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2023年美術鑑賞記録

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2023年に見た美術展色々
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2023年5月の記事一覧

【解れていく感覚】ダムタイプ|2022: remap 第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 アーティゾン美術館

【解れていく感覚】ダムタイプ|2022: remap 第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 アーティゾン美術館

2023/04/23訪問

日本のアート・コレクティブの先駆け的な存在であるダムタイプ。ヴェネチア・ビエンナーレに出品された作品の凱旋展示、とでもいいましょうか。
ヴェネチア・ビエンナーレ出品に石橋財団が全面的な支援をしてきたので、ブリジストン美術館時代から現在のアーティゾン美術館になっても凱旋展示はここで行われる。

ヴェネチア・ビエンナーレ、歴代様々な方々が出展している中の最新がダムタイプ。キ

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【四半世紀ぶりに再会】マティス展 -色、形、線、冒険のはじまり-東京都美術館

【四半世紀ぶりに再会】マティス展 -色、形、線、冒険のはじまり-東京都美術館

20年ぶりの大個展のマティス展。
前回は国立西洋美術館で2004年だったそうな。その展覧会には行っていないので、私は26年ぶりの再会を目指して東京都美術館へ降り立った。

1997年初秋

私とマティス作品の出会いは1997年秋、ポンピドーコレクションが東京都現代美術館にやって来た時が初めてだった。
本来なら近代のくくりの作品も多い中、現代美術館で見るポンピドーコレクションは新鮮だったし、メインビ

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【重文作家は茨城から続々と】日本の近代美術と茨城の作家たち 春から夏へ 茨城県近代美術館 常設展

【重文作家は茨城から続々と】日本の近代美術と茨城の作家たち 春から夏へ 茨城県近代美術館 常設展

企画展も勿論楽しみだが、最近の楽しみは各館の所蔵品、コレクションである。
さて、「近代美術館」と冠がついている訳だがどんな作品があるか?!と見始めたらお宝が凄いじゃないですか。

簡単に説明するなら、茨城県版「重要文化財の秘密」展だ。

中村彝、小出楢重、横山大観、川合玉堂、菱田春草…などなど。
ただ、すごい人たち集めてます、ではなく茨城県にゆかりある人物や題材というコレクションの方向性がしっかり

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【読後の爽快感】いのくまさん 茨城県近代美術館

【読後の爽快感】いのくまさん 茨城県近代美術館

近隣の美術館で時々展示される猪熊弦一郎氏の作品を見かけては、ああ、まとめて見てみたいなと思っていたのでは今回の展示は大変楽しみだった。

猪熊弦一郎の個展、ではあるが、谷川俊太郎の著書「いのくまさん」という絵本に沿った展示である。
沿ってはいるが、子供にも、大人にも猪熊弦一郎の画業がしっかり伝わる内容はとても良い。さすが、本として編集された内容というのは展覧会に組み立てても通用するものもあるのだな

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【なんでもない特別】「前衛」写真の精神: なんでもないものの変容 千葉市美術館

【なんでもない特別】「前衛」写真の精神: なんでもないものの変容 千葉市美術館

千葉市美すごい…としか言えない研究と展示。良かった、すごく良かった。

これを写真美術館では「ない」ところがやった事に意義があるし、東京都写真美術館でやった「アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真」も良い予習になった。

あそこで、噛み砕けなかった部分(施設の広さの問題だと思う)を千葉市美に解釈してもらった感。
シュールレアリスム、ダダ、ネオダダ、の流れが一気に飲み込める。

【アジェから始まるス

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【立場が変わると景色が変わる】ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術

【立場が変わると景色が変わる】ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術

ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術
―いつ・どこで・だれに・だれが・なぜ・どのように?― 水戸芸術会館現代美術ギャラリー(5/7会期終了)

まず、この企画を実施した水戸芸の視点と、展覧会に来場していた客層を見て数年前森美術館で行われたアナザーエナジー展の時より少し、何かが変わったのかなと思えたのだ。

展覧会の趣旨は
ケアを通して見えてくるもの、ケアを「ひとり」か

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【文の芸術、文芸】シアン稲葉浩志 作品展 角川武蔵野ミュージアム

【文の芸術、文芸】シアン稲葉浩志 作品展 角川武蔵野ミュージアム

B'zのボーカリスト稲葉浩志の35年に渡る作詞活動に着目し、まとめた本の出版を記念した角川武蔵野ミュージアムでの展覧会。

1ファンなので見に行った訳だが、先ずそれは置いておいて、(溢れるパッションを抑えつつ)冷静に。

【言葉の芸術】

言葉の芸術は長い物語や論文だけでなくて、抽象表現も可能な詩というものの可能性も、もっとあるのではないかと感じた。
絵画に具象絵画、抽象絵画と分野がある様に。

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【美術の味わいって?】センス・オブ・ワンダー 感覚で味わう美術/新所蔵品展 静岡県立美術館

【美術の味わいって?】センス・オブ・ワンダー 感覚で味わう美術/新所蔵品展 静岡県立美術館

収蔵品による企画展と新所蔵品展。
23年5月3日。
はるばる東海道線の在来線に乗ってドコドコ揺られて静岡まで行ってきた。
前日には茨城にいた。茨城水戸と静岡その間約300km。
この2日間移動したなー!

東海道線の草薙駅を降り、静岡大学方面へ歩いて移動。
山の上にあるのでほぼ上り坂である。
5月の晴天の静岡。暑い。
美術館の敷地内の散歩道に差し掛かると木陰もあり、野外彫刻がちらほら。
それぞ

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実を写す?写実絵画とは何だろう ホキ美術館

実を写す?写実絵画とは何だろう ホキ美術館

千葉県千葉市の緑区、という非常にニッチな場所に突如として現れる不思議な建築の美術館。

写実絵画が写真に見えると
写真みたい、という評価がつく。
本物の画面を見てみると、写真というよりも絵である事はわかるし、その筆跡と大画面にかかる制作時間を思う。

画面の表面がツヤがあると、それが写真の表面のツヤの様に感じ「写真みたい=写実」という感覚の図式もあるのかな、と。

ただ、いかんせん、女性のモデルや

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