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水野うた
2020年11月7日 20:00
何とも表現しようのない喪失感に、驚いてしまう。ぽっかりと空いたその穴を・・・というせつない歌があるけれど、私の胸に空いたその穴を覗くと、あの晩の青鈍色に曇った新宿の空がひろがっている。こんな気持ちになるなんて。 のろのろと身体を起こしてテレビをつけると、華やいだ声が桜前線の北上を告げている。週末の宮島は淡いピンクに彩られ、人々も心なしか浮足立って見える。彼はもう広島へ戻ったんだろうか
上海のくらげ
2020年9月11日 22:57
毎晩の日課である祈りの時間もそろそろ終わりにしようと閉じていた眼を開けると、彼はそこに神を見た。神は彼に向かってこう言った。「お前はちょうど三日後の0時に死ぬことになっている。しかし、お前は私の存在を信じ、よく祈り、誠実に生きた。その褒美として、死の際にお前が心から知りたいと思う問いに対する答えを教えてやる。」 彼がクリスチャンになったのは、晩年、末期の癌が発覚して余命宣告を受けてからだった
采
2020年8月23日 12:33
歩くのは好きですか?(それとどうか、深呼吸を忘れずに、体に良い、とお医者から聞きましたよ。)どこかへ向かって歩くのも当て所なく歩くのも良いものです。一歩ずつ確かに進んで行く感覚が好きで私はよく散歩に出かけます。右足を出し、左足を出す(あるいは、左足を出し、右足を出すあるいは、足が悪くても、無くてもそれは人それぞれですよね。向かう感覚には変わりありません。)その単純
2020年8月19日 19:36
ウチ、オトンもオカンも動物好きじゃなかったからちっちゃい頃からペットとかあんまりちゃんと飼ったことないねんな。でもな、小学校の二年か三年かぐらいの頃やったかなあ、夏休みのプール開きからの帰り道でセミ見つけて、そのまま持って帰ったことあんねん。 手づかみで羽のとこ抑えてそのまま持って帰ってきたセミを、庭の物置から引っ張り出してきたちっちゃいカゴみたいなんに入れて、「スター」って名前つけてん。そ
2020年7月16日 19:44
もうすぐ世界が終わってしまうのは仕方のないことだ。どうせみんな消えてしまうのなら、せめて最後にあたたかい幻を見たい。 田舎道、遠くに見える電波塔を指差して「東京タワー!」と笑う子どものような。昔読み聞かせてもらった絵本に、大人になってから偶然出会った時のような。 そんなことを考えているうち、気づけば私は砂浜に居た。周りには、同じように日の出を待っているであろう人たちが5、6人居た。彼らの