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君たちはどう生きるか 吉野源三郎

公開翌日にジブリの「君たちはどう生きるか」を見に行き、その帰りに手に入れた本。

この本の内容が映画になっているわけではないが、映画から感じるものは、確かにこの本からも感じ取れた。

君たちはどう生きるか 吉野源三郎

岩波文庫の過去最高発行部数を記録したという。
今から80年以上前に書かれたものとは思えないほど、生き生きとした本だった。

読んでまず思ったのは、この本をコペル君と同じ中学生の頃に読みたかった、ということ。元は「日本少国民文庫」、後に「ジュニア版吉野源三郎全集」に収録された内容である。子供から大人へ、社会というものを意識し始める頃に読んでいたら、きっと今感じている何十倍も心が動かされただろう。

読むならば一日でも早い方が良い。
これからの人生で何度も読み返すことになりそうだなと思う。

何度も思い出してしまう後悔の意味

「七 石段の思い出」で描かれる主人公とその母親とのやりとりは、読みながら自分の苦い過去を思い出し、胸が痛くなった。

誰もが痛みを伴う思い出や後悔を持っているだろう。
その一つ一つにどんな意味があるのか、失敗を糧にして生きていくとはどういうことなのかがとても分かりやすく言語化されていたので、このページの付箋は永遠に剥がせないような気がしている。

社会の成り立ち、友情、勇敢な心について、さまざまな境遇の人たちの生活、古代から現代まで紡がれてきた文化、何度も思い出してしまう後悔の本当の意味。

自分の中で「こういうことだろう」と思っていたことと、第三者が言語化したものを融合させていく気持ちよさがあった。
この気持ちよさこそ、本を読む楽しみの一つである。

本が持っている、いつの時代も変わらない力

この本を読んでもう一つ思ったのは、本は、いつの時代も変わらない大きな力を持っているということだ。

1973年に出版されたものとは思えないほど、本当に生き生きとした本だった。
人間が生きていく上で必要な根幹の部分は、いつの時代も変わらないということを教えてくれた。

教科書に書いてあることを「習う」だけでは得られないこと、自分自身で「経験」していないと分からないことは、この世の中に、これからの人生の中にたくさんある。

「いつの時代も変わらない大切なこと」を、この本は出版された当時からずっと変わらずに訓え続けているのだ。


読んでいる最中、子供の頃の忘れられない出来事、その時の胸の痛みや説明できない不思議な気持ちなどが何度も思い起こされた。

懐かしさを感じると共に、明日への生きる活力を与えてくれる、素敵な本だった。
もう一度本を読み返したい。そして、映画も再度見に行きたくなった。

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