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美しく生き自分で自分を幸せにするガイドブック

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第一話 女としての幸せは、あきらめることになる

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第一話 女としての幸せは、あきらめることになる

女としての幸せは、あきらめることになる

結婚は親が決めた相手とするものだ、と思っていました。
そういうものでしたよ。この時代。
恋や愛・・・・・・そんな浮ついた気持ちではなく、生きていくための家と家のつながり。
それが「結婚」でした。
けれどわたしは秀吉、いえ当時は藤吉郎という名でしたが、彼に恋をしました。
わたしは14才でした。

きっかけは信長様が鷹狩の帰り、わたしの義父の屋敷に寄ったことで

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」最終話 傷を愛に変える方法

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」最終話 傷を愛に変える方法

傷を愛に変える方法

「あなたは、もうすでに赦されています」
どこからともなく聞こえるその声は、さらに続きます。その声を探すように、わたしは立ち上がり、辺りを見回しました。けれど声の持ち主は見えません。声は尚も続きます。
「自分を責めても、過去は変わりません。
けれど過去に対するあなたの思いを、変えることはできます」
「えっ、それはどういうことですか?」
わたしは思わず、聞き返しました。

「起こ

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十九話 蓮は泥より出でて、泥に染まらず

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十九話 蓮は泥より出でて、泥に染まらず

蓮は泥より出でて、泥に染まらず

わたしの闇は、わたしの本音でした。
頭で考える本心ではなく、無意識で望んだ本音です。
無意識の本音は、頭で考える意識下の本心よりも強いのです。今の現実は、すべて無意識の本音が望み、作り上げたものです。

わたしは豊臣の存続を望んでいました。
本心から望んでいる、と信じていました。
けれど、結果はどうだったでしょう?
豊臣は根絶やしにされました。
これが、現実です。

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十八話 まちがった愛で男を包んだ女と、偽物の愛で男を抱いた女

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十八話 まちがった愛で男を包んだ女と、偽物の愛で男を抱いた女

まちがった愛で男を包んだ女と、偽物の愛で男を抱いた女

慶長十九年八月、その事件は起こりました。事の発端は、秀頼様が秀吉の十七回忌に向け、京都の方広寺で大仏の開眼供養をする準備をしていた時のことでございます。
徳川様は方広寺の梵鐘に「国家安康」と記されているのを見て、因縁をつけたのです。
「これは家康の名前を分割したもので、豊臣は徳川家康の死を願っている」

秀頼様と茶々様、そして秀頼の妻である千

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十七話 お金の問題の根っこには、愛がしっかり絡みついている

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十七話 お金の問題の根っこには、愛がしっかり絡みついている

お金の問題の根っこには、愛がしっかり絡みついている

わたしは自分のまちがいに気づきながら、ずっと目をそらしていました。聖母になるフリをし、自分の罪を見ないふりをしていたのです。
人は、まちがいを犯しやすい生き物
確かにそうです。
わたしもその一人です。
逃げ続けていたのです。

わたしが犯したまちがいは、自分に向き合わなかったこと。

自分に向き合うことを避け、秀吉と正面から向き合うことを避けま

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十六話 人はまちがいを犯す生き物

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十六話 人はまちがいを犯す生き物

人はまちがいを犯す生き物

秀吉はわたしを残し、この世を去ってしまいました。
わたしの心も体も、しばらくその事実を受け入れられませんでした。
目が覚めると、彼が毎朝飲むお茶を用意しなくては、と立ち上がり、ああ、秀吉はもういなかった、とへなへなとその場に座り込み呆然とするのでした。

この時、初めて茶々様が鶴丸様を亡くした気持ちがよくわかりました。
あの方も同じような喪失感を持ち、奈落の底に落ちたの

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十五話 「愛」には、いろんなカタチがある

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十五話 「愛」には、いろんなカタチがある

「愛」には、いろんなカタチがある

茶々様と秀頼様がわたしと秀吉のいる伏見城で、一緒に暮らす生活が始まりました。
秀吉はわたしに遠慮せず申し訳ながる風もなく、堂々と茶々様や秀頼様のところに渡ります。わたしは一人残され、心に冬の冷たい風が吹くのを感じます。そんな時はいつも「家族三人」という言葉が浮かびます。
わたしだけ、蚊帳の外です。
母は息子の家族に入ってはいけないのでしょうか?

