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エッセイ

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#コラム

生きるというのはあり得たかもしれない今日を捨てていく作業だ

生きるというのはあり得たかもしれない今日を捨てていく作業だ

この歳になると現実じゃない、叶わなかったいくつもの現在をあれこれ想像できてしまう。
そして幾度か通り過ぎた過去の分岐点に遡っては、あの時こうしておけば良かった、ああしておけばもっと違ったって悔やんでほうっとため息をついたりする。

(もしあの時、あの子に怒ったりしなければ、今もずっと親友でいられたのかも。
もしあの時、あの人に勇気を出して告白していれば、ずるずる引きずってつらい思いをすることはなか

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時を逆走する鳩ぽっぽ

時を逆走する鳩ぽっぽ

恐竜から進化して生き残ったのが鳥だというのは有名な話だ。
ではなぜ鳥は唯一生き残れたのか。
それは、身体的な飛行能力と臆病な性格のおかげなのである。

鳥類全般の特徴としてその二点は特に際立っている。
恐竜絶滅の理由は定かではないが、一説では空を飛べる鳥は逃げることができたから生き延びれたと言われている。
また鳥は、危険を察知したらその正体を確認する前に、本能的にまず逃げることを優先する。たしかに

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食ってないもの

食ってないもの

「食わず嫌い」という言葉がある。
私は人生においてなるべく食わず嫌いは無くそうと心がけている。食ってからでないと分からない事があるからだ。百聞は一見にしかず。論より証拠。せっかく一回きりの人生なのだから何事も経験しておくに越したことはない。

例外はある。例えばホストには行きたくない。なぜならお酒もあの髪型も知らない人とのおしゃべりも苦手だからである。それにもし行って楽しくてハマってしまったところ

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先生のまわりぐるぐるの謎

先生のまわりぐるぐるの謎

一般論私たちはしばしば"謎"の第一発見者となる。
世の中の大抵のことはすでに解明されているけど、その答えを知るきっかけがなければ謎は謎として留まり続ける。そしてそれはまるで自分だけの感覚であるかのように不安がる。対象を目にするたびに、その感覚を通してものを見るようになる。意識のうちにないだけで、最初に発見した"謎"のまま放置していて、今も私の見方のバイアスに関与している感覚って多分たくさんあると思

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人形を抱えたこどもはついに大人に成長する

人形を抱えたこどもはついに大人に成長する

初音ミクと結婚するのってどんな心境なんだろうと疑問に思って、自分にとっての初音ミクに該当する二次元キャラクターを考えてみたらそれはモリゾーだった。2005年開催の愛知万博公式キャラクター"モリゾーとキッコロ"の、モリゾーである。

私とモリゾーの出会いはなかなかロマンチックだった。
私が6歳か7歳の頃、家族で茨城の海に泳ぎに行ったある日、砂の中から発掘したのがモリゾーだった。こどもの手のひらにすっ

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言霊と新しき世界、自ら切り拓く

言霊と新しき世界、自ら切り拓く

昨日締め切りの仕事を提出し、迎えた徹夜明けの朝。朝といっても目が覚めると昼の12時半。すぐにピンときてスマホを開ける。

新元号「令和」

和風の美しい響き。予想外の爽やかさに、心がほろほろほぐれていく。希望の兆し。解放の予感。

今年大学に合格した弟が、今日東京の寮に引っ越した。家族の新生活が始まる。私の大学も今日から新学期。久々の大学に出向く。桜がまちを所々で色付けしている。貼り出される連絡事

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我輩は猫になりたい

我輩は猫になりたい

私は意図して人を傷つけようと思うことはあまりないけど、言葉を発した後に、あ、今相手を傷つけてしまったな、とか、自分本位の言い方になってしまったなとか気づいて、しばらく落ち込む、ということがある。
そんな時、謝れる場合は後日でも、謝るようにはしている。
でも、自分では思わぬ一言で相手を傷つけてしまうこともきっとたくさんあったと思う。その場合、私は相手に謝ることができていない。

きっとこういうことは

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竹下通り〜表参道〜キャットストリートの洗礼

竹下通り〜表参道〜キャットストリートの洗礼

JR原宿駅の改札を抜けて、若干年齢層の低い人混みに揉まれながら竹下通りを歩く。大通りに出ると車線に沿って右に曲がり、表参道に出る。カップルや外国人やコスプレイヤーたちと一緒に信号を渡った後、都会的なウィンドウショッピングを楽しむ。キディランドの横を曲がってお洒落なキャットストリートを進む。そのまま渋谷駅を目指して歩く。

『東京という街を浴びるための散歩道→目当ての買い物をするための散歩道→ストレ

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セキセイインコと和解した話

セキセイインコと和解した話

私が人生で最初に"魂"の存在を感じたのは、小学1年生の時。
私が生まれる前から両親が飼っていた、一羽のセキセイインコが亡くなったときだ。

私はインコのぴーちゃんに嫉妬されていた。
私が生まれる前、家族の主役はぴーちゃんだった。首元まで鮮やかな青色をしたオパーリンの女の子。鳥好きの父と笑い上戸の母の間で愛されて、きっと幸福だっただろう。
でも、私が誕生した途端、2人の関心はぴーちゃんではなく私

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今日も食べる。明日も食べる。

今日も食べる。明日も食べる。

「本当に美味しそうに食べるね」

付き合ってる人に言われて思いがけなかった言葉である。
私って、美味しそうに食べてるのか?

思い出した記憶があった。小学生の頃、給食の時間に友達に言われたのだ。

「麻衣ちゃんってたべるとき目をつむるよね。あじわってたべてるの?笑」

目を瞑っているなんて完全に無自覚だった私は、愕然とした。なぜか目を瞑りながら満面の笑みで頬張る彦摩呂さんが脳内再生され、私は急に

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