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残響六ロール君

『残響』という言葉の響きは幼い私の癖(ヘキ)をガンガンに打ち鳴らした。
 
学校の昼食時にパーソナリティよろしく生徒のお便りを読み上げ、音楽を流す。それが私の所属する放送部の主な仕事で、それはある根暗な生徒のお便りに記されていた。
 
「糞みたいな毎日だ!馬鹿丸出しのアイドルソングや調教済みの大衆音楽を垂れ流す昼休みに俺は決別する!ロックだ!笑いたきゃ鼻で笑え、俺はそんな嘲笑も届かない遠くへ走り抜ける!決別の歌、9mm Parabellum Bulletで『Punishment』」
 
と読んで流してくださいとお便りとCDが部室の投書に届いた。色々な意味で流石にこのまま読めないので
 
「1年4組、『残響六ロール君』さんからお便りを頂きました。退屈な毎日にサヨナラを、少し激しいロックをお届けします」
 
という風に説明し、放送した。『残響六ロール君』にとってはショックだったかもしれないが、これが社会の忖度だ。その日の放課後、前髪長めの根暗男子が預けたCDを取りに来た。一応決まり事として、私は謝る事にした。
 
「お便り通りに読めなくてすみません」
「あ…いえ…はい…大丈夫です…」
 
六ロール君は猫背でトボトボと部室を後にした。幼い敗残兵『残響六ロール君』のロックは今も私に残響してる。


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