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東京大学/国語/第一問

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#現代文

2023東京大学/国語/第一問/解答解説

2023東京大学/国語/第一問/解答解説

【2023東京大学/国語/第一問/解答解説】

〈本文理解〉
出典は吉田憲司「仮面と身体」。著者は国立民族学博物館館長。
①段落。いまさらいうまでもなく、仮面はどこにでもあるというものではない。…いずれにせよ、仮面は、人類文化に普遍的にみられるものではけっしてない。
②段落。ただ、世界の仮面の文化を広くみわたして注目されるのは、仮面の造形や仮面の製作と使用を支える組織のありかたに大きな多様性がみら

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2014東大国語/第一問/解答解説(再録)

2014東大国語/第一問/解答解説(再録)

出典は藤山直樹『落語の国の精神分析』。

テレビやネット上のインフルエンサーと同様、受験現代文業界においてもネポティズムで成り上がった中身のない山師が跋扈する昨今だが。

本問は「精神分析の統合メカニズム」を「落語の統合メカニズム」になぞらえて示す問題である。「今でしょ」の人はともかく(分析家の孤独って何だよ笑)、業界一の実力者とされる先生も、あえてとる方針だろうが、結果、知性の劣化に加担すること

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2022東京大学/国語/第一問/解答解説

2022東京大学/国語/第一問/解答解説

【2022東京大学/国語/第一問/解答解説】

〈本文理解〉
出典は鵜飼哲「ナショナリズム、その〈彼方〉への隘路」(大澤真幸・姜尚中 編『ナショナリズム論』より)
①段落。五年ほど前の夏のことだ。カイロの考古学博物館で私はある小さな経験をした。一人で見学をしていたとき、ふと見ると日本のツアー団体客がガイドの説明に耳を傾けていた。私は足を止め、団体の後で何とはなしにその解説を聞いていた。…ところが、

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2013東大国語/第一問/解答解説

2013東大国語/第一問/解答解説

【2013東京大学/国語/第一問/解答解説】

〈本文理解〉
出典は湯浅博雄「ランボーの詩の翻訳について」。
①②段落。詩人─作家が言おうとすること、いやむしろ正確に言えば、その書かれた文学作品が言い表そうと志向することは、それを志向するあり方と切り離してはありえない。人々はよく、ある詩人─作家の作品は「こういうメッセージを伝えている」ということがある。しかし、実のところ、ある詩人─作家の書いた文

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2018東大国語/第一問/解答解説

2018東大国語/第一問/解答解説

【2018東京大学/国語/第一問/解答解説】

〈東大国語の解答を示す理由〉
①難度は高いが考えを深めることができる良問であること。②同じ良問でも、例えば京都大学などの問題と比較して、標準的な形式で他大学の学習にも応用がきくこと。③国内最高峰の大学の問題なのに、大手予備校などが公開している「解答例」の精度が低いこと。

〈本文理解〉
出典は野家啓一『歴史を哲学する~七日間の集中講義』。表現に着目し

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2015東大国語/第一問/解答解説

2015東大国語/第一問/解答解説

〈はじめに〉
こうして東大第一問の解答を公開しようと思い立ったのは、GVで生徒と東大の過去問を解いていて、大手予備校などの解答を参照する時、特に現代文については、改善の余地が大きいと感じたからです。それで、とりあえず新しい年度から自作の解答を、その根拠となる解説を添えて世に問うてみようと思った次第です。
他にケチをつけた以上、僕の解答も「まな板の鯉」となるのを避けられません。それで、自分の能力が許

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2014東大国語/第一問/解答解説

2014東大国語/第一問/解答解説

【2014東京大学/国語/第一問/解答解説】

〈はじめに〉
受験生や時間のある方は、一度本文をお読みになり、それぞれのレベルで設問を考えた上で、以下の解説を参考にして下さい。受験に関わらず、東大の問題は読みごたえがあり、設問に挑むことで理解が深まる仕掛けになっています。
適切な解答は、適切な読解に即して得ることができます。読解においては、表現に着目して重要箇所を抽出すること(ミクロ読み)、形式段

