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マンガ&エイガ考察

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マンガや映画などの作品について考察・言及したものです。
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#マンガ

岩明均『ヒストリエ』12巻についての考察(前編)

岩明均『ヒストリエ』12巻についての考察(前編)

11巻から5年。ようやく出ました12巻。

発売日である6月21日の夏至の日に購入。
さっそくネタバレを含みながら書いていきたいと思います。

歴史ものなので、史実を調べることでどうしても「物語の先」が見えることになります。このエントリはそこについても言及するのでご注意ください。

さて、この作品は随所にユーモアを散りばめながら、「決め」のところではかなりエグい描写を使ってくるので油断なりません。

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『宝石の国』考察(完結編)

『宝石の国』考察(完結編)

なかなか書けずにいましたが、ついに完結編です。
本誌連載終了で世間の熱が高まっていた頃に書くべきとは思いましたが、ままならないのは人間の常です。ままならないと言えば仏教です。仏教といえば『宝石の国』。ということで完結編エントリを書いていきます。

前回の最後に、この後のストーリー展開をざっと書きました。こうです。

祈りのために必要だった「七宝」とは何でしょうか。
調べればわかる一般知識を詳しく書

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『宝石の国』インターミッション

『宝石の国』インターミッション

『宝石の国』考察の完結編の前に、インターミッションです。

この作品は各単行本のキャラクター紹介ページも楽しく、見開きでその世界観が存分に発揮されています。それぞれのキャラクターに添えられた簡潔な紹介コメントも、物語が進むにつれて少しずつ変化します。

それぞれ見ていきましょう。

※画像はタップすることで拡大できます。

1巻なし。

2巻まずは2巻。序盤の平和な「学校感」がそのまま出ています。

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人名を含んだタイトルなのに主人公が明らかに別の登場人物、という物語

人名を含んだタイトルなのに主人公が明らかに別の登場人物、という物語

ふと思い立って、Twitterで以下のような募集をかけてみたのですよ。

そもそもの発端は、上記ツイートにもある「鬼龍院花子の生涯」である。
あらためてちゃんと通して観たのはごく最近になってからだった。
この映画、ポスターでも予告でもヒロインはどう見ても夏目雅子なのだが、
夏目雅子が鬼龍院花子ではないのである。
(ちなみに鬼龍院花子役の高杉かほりはwikipediaに項目すらない)
この構造はあら

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荒木飛呂彦『魔少年ビーティー』

荒木飛呂彦『魔少年ビーティー』

18歳の春、仙台にあるデザイン専門学校の見学に行った際、玄関横のロビーにあるソファで待つ間に渡されたのは「ジョジョの奇妙な冒険」のコミックスの束だった。
「当校の卒業生の作品です」
漫画読みなら知らないものはいない荒木飛呂彦とのそれが初めての出会い…というのは嘘で、「ジョジョ」の第一部も僕は「少年ジャンプ」でリアルタイムで読んでいたし、なんならその前のいくつかの短い連載作品もほとんどすべて読んでい

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さらばゴールデンカムイ

さらばゴールデンカムイ

[ご注意]本稿はネタバレを盛大に含みます。

まずは作品について『ゴールデンカムイ』は2014年から週刊ヤングジャンプに連載された漫画作品。作者は野田サトル。Wikipediaから引用すると「明治末期(日露戦争終結直後)の北海道・樺太を舞台にした、金塊をめぐるサバイバルバトル漫画」だそうである。「冒険・歴史・文化・狩猟グルメ・GAG&LOVE 和風闇鍋ウエスタン」というキャッチコピーもあったが、的

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『宝石の国』考察(後編)

『宝石の国』考察(後編)

いよいよ後編です。
前編と中編のリンクも貼っておきますので、未読の方はどうぞ。

記事本編に入る前に、まず本作が12年間の連載を終えて完結したことを記さねばなりません。市川先生、お疲れさまでした。
「予定通り終わることができてよかった」というコメントそのままに、実にぴったり百八話での完結、物語としても美しくまとまって終われたことが素晴らしいと思います。

では、書いていきます。

深刻化する宝石た

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『宝石の国』考察(中編)

『宝石の国』考察(中編)

中編です。
前回の最後に「後編へ続く」と書いておきながら、とても2本には収まらないと思ったので訂正して3部構成(とりあえず)です。
前編の最後の1行も直しておきました。

イメージの圧倒的豊かさこの作品は一枚絵の完成度が高いと前編で書きました。
シンメトリックな構図、繊細な描写、キャラクターたちの美しいフォルム、モノクロなのに「色彩豊か」と言いたくなるような光と影の鮮やかな捉え方。どれも非常に見事

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『宝石の国』考察(前編)

『宝石の国』考察(前編)

先日、ふとしたご縁で教えてもらった漫画作品『宝石の国』。
最初こそ世界に入っていくのに苦労したものの、作中の「謎」が明らかになるにつれて惹き込まれていきました。作画といい、物語の象徴性の高さといい、好き嫌いはともかくこれは一つの傑作でしょう。

下のPVはアニメのものですが、ここでは原作漫画について言及します。

原作者は市川春子、月刊アフタヌーン連載。
2012年連載開始、コミックスは12巻まで

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