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冬野が書いた小説

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オリジナル小説・商業小説の告知や追記。
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記事一覧

【随筆】『マジックアワー』

【随筆】『マジックアワー』

私は日々ショックを受けている。
ということに気付いて、またショックを受けた。

どういうショックか。
ショックっていうのは、自分が知らなかったことを知った時に受けるものだから、まず過去の話をしなければならない。

子どもの頃から大事にしている感覚がある。
当時、私の部屋から都庁が見えた。
90年代東京の代表的高層建築で、特に第一本庁舎の、夕陽を浴びて反射するガラスのきらめきの、現代的でありながらど

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小説『舞台』

小説『舞台』

生身の人間が恐ろしい。
俺は生身の人間をきちんと認識することができないのかもしれない。

劇場から逃げるようにして、俺は駅に向かった。

雪が降りそうなくらい寒い夜。

劇場が暑すぎたから、汗が冷えて余計に堪える。
ホテルを出た後と、同じ感覚だ。
とにかく駄目だった。
そういえば、劇場の多いこの街も嫌いだった。
ろくな思い出がない。
最後に来たのは、マッチングアプリで盛り上がった女と焼肉を食べた時

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小説「多摩」

小説「多摩」

深夜の東急大井町線。
大岡山駅から、溝の口駅行きの電車に乗る。

体勢の崩れた老人たちはスマホでニュースをダラダラ見たり文字を打ったりし、若い女の子はドアのそばにもたれて、iPadにApple Pencilで作業している。

水曜日の深夜だが、それなりに人は多い。
やはり沿線は人が好んで住む場所に設計されているのだろう、それが東急電鉄の使命だろうから。

車内では、美しい風貌の若い男が目立つ。だが

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自分はなぜ文章を書くのか、何のために小説を書くのか。
明日死んでもいいように記録していた。
人生にドラマが欲しくて、瞬間瞬間をビーズのように繋ぎ止めて、一連の連なりにして、解釈しようとしていた。
過去も未来も切り離して、瞬発的に生きてきた。
いつの私のことも、大切にしてあげよう。

小説『共感覚の記憶』

小説『共感覚の記憶』

「冬の夜の匂いが好き」

 小学生の時、同級生がそう言った。
 それを聞いて、屈託もなく返事をしたのを覚えている。

「私も好き」

 あれからもう何年も経って、常に変わらないと思っていた季節の移り変わりが、どんどんおかしくなっていって、肉体が耐えられないような夏。
 意識が霞むほどの暑さの中で気付いた。
 その匂いがすぐ思い出せない。
 確かにそう言ったのは、記憶にあるのに。

 中学生の時はし

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ティーンズラブを書くときに考えること

ティーンズラブを書くときに考えること

3月に発売した拙著(冬野由姫名義)のティーンズラブ小説『絶倫CEOと予言婚!?』が、ピッコマにて話売り開始しました!

「後半に行くにつれストーリーから目が離せなくなる!」
との感想も頂戴しておりますので、最初チラッと無料で読んでみて、どんどんハマって頂きたい所存です!

そして、この『予言婚』について、紹介文を寄稿しました。
シャルロット文庫さまのnoteにて掲載されてます。

さて、本題に。

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書くことで過去の傷を

書くことで過去の傷を

小説を書くことは自分にとってどういうことか?

カクヨムに載せている『トーキョー・ロスト・ガールズ』にしろ、先日出したTLにしろ、ある程度の形になっているものには共通でテーマがあって、例えて言うなら、

ブロック解除。

分かりやすく言えば「自分に対する思い込みから脱却する」という意味です。ブロック解除というワードはスピリチュアル分野で使われることが多い。

この共通テーマがにはつい最近自覚したの

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カクヨム更新/TL小説発売しました

カクヨム更新/TL小説発売しました

ウルトラスーパーお久しぶりに、カクヨムに載せている『トーキョー・ロスト・ガールズ』という自作小説を更新しました。

この小説自体2018年に書き終わっており、今見ると古めの表現があります。今回の話は、障がい者雇用でのオフィス労働の描写がメインです。
ただ、柊という人物がそもそも会社勤めが嫌いなので、誇張して書いてます。
工場労働をイメージして書きましたが、今はこんな労働環境の場所がないと思いたいも

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自伝小説を連載することにしました。

自伝小説を連載することにしました。

こんばんは、冬野です。

「自分のやりたいこと全然やれてねー!」って気持ちがMAXになったので、少しでも近づくために、毎週日曜21時に小説をアップすることにしました。

過去に書いた作品『トーキョー・ロスト・ガールズ』です。

クオリティも含めて、私の名刺代わりになる、いわば自伝的な小説です。

ちらっとあらすじが書いてありますが、一言でいうと

「親に確執を持った娘たちがクソな人生にどう折り合い

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