何故、謎が在るのか?
――「何故、謎が在るのか」「どうして謎が生まれてしまうのか」という疑問にちゃんと向き合った方が、物語的にも面白いんじゃないかという思いがあるので、謎解きにもそれを求めてしまう節があるというわけです。
人生は物語。
どうも横山黎です。
作家として本を書いたり、木の家ゲストハウスのマネージャーをしたり、「Dream Dream Dream」という番組でラジオパーソナリティーとして活動したりしています。
今回は「何故、謎が在るのか?」というテーマで話していこうと思います。
📚久々に持ち帰り謎
5月15日、この日の午後は謎解きをしていました。友達のしゅんちゃんに誘われて「持ち帰り謎デー」のイベントに参加したんです。
しゅんちゃんは同じ大学の同じ学科の後輩。彼が入学して翌日くらいから知り合っているので、もうかれこれ3年以上の付き合いとなります。出会った当初からお互い小説を書いていたり、ドラマが好きだったり、そして謎解きが好きだったりしたので、話がすごく会ったんですよね。
しゅんちゃんはずっと前から謎解きが好きで、謎解きをするためだけに東京に行く人です。その好きが高じて、自分でも謎をつくりたいと思うようになり、自分でサークルをつくって、謎解きをイベントを運営しています。
今では石岡市の街を巡りながら謎を解くイベントの案件をもらったりしているし、近頃でも何件か案件を受注したそうです。趣味に止まらず、ちょっとずつ仕事になっていっている様子を近くから遠くから眺めていて、面白いなあとにやにやしています。
そんなしゅんちゃんに誘われて、久々にがっつり謎解きをしてきました。リアル脱出ゲームといえば、謎を解くことによって閉じこめられた部屋から脱出を試みるイメージがありますが、キットを買えばどこでも謎解き体験ができるいわゆる「持ち帰り謎」と呼ばれるものもありまして、今回のイベントではそれを2つやりました。
「謎遺るアトリエへ」と「INSIDE OUT」のふたつ。
どちらも本当に解きごたえのある謎で、解き終えた後の頭はもうくたくた。ただ、やっぱりそれでも謎を解くという体験にはやっぱり価値があるし、需要が絶えないのにも頷けます。
それと同時に、僕のなかでどうしても違和感を覚えてしまう部分があるので、今回はそれについて触れていこうと思います。
📚謎解きに対する違和感
僕の読書のきっかけはミステリーだったし、推理小説とか刑事ドラマが好きだったから、謎解き自体は好きなんです。僕も一応つくる人で、物語をつくるときもミステリー的な要素を意識してしまうんですよね。
僕が違和感を覚えてしまうのは、いわゆる「謎解き」の謎がそこに在る理由。「なんでそこに謎があるのか」とか「なんで伝えたいことが暗号のように複雑になっているのか」とか考えてしまうんですよね。
あと、謎解き界隈の人なら分かる謎のクセとか、謎のルールがいまいちしっくりこないときがあるんです。羅列された単語の頭文字を読むと答えになる、とかよくある話ですけど、なんで頭を読む流れになるのか。そのルールが適用されるのはなぜなのか、考えてしまうんです。
もちろん、謎解きってそういうもんだから、と一蹴されて終わりなんだけれど、気になってしまうものは気になってしまう。今回のイベントでも、それを感じる瞬間は少なくなかったんです。
📚何故、謎が在るのか。
僕は前に『Message』という小説を書きました。既に書籍化して紙の本として出版したんですが、その物語のなかで追求したことはまさしく今回のテーマに通じるものでした。
『Message』は、成人の日の夜を舞台にしたヒューマンミステリー。「110」というダイイングメッセージの謎を解き明かしていきます。最後の1行で謎を明らかになる物語です。
ダイイングメッセージと聞いて、みなさんは「被害者が死に際に犯人の名前を遺す」というイメージが湧くと思います。実際、僕もそうでした。ただ、あるときふと思ったんですよね。
なんで、犯人の名前を書くんだろうって。
人生最後の言葉に、どうしてこの世で最も憎い人の名前を書くんだろう。人生最後なんだからもっと伝えたいことがあるはずじゃないか。そう思ったんです。
だから、『Message』のなかで登場する「110」というダイイングメッセージは犯人の名前を書き表しているわけじゃないんです。書いた本人が、人生最後に本当に伝えたくて伝えたかった思いを託したメッセージだったんです。じゃあ、「110」とは何なのか。何を伝えたかったのか。それがミステリーになっているわけですね。
話を戻しますね。
ダイイングメッセージって犯人の名前を遺すという文化があるけれど、現実的ではありません。本来なら自分の本当に伝えたいことを伝えるものなんじゃないの?という疑問から『Message』の構想は始まったんです。僕は自分が抱いた疑問に答えるように物語をつくっていきました。
ちなみに、死に際に暗号のような複雑なメッセージを遺せるわけがないという疑問も同時に抱いていたので、『Message』はそれにも答えを出しました。「110」という一見謎めいたメッセージだけれど、謎めいている意味がちゃんとあるんです。
こんな風に、「何故、謎が在るのか」「どうして謎が生まれてしまうのか」という疑問にちゃんと向き合った方が、物語的にも面白いんじゃないかという思いがあるので、謎解きにもそれを求めてしまう節があるというわけです。
今度、しゅんちゃんと一緒に謎解きをつくる予定があります。僕が物語をつくって、彼が謎をつくって、ふたりでイベントを運営していく計画があるんです。最近は絶賛、その物語を練っているわけですが、意識していることがあるんです。いうまでもなく、これまで触れてきたような疑問や違和感にどう答えるのかということです。
方向性は決まっているし、おおよその展開も決まりました。あとは隙間を埋める作業が残っています。僕だからこそ書ける物語を完成させていきます。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
20240516 横山黎