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記事一覧
【コラム・エッセイ】コーヒーとキャッチ・ボール
「店内で」
「テイクアウトで?」
「いいえ、店内で」
「店内で」
「ブレンド・コーヒー」
ジャズが大きいせいもあって、上手く伝わらなかった。40分かけて歩いてきたのはここでコーヒーを飲むためだ。けれども、世界は思うほど自分のことを知らない。今日はファースト・コンタクトに失敗したと思った。
コミュニケーションは常に難しい。
自分から行きすぎず、聞かれたら答えるくらいがいいのかもしれな
再会の時(コーヒー・タイム)
ちょっとした親切にほろっときてしまう。髪を切ればどこかリセットされた気分になる。それはどこまで続くだろう。傷ついているのか、傷つきやすくなっているのか。ただ単に疲れてしまったのかもしれない。人の声が懐かしくて仕方ないのか、完全に無視することができない。新築マンションの勧誘か。金がないと笑ってもあきらめずにアンケートを持ちかけてくる。「20秒だけ……」だけど、交差点は1秒を争う場所なのだ。時間がな
もっとみる【創作note】大変だったね
病んでいる時ほど
夢を見る
夢を持ち帰れた時には
眠りも無駄ではなかったと
飛び跳ねたくなる
(覚えてなければ見なかったも同然だ)
夢の中では僕が主人公だ
日記の中の僕とも
小説の中の僕とも違う
半オリジナルな僕は
追われたり
消されかけたり
浮いていたりもするけれど
主人公であることだけは不変で
理不尽なことをしていても
ところどころは気持ちがわかる
大変だったね
(よく帰ってきたね)
【コラム・エッセイ】マタギの美学
よく晴れた風のよい日には、公園に行ってボールを蹴りたくなる。しかし、どんな公園でもボールを蹴らせてもらえるとは限らない。禁止、禁止禁止、禁止! 今はあれも禁止、これも禁止という公園も多いらしい。もしも自分がいっぱいいたら、一人の自分は毎日のようにキャプテン翼スタジアムに通わせたい。しかし、現代の常識では、人間は同時に複数のスペースに身を置くことができないとされている。そのことを僕は時々とても残念
もっとみる【創作note】環境設定
2人掛けの席に着いてみるとテーブルががたついた。今日はここにしてみようとたまたま選んだところがついていない。一旦かけてみたものの、コーヒーに触れる前に思い直して席を立った。
がたつくテーブルは何か落ち着かないものだ。コーヒー・カップを持つ、テーブルに肘をつく、ペンを取る、Pomeraを叩く。そうした何気ない仕草の度にいちいち「ガタガタ」と言ってくる。せっかく独りなのに、人がいるかのように干渉さ
【創作note】背水の陣
正月明けの検査の結果を受け取ったのは4月になってからだった。もたもたしている内に冬も終わろうとしている。とっくに終わったと考える人もいるかもしれない。僕ももうダウンはクローゼットの中に片づけてしまった。朝晩冷え込むことはあるけれど、もはや真冬のような寒さを感じることはないのではないか。なんて思っていたが、月曜日にはマフラーを巻いていた。寒の戻りでもあるまいが、まだまだ寒いと思える瞬間はあるものだ
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