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2004東京大学/国語/第一問/解答解説

2004東京大学/国語/第一問/解答解説

【東京大学/2004年/国語/第一問/解答解説】

こんにちは、GVの大岩です。今日は2004年東大国語第一問の解説を行います。
東大第一問の解説をアップする理由は以下の三点です。①難度は高いが良問であること。②標準的な形式で他大学への応用がきくこと。③公開されている解答に改善の余地が大きいこと。
それで、より良い解答を世に提起し議論の俎上に載せようと思っている訳です、が実際はなかなか反応がありせ

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2020東大国語/第1問/解答解説

2020東大国語/第1問/解答解説

【2020東京大学/国語/第1問/解答解説】

出典は小坂井敏晶「『神の亡霊』6 近代の原罪」。

〈参考 平成31年度東京大学学部入学式 祝辞〉

〈本文理解〉
①段落。学校教育を媒介に階層構造が再生産される事実が、日本では注目されてこなかった。米国のような人種問題がないし、英国のように明確な階級区分もない。…そんな状況の中、教育機会を均等にすれば、貧富の差が少しずつ解消されて公平な社会に

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2008東京大学/国語/第一問/解答解説

2008東京大学/国語/第一問/解答解説

【東京大学/2008年/国語/第一問/解答解説】

〈本文理解〉
出展は宇野邦一『反歴史論』。内容面の補足は最小限にとどめ、形式面をたどることで重要箇所を抽出する。
①~③段落(意味段落Ⅰ)。はじめに「歴史とは何か」という問いをたて、具体的説明を挟んで「歴史は、書かれたこと、書かれなかったこと、あったこと、ありえたこと、なかったことの間にまたがっており、画定することのできないあいまいな霧のような領

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2011東京大学/国語/第一問/解答解説

2011東京大学/国語/第一問/解答解説

【東京大学/2011年/国語/第一問/解答解説】

〈本文理解〉
出典は桑子敏雄『風景のなかの環境哲学』。
「内容」面の補足はできるだけ控えて「形式」面に着目して、本文の概要をつかむ。
①~④段落(意味段落Ⅰ)、河川の体験について。人間は、本質的に身体的存在であることで空間的経験を積む。河川の体験は、流れる水の様態の体験であると同時に「身体的移動のなかでの風景体験」(傍線部ア)である。この後「河

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2012東大国語/第一問/解答解説

2012東大国語/第一問/解答解説

【東京大学/2012年/国語/第一問/解答解説】

〈本文理解〉
出典は河野哲也『意識は実在しない』。できるだけ「内容」面の補足は加えず「形式」面に着目して、本文の概略をたどろう。
①~③段落(意味段落Ⅰ)、環境問題について。それをより深いレベルで捉え、私たちの現在の自然観・世界観を見直す必要がある。それは「近代科学の自然観」であり、その中に「生態系の維持と保護」に相反する発想が含まれている。

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至高の現代文19/13東大国語 第一問(評論)

至高の現代文19/13東大国語 第一問(評論)

【2013東京大学/国語/第一問/解答解説】

〈本文理解〉
出典は湯浅博雄「ランボーの詩の翻訳について」。
①②段落。詩人─作家が言おうとすること、いやむしろ正確に言えば、その書かれた文学作品が言い表そうと志向することは、それを志向するあり方と切り離してはありえない。人々はよく、ある詩人─作家の作品は「こういうメッセージを伝えている」ということがある。しかし、実のところ、ある詩人─作家の書いた文

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2016東大国語/第一問/解答解説

2016東大国語/第一問/解答解説

現代文の問題は、特に記述の場合、やっても大して伸びないし、他の教科に時間を回そうと考えている人が多いと思います。しかし、そう考えるのは解答の必然性を見極める訓練をしていないからだと思います。解答の必然性が見えれば、質の高い解答が再現可能になります。つまり努力が十分に報われます。
では、解答の必然性はどこに求められるのか?そのヒントは「設問」にあります。「設問」には「出題者のメッセージ」が込められて

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