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【ベト日記13】超ドメスティックな言語芸術・短歌と、超グローバルな言語芸術・村上春樹

8月上旬に、日本に5日間滞在したのだが、そのうち歌会(※)を2回した。
(※自作の短歌をもちより、作者を伏せたまま褒めたり改善点を話し合う会)

あらためて、
「短歌って、なんて超ウルトラドメスティックなメディアなんだろう」
「『日本語ジャーゴン、ここに極まれり』だわー」と思った。

たとえば「ここ一字空けするか」とか、助詞が「が」であるか「の」であるべきか、みたいなことで10分とか20分とか平気で話してる。
日本人ネイティブじゃないと絶対分からないし、日本人ネイティブでも2%ぐらいしか分からないだろう、言語の高等遊戯的な話を、延々とする。

普段、外国で外国人に「誰にでも通じる」「スタンダードな」日本語を教えている私としては、真逆の言語活動である。

もう超垂涎。あーーーーこれこれこれこれ、外国暮らしでこの部位が慢性的に飢えてたんだよな、っていう、我が脳に必要な栄養を、ドボドボ補充できた。

■短歌の省略はマジで大胆過ぎる

数ある言語芸術の中でも短歌が特にドメスティックだなと感じる理由は、第一に、
「省略されているものがあまりに多く、そしてそれは『日本人なら分かるよね』という信頼、というか、丸投げにもとづいてあまりに大胆に省略されているから」だ。

いや、『日本人なら分かるよね』ならまだいい方で、
「『この時代の日本人なら分かるよね』『90年代に10代を経験した日本人なら分かるよね』『東京で電車に乗ったことがある日本人なら分かるよね』的な、「コード」にのっとり、もっと読者を大胆に限定してしまっている短歌もある。

いや、そんなんならまだいい方で、誰が対象かはっきりセグメントできず分からずモヤモヤと読者を限定してしまっているものもある。

たとえば、先日の歌会には「サーティワン」という単語が使われた短歌があったのだが、これも「これは、外国ではバスキンロビンズという名の、あのチェーン店のことで、割と陽気な感じでポップなアイスが売られてて……」という知識が無いと読めない、のみならず、
「あー飲み会の後によく食べたくなるし、最寄り駅から家に帰る時も通るんだけど、そのぐらいの時間ってもう閉店してるんだよねー」
みたいな、知識?というか、「サーティーワン感」までもが前提とされている(と私は感じた)。

■短歌は季節を愛す人にしか分からない

……まあ、これだけだったら他の国の言語芸術でもありえると思うんだが、更に短歌をドメスティックにするポイントとして、「「季節」に関する取り決め(=コード)が多すぎる」という点がある。

日本の季節を何巡も体験し、四季どころか実際12個刻みぐらいの細かさで季節を感じることができない人間じゃないと読み解けない短歌が多すぎる。草木の名前も50個くらい知ってることが当然とされてる感じ、ある。

実は、私は季節にも植物に興味がない非国民なので、マジで普通に読めない短歌が40%ぐらいある。


余談ではあるが、私がいかに季節に興味がないか、そして季節のない常夏の国に移住していかに気楽になったか、という話はここに書いている。


■日本に住み続けないと短歌は分からない

しかも、上記のコードは、こまめに更新される。ニュースとか、災害とか、気候の変化により、どんどん変わっていく。

気候も植生も税金も異なる国にしばらく住んでいると、短歌ワールドには、どんどんノレなくなっていく。

短歌ワールドにキャッチアップしていくには、日本に住みつつ、こういう取り決め(=コード)を、常に更新し続けていかないと、いけないんだろうなあ……と思った。

私は外国在住一年だからまだなんとかなるものの、5年10年と住んだら短歌ワールドから完全に取り残されてしまうだろう。そういう意味では、この短歌ワールドの感じ、ネットのジャーゴンと似てるかもしれない。(もし5年ぶりに日本のSNSを見たら、かなり意味が分からなくなっているだろう)


■村上春樹は世界中どこでも読める

私はベトナムに来てから村上春樹にハマったのだが、これもまた、象徴的な話であるなと思う。
村上春樹といえば海外で最も読まれている日本人作家だ。
彼の著作には結構固有の地名が出てくるし(東京とか北海道とか)、「日本のこの時代のこの空気」を前提とした話(例えばオウム後の、宗教に関するあのムード、など)も多いのだが、
しかしそんなところは一つ飛び越えて、「ちゃんと世界中の人に分かるように」書いてるんだろうなと思う。

だから、ベトナムで村上春樹を日本語で読んでも全然シラけない。


※もし「世界中で翻訳されて愛されている短歌」があったらすごく知りたいので、教えてください。

今日のベトにゃん。

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シェラトンホテルの隣のモスクの前の屋台にて。



渋澤怜(@RayShibusawa


■おまけ■ そうは言っても外国暮らしで日本の芸術言語に触れたくて仕方ないので、skype上で「オンライン歌会」を始めました。初めましての人も、初心者の人も歓迎です。興味がある方はぜひどうぞ。https://twipla.jp/users/RayShibusawa


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おすすめエッセイ https://note.mu/rayshibusawa/m/mb0d4bde3bf84

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ベトナムの話 https://note.mu/rayshibusawa/m/m4c9d2d8a3d83

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レイシブです✒『言葉で遊んでいる人』📚東大卒→ライター見習→ホーチミンで日本語講師&物書き業なう🗾日本語が好きすぎるので「距離を置いている」🏮ベトナムについてのエッセイ更新中📝他、純文学短編小説など📖自己紹介・おすすめ記事は『プロフィール』から! 📚
コメント (1)
僕は昔から俵万智が好きですが、国際的にも理解されてるケース?もあるかな
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