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美しく生き自分で自分を幸せにするガイドブック

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#母

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十八話 まちがった愛で男を包んだ女と、偽物の愛で男を抱いた女

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十八話 まちがった愛で男を包んだ女と、偽物の愛で男を抱いた女

まちがった愛で男を包んだ女と、偽物の愛で男を抱いた女

慶長十九年八月、その事件は起こりました。事の発端は、秀頼様が秀吉の十七回忌に向け、京都の方広寺で大仏の開眼供養をする準備をしていた時のことでございます。
徳川様は方広寺の梵鐘に「国家安康」と記されているのを見て、因縁をつけたのです。
「これは家康の名前を分割したもので、豊臣は徳川家康の死を願っている」

秀頼様と茶々様、そして秀頼の妻である千

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十三話 幸せも不幸も伝染する

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十三話 幸せも不幸も伝染する

幸せも不幸も伝染する

震えが止まりませんでした。あまりにもブルブル震えるので、両手で自分の体を抱きしめ、震えを止めようとしたほどです。
こんなはずでは、ありませんでした。
わたし達の人生は、こんな風にいくつもの「こんなはずでは、なかったのに」が積み重なり、今になっているのかもしれません。

こんなはずではなかった・・・・・・苦さを噛みしめながら、まだ震えの止まらない手で筆を取り、秀吉に手紙を書き

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十二話 人を呪わば、穴二つ

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十二話 人を呪わば、穴二つ

人を呪わば、穴二つ

秀次が関白になったことで、茶々様の中に危機感が生まれたのでしょう。
茶々様が秀次に秋波を送るのを見て、秀吉は男として奮起したようです。
また頻繁に茶々様のところに、通い始めました。
それこそが、まさに茶々様の思うツボだったのですけどね。
どうして男には、わからないのでしょう?
同じ同性である女には、女のやり口が見ていてよくわかります。

いますでしょう?
同性に好かれない女。

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十話 子どもを産んだくらいで偉そうにしないで

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十話 子どもを産んだくらいで偉そうにしないで

子どもを産んだくらいで偉そうにしないで

茶々様の城に戻った鶴丸様の熱はなかなか下がらず、ずっと寝込んでいます。犬猫もそうですが幼い時は男の方が弱い、と言いますね。まさにその通りですね。鶴丸様は豊臣の後を継ぐ大切なお子ですから、心配です。
鶴丸様に何かあれば、秀吉は半狂乱になるでしょう。
そんな秀吉は見たくありません。そのためにも鶴丸様に早く良くなってもらわねば、とわたしは固く目を閉じ、祈り続けま

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第十九話 生母と聖母

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第十九話 生母と聖母

生母と聖母

天正十八年、秀吉は最後まで残っていた北条氏との決着をつけるため小田原に向かいました。
後に小田原征伐、といわれた戦いです。
この戦いで秀吉は、難攻不落として名を響かせた小田原城をぐるりと取り囲みました。
北条はこの城に絶対的な自信を持っており、城を死守する考えでした。
これに対し秀吉は、得意の長期戦で兵糧攻めに持っていく作戦でした。
じっくり腰を据え、北条氏が頭を下げるのを待っている

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第十一話 すべてお前が選んだ、望み通りの設定だ

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第十一話 すべてお前が選んだ、望み通りの設定だ

すべてお前が選んだ、望み通りの設定だ

秀吉が帰って来ない部屋で、明け方うつらうつらしてようやく少し眠りにつきました。ところが目覚めは最悪でした。
身体中は燃えるように熱いのに寒気でゾクゾク震えました。関節の節々もひどく痛みます。

裸のまま眠った身体には、何かに噛まれたようなあとがいくつもありました。よほどかゆかったのか、知らず知らずそこをかきむしっていました。
かきむしり過ぎたせいか傷が膿み、

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第十話 わたしにだけ、勃たない?

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第十話 わたしにだけ、勃たない?

わたしにだけ、勃たない?

この頃秀吉は、これまではひっそり恐るおそる出していた闇の顔を、わたしに対しても堂々と出し始めました。
清州会議が終わった夜、二人きりの閨で正座した秀吉が突然言いました。

「寧々、わしは側室を持つ」
「えっ?」

わたしは面食らい、身を乗り出しました。それは相談でもなく、決定事項の報告でした。
「明智に味方した若狭の守護大名の武田元明の妻子を捕えた。
妻の京極龍子が、子

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第九話 光があるから闇は黒く、闇があるから光は白く輝く

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第九話 光があるから闇は黒く、闇があるから光は白く輝く

光があるから闇は黒く、闇があるから光は白く輝く

秀吉は三法師様を連れ、清州へと向かいました。彼らを見送ったわたしも胸がドキドキいたしました。
清州でわたしの仕掛けた爆弾も、威力を発揮するでしょう。
あのお方はきっと、わたしの爆弾を受け取るに違いありません。確信はありませんが、そう思いました。
わたしの爆弾は、とても危険です。
ともすると、秀吉を危機に陥れるかもしれません。
それでも、この時こうし

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第八話 それがわたしの闇

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第八話 それがわたしの闇

それがわたしの闇 

その事件が起こった時、秀吉は備中高松で毛利と戦っておりました。
そこで信長様が明智光秀に本能寺で討たれたことを知ったのです。
秀吉はすぐさま毛利と和睦を結び兵を引き連れ、瞬く間に京に戻ってまいりました。
その速さはすざましく、後にそれは「中国大返し」と呼ばれるようになりました。
京に戻る秀吉の胸の内は、十七才から仕え父のごとく慕っていた信長様を失った悲しみと、明智に対する怒り

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第六話 世間なんて、くそくらえ!

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第六話 世間なんて、くそくらえ!

世間なんて、くそくらえ!

信長様の諫めにより、一度は浮気の虫を封印した秀吉でした。
ところが信長様から手紙を頂く前に、側室を囲っていたことがわかりました。しかもその側室に子どもが生まれていた、というではありませんか!
秀吉はわたしがまた信長様に何か言うのを怖れ、ずっとわたしに隠していました。
子どもですよ、子ども!!
ただの浮気ではありません。

よくもまぁ、ぬけぬけとわたしの目を盗み、耳を塞ぎ

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第五話 男は女より、プライドの高い生き物

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第五話 男は女より、プライドの高い生き物

男は女より、プライドの高い生き物

それから間もなく、藤吉郎はお市様の嫁ぎ先の浅井家と朝倉軍との戦いに先んじました。そしてこれを機に藤吉郎は名を羽柴秀吉、と改めたのです。
名前の由来は、織田家筆頭家臣の丹羽長秀様、柴田勝家様にあこがれ、そこから文字を頂いたわけです。
というのは、表向きの理由。
秀吉は周りから認めて欲しかったのです。
農民出身の彼は、他の家臣達から身分のちがいで低く見られていました

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第四話 わたし達夫婦の当たり前

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第四話 わたし達夫婦の当たり前

わたし達夫婦の当たり前

わたしの表の顔は藤吉郎の妻、彼と二人でいる時は彼の母親として裏の顔、という二面を持っていました。
夜、仕事から帰ってきた藤吉郎は、その日あったことを子どもが母親に話するように、無邪気に何でも話をします。わたしはそれを、うんうん、とうなづき微笑んで聞いています。
そこにある一人の女性の話が、たびたび出ることに気づきました。

「そりゃあ、もう、わしには別世界のような、とてつ

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