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やまざとの産声ー短歌集ー

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短歌集
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夕日さし 赤一面に染まる世の 胸踊らせる田も空も愛も

でこぼこの道のりだけど相乗りで錆びた自転車長持ちしてる

幾年も 重ね気づいた強さとは 不完全な個性の表現

手の中に入る光の儚くて 湿った君をそっと手放す

ワニテルと 言う名の先生いましたね 教えてくれたミトコンドリア

流れ星 ひとつひとつの時は空 去りゆく星に未練はないさ

移動したサンダル片方 犬小屋の前までケンケン 悪戯のしっぽ

赤々と 大きく開くモミジアオイ 夏を引き寄せ汗の滴る

採れすぎた夏に塩を揉み込んで 樽に並べてギュッと重石す

秋の虫 冴える耳鳴り二重奏 良いか悪いか嘘か誠か

人の世は 偽りの世の賜物で 虚構の森を彷徨い歩く

秋日和 山に轟く脱穀機 エンジン止むたび静けさツンと

秋の山 散りゆくものを甘受して 夜風は君を遠くへ運ぶ