーズショット!

本当に、なんちゅう映画なんだ、これは! と思いましたよ、マジで!

寺山修司? いやー、先輩、浜辺でのレンコと母親の距離感は、『甘い生活』ラストでのマストロヤンニと少女のそれでしょ? 

自分の中の大切な何者かと決別しなければ前に進めない人間のサガを表現してるっていうのか……だから、フェリーニだと思います、多分


しかも、相米監督は何気ないシーンの演出も凄いんです!

レンコが母親と一緒に旅行先へ向かう列車のシーン

ここでレンコが母親にお菓子をあげないという意地悪をするんですが、これが最高なんっすよ

子供の意地悪さ、バカっぽさ、相手の反応が気になって目が泳いでしまう小心な感じ……

人類がフィルムに焼き付けた〈ザ・子供〉の映像としては最高峰だと思います

あんな映像、ドキュメンタリーでも撮れません

いくら子供でもカメラに撮られていたら、意識してあんな食べ方はしないっすから、特に女の子は

「やれ」といわれたから、さらけ出してるって感じだと思います

子役やアイドルからリアリティを引きずりだす天才なんでしょうね、相米慎二は


先輩はジャン=リュック・ゴダールですもんね

意外なことに〈 ゴダールの『勝手にしやがれ』を映画館で観る女 〉なんっすよねー、先輩って

なんかヤダなー、いけ好かない女だなー

先輩はゴダールが好きなんじゃなくて、ゴダールを観る女である自分自身が好きなんっすよ、きっと

だって、そもそものきっかけがアレでしょう

『男はつらいよ』を観るつもりが、間違って『勝手にしやがれ』に入っちゃったんでしょ?

『男はつらいよ』と『勝手にしやがれ』なんて、何ひとつかぶってないじゃないですか

どこをどう見たら間違えるんすか?

しかも、間違いに気づいた後も、「いつになったら沢田研二が出てくるんだー!」つって騒いでたらしいし……

でも、よく考えたら『男はつらいよ』と『勝手にしやがれ』って内容的には同じようなもんですよね

どうでもいい会話が延々と続いたあと、最後の最後に女に裏切られて終わるという……

最後に死ぬか死なないかの違いだけで、それ以外はほぼ同じ映画です


先輩とアタイって、映画の趣味が違うから一緒に映画館に行ったことないですよねー

え? そうでしたっけ? 

あ! そうそう、思い出しました

むかし、終電を逃したとき新宿の映画館で夜を明かしましたねー

たしか、オールナイトで溝口健二の『雨月物語』がかかってました

話は変わりますが、ゴダール監督って溝口健二のこと大好きでしたよね

インタビューで好きな監督を3人あげてくれといわれたゴダール監督

「ミゾグチ、ミゾグチ、ミゾグチ」と答えたそうですよ

先輩ならどう答えます? 好きな監督3人をあげろっていわれたら

はい、 「三沢、川田、田上」?…………って、全日の3人タッグだなー、それ!

たしかに、あの頃の全日本プロレスは最高だったけれども


ジャン=リュック・ゴダール監督、お亡くなりになってしまいました

こんな日がいつかは来るだろうと覚悟はしていましたが、実際に訃報を聞くとやっぱり落ち込んでしまいます

映画監督の枠を超えて、世界の観かた、世界との関わりかたを一変させた革命家ですからね

まるで自身の映画の主人公のような最後、まさに、シネマそのもののような人でした

世界のあらゆるものを切り刻んできた監督でしたから、人生の最後を誰かに編集されるなんて耐えられなかったんでしょう、きっと

謹んでご冥福をお祈りいたします

そして、本当に、本当に、ありがとうございました


先輩、新宿のオールナイトで観た『雨月物語』、モノクロ映像が綺麗でしたよねー

ゴダール監督も「ミゾグチの映画を観ていると、あまりの美しさに5分で涙があふれてくる」といってます

アタイラの場合は、映画が始まって5分で爆睡でしたけどね

目が覚めたら終わってました

上映時間が短いんすよ

やっぱオールナイト上映は『七人の侍』くらいの長さがないと

ひと眠りして起きた頃に、ちょうどラストの戦闘シーンが始まりますからね

最高に盛り上がっちゃう目覚めですけど、誰が七人の侍で、どっちが悪者か、さっぱりわかりません

でも、別にいいですよね、本当の主役はお百姓さんらしいですから……

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