やがて昼間だけ

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十四話 その思い込みが、あなたを不幸にする

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十四話 その思い込みが、あなたを不幸にする

その思い込みが、あなたを不幸にする

秀吉が茶々様と生まれたお子に対面する日が、近づいてきました。
秀吉は落ち着きなくうろうろしたり不機嫌になったり、と心なしか緊張しているようでした。
けれどそばにいるわたしには、待ちに待ったお子との対面を待ちきれず、こらえきれない喜びに溢れているように見えました。
わたしに気を遣い、堂々と喜びを表せない秀吉が可愛いような気の毒なようでした。わたしは敢えて何も言葉

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十三話 幸せも不幸も伝染する

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十三話 幸せも不幸も伝染する

幸せも不幸も伝染する

震えが止まりませんでした。あまりにもブルブル震えるので、両手で自分の体を抱きしめ、震えを止めようとしたほどです。
こんなはずでは、ありませんでした。
わたし達の人生は、こんな風にいくつもの「こんなはずでは、なかったのに」が積み重なり、今になっているのかもしれません。

こんなはずではなかった・・・・・・苦さを噛みしめながら、まだ震えの止まらない手で筆を取り、秀吉に手紙を書き

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十二話 人を呪わば、穴二つ

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十二話 人を呪わば、穴二つ

人を呪わば、穴二つ

秀次が関白になったことで、茶々様の中に危機感が生まれたのでしょう。
茶々様が秀次に秋波を送るのを見て、秀吉は男として奮起したようです。
また頻繁に茶々様のところに、通い始めました。
それこそが、まさに茶々様の思うツボだったのですけどね。
どうして男には、わからないのでしょう?
同じ同性である女には、女のやり口が見ていてよくわかります。

いますでしょう?
同性に好かれない女。

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十一話 あなたはまだ、あきらめていない

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十一話 あなたはまだ、あきらめていない

あなたはまだ、あきらめていない


天正十九年は秀吉にとって、鶴丸様以外にも大切な人達を失った辛い一年でした。
この年の一月、相談相手であり唯一彼に進言できた、弟の秀長が死去しました。彼の死は、わたしにとっても大きなショックでした。
二月は、相談役でもあった茶人千利休を切腹させました。わたしも千利休とは面識があり、何度も秀吉に彼の切腹を止めるように言いましたが、彼は頑として耳を傾けませんでした。

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十話 子どもを産んだくらいで偉そうにしないで

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第二十話 子どもを産んだくらいで偉そうにしないで

子どもを産んだくらいで偉そうにしないで

茶々様の城に戻った鶴丸様の熱はなかなか下がらず、ずっと寝込んでいます。犬猫もそうですが幼い時は男の方が弱い、と言いますね。まさにその通りですね。鶴丸様は豊臣の後を継ぐ大切なお子ですから、心配です。
鶴丸様に何かあれば、秀吉は半狂乱になるでしょう。
そんな秀吉は見たくありません。そのためにも鶴丸様に早く良くなってもらわねば、とわたしは固く目を閉じ、祈り続けま

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第十九話 生母と聖母

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第十九話 生母と聖母

生母と聖母

天正十八年、秀吉は最後まで残っていた北条氏との決着をつけるため小田原に向かいました。
後に小田原征伐、といわれた戦いです。
この戦いで秀吉は、難攻不落として名を響かせた小田原城をぐるりと取り囲みました。
北条はこの城に絶対的な自信を持っており、城を死守する考えでした。
これに対し秀吉は、得意の長期戦で兵糧攻めに持っていく作戦でした。
じっくり腰を据え、北条氏が頭を下げるのを待っている

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リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第十八話 人は心の拠りどころを求める生き物

リーディング小説「美しい子宮~寧々ね~」第十八話 人は心の拠りどころを求める生き物

人は心の拠りどころを求める生き物

茶々様の妊娠は、秀吉に喜びと活気を与えました。
秀吉は「よくやったぞ、茶々」の感謝を込め、山城淀城を茶々様に与えました。
この城に茶々様が移って以降、茶々様は世間から淀様と呼ばれるようになりました。
わたしの中では相変わらず、茶々様ですけどね。
口さがない世間は
「愛人に子どもができて、正妻の寧々は肩身が狭かろう」
と言っているようです。

「北政所様、くやしい

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