- 運営しているクリエイター
記事一覧
検査、そして三津シーと淡い恋
16年前の秋の日、私と彼は何の言葉も交わすことなく肩を寄せあうでもなく、ただ並んで繰り返し繰り返し浮き上がっては沈んでいくオキゴンドウの背中を眺めていた。背もたれのない白いベンチ。真ん中にもう一人座れるか座れないかの微妙な空白。そこから10月の海風が幾度も抜けた。
そうしていた時間が何時間だったのか、何十分だったのかはもう思い出せない。
ひたすら鮮明なのは、傾きかけた陽に照らされた黄金色の駿河湾。
16年前の秋の日、私と彼は何の言葉も交わすことなく肩を寄せあうでもなく、ただ並んで繰り返し繰り返し浮き上がっては沈んでいくオキゴンドウの背中を眺めていた。背もたれのない白いベンチ。真ん中にもう一人座れるか座れないかの微妙な空白。そこから10月の海風が幾度も抜けた。
そうしていた時間が何時間だったのか、何十分だったのかはもう思い出せない。
ひたすら鮮明なのは、傾きかけた陽に照らされた黄金色の駿河湾。