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It's my favorite.II

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#詩

口紅を奏でる

口紅を奏でる

口紅をしなくなってから何年が経つだろう

私は口紅をした自分が嫌い
どうしてか、口元を見られるのが苦手

食事をしているところを見られるのも苦手

だからあまり人前ではものが食べられない

化粧品にこだわったこともない
いつもなも無き印のものばかり

でも好きなんだよね、あのシンプル

でもそこでも口紅は買ったことがない、一度も

それなりに若い時は少し薄めの口紅をつけていたこともあるけれど
でも

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かぶとむしたち

かぶとむしたち

久々に

かぶとむしたちの音楽を聴いた

いつも温かく迎えてくれる

彼らの愛しい歌声

浮気性のぼくだから

いつも聴いてるわけじゃない

でも、彼らはいつも

そこで待っている

ぼくが聴くのを待っている

ぼくが他の音楽を聴いていても

彼らは不機嫌になったりしない

ただただ、

音楽を奏でている

そして、いつも

世界のどこかで

誰かが彼らの音楽を

聴いている

その音に胸を焦がし

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本当のじぶん

本当のじぶん

本当の眼で見ているか
その眼ではなく

心の中にある
本物の眼で

本当の耳で聴いているか
その耳でなく

心の中にある
本物の耳で

本当の言葉を話しているか
その言葉でなく

心の中にある
本物の言葉を

自分の胸に聞いてみる

私は本当の自分を
生きているのか

欺瞞ではないのか

誤魔化しではないのか

別の誰かが私の心を
奪い去ろうとしている

必死でそれに抗う

今日も私は問いかける

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dive!

dive!

この空の向こうに
何があるのか

果てしなく広がる
この広い空に

あの山の向こうには
何があるのか

行ってみたい気持ちは
あるけれど、

まだホントの自分が
追い付かない

もっと自由に
旅してみたいけれど

そのためには
失うものが大きくて

すべての思い出を
連れていくことはできない

でも

この空の向こうには

きっと
大きな自由が広がっている

ぼくは

その大きさに

飲み込まれて

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絵描きの万愚節「Poisson d'avril !」

絵描きの万愚節「Poisson d'avril !」



Poisson d'avril !
新しく目醒める距離

洋梨のSolbetの月に 

逆さまに引き込まれる

寄り道は蓮華草54本

手みやげは時空に支配されない

百万本の薔薇

Sacのなかにひしめく蒲公英は

綿の蟲となって

地上に降る

復活の日まで

「Elle est ici !」

(彼女はここに居ます)

画像の作品は、現在の我が家の母コーナーに立てかけてある、F6サイズ

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花筏によせて

花筏によせて

来年は、きっと花筏を見られるよと

君は言った

花筏

初めて耳にしたことばの意味を

そっと調べたのを思いだす

今年も 遠慮なく春はやってきて

桜が咲き 散り始める

風にのってひらりと舞う花びらを みな嬉しそうに見上げる

わたしは アスファルトに目を落とす

淡い桃色の花びらは

風に身を委ね そろりと渦をまいていた

この街には 川辺に咲く桜が少なく

花筏を目にするのは 思ったより

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詩│カラス ―明日、優しくなるために―

詩│カラス ―明日、優しくなるために―

夢を突き抜けてから

可愛いユダに睨まれている

光も闇もさくさくさくさく

うまく食い散らかされている

お前の核は何だ

お前の天は何処だ

ほしいものなんかない?

本当に本当にそうか?

本当に?

本当に?

真剣に傷つくじゃないか!

あくびのひとつも出やしねえ!

新しい翼を生むために

神殿は青く燃え盛る

毎朝毎晩気持ちよく

カラスの遊ぶ場所となる

貪り尽くす聖者ども

自ら

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月が霞んでいる夜に絵描きは眠るのだ

月が霞んでいる夜に絵描きは眠るのだ


「宇宙の華」

夜空を見上げる癖

月を探す癖

今夜は月が霞んで
幾重にもボヤけた形容しがたい光の円

ああ、私は夢をみるのだなと予想する

あのひとはどんどん先に行ったのだと
追いつかない距離を水銀で塗りつぶし
寡黙になることを決めたのは少し前だ

夢にさえ現れないのだと
眠ることも面倒だった

今夜私は目を瞑る

いつか見た清潔な猫の目から
虹色の魚が飛び出す

閃光

暗闇

階段

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