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2024年2月の記事一覧

Stand By Me 《詩》

Stand By Me 《詩》

「Stand By Me」

其処にある月が

全てを綺麗に照らしていた

満月に近い巨大な月が夜空に浮かび

僕は夜の音に耳を澄ませた

真夜中の深い静寂の中 

不自然な程明瞭な月明かりが
僕に語りかける 

僕は始めて

自然に呼吸する事の出来る
場所を見つけた

Stand By Me … Stand By Me

君の記憶をひとつひとつ

呼び起こし断片を繋いだ 

世界が夜に属しても月

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海色に沈む 《詩》

海色に沈む 《詩》

「海色に沈む」

目には見えない雲の切れ端 

小さな浮雲

ゆっくりと型を変えて空を彷徨う

其れは僕の過去 

失われた記憶を求めて漂っている 

部屋の窓から 
遠くに少しだけ見える海

巨大な海の切り取られた断片

其処には波音も
潮の匂いも無い海色の小さな塊

僕は記憶の枠の内側に居るのか
外側に居るのか

何も見えない思い出せない 

僕の知らない所で物事は進展し

行き場を失くしたの

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青に浮かぶ音 《詩》

青に浮かぶ音 《詩》

「青に浮かぶ音」

不格好で歪な音が空間を揺らす

其れは
個性的で魅力のある歌の様だった

何もかもが
平坦で均等に備え付けられた空

色斑さえない青に浮かび

その音は揺れていた

宿命的な欠点を幾つもあらわにした

君の奏でる歌に心を奪われていた

君の突出した部分が
僕の感情に食い込んで来る

僕は君の歌を聴くのが好きだった

暴力に似たセクシャルな感情が
僕の中で蠢いてる

小さな恐怖と

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風と繊月 《詩》

風と繊月 《詩》

「風と繊月」

風と繊月 

ふたつの夜

溢れる想いは言葉にならず

儚く揺れた 

月影囁くあの日の詩

心に閉じ込めた文字を
独り静かに指先でなどる

遥か遠くに見える星

それでも 

あの火は消える事なく

小さく瞬く時を待ち見上げる夜空

春を待てずに花となり

想いの蕾を胸に抱く

風見鶏 《詩》

風見鶏 《詩》

「風見鶏」

忘れたいものは絶対に忘れられない

風向きひとつで
くるくると回る風見鶏

どんな色をした風でも構はしない 

其処には独自の世界も意志も言葉も

持たない哀れな姿があった

僕は笑って黙殺した

忘れなよ そんな事は

誰かが僕にそう言った

あの時殺したのは他でも無い

自分自身だったからだ

僕はひとりボトルを開けた時の

ウィスキーの香りを思い出していた

ハイボールを飲む君

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魔笛 《詩》

魔笛 《詩》

「魔笛」

目に映る景色 

それは外見的には何も変わらない

だけどこれまでの世界とは

徹底的に違っていた

夜の世界と昼の世界の様に

ふたつの世界の 
どちらかに僕は含まれ

僕とは違う世界に君は含まれていた

想像力の作り上げた

鮮明な景色が迷宮を呼び

墓標も無く埋められた骨の夢を見た

無意識の暗黒の中に深く沈み込み

僕は魔法の笛と鈴を探した

一欠片の曖昧さも無く輝いていた月

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