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鉛筆(藤本玲未)/ぽろぽろぽろ(龍翔)
鉛筆2021年7月23日
このごろの心象風景は森の中だ。山のふもとで、適度に日の光が差し込み、川のせせらぎと鳥のさえずりがきこえる森だ。鬱蒼としてもいないし、じめじめと暗くもない。ただ一人である。一人で、木の根っこにつまずきそうになったり、ぬかるみに嵌まりそうになったり、そこらへんの実を食べてみたらあまりに酸っぱかったり。
それは私の不注意だ。そして雨が降るのは自然なことだし、暑くても寒くても
桜は散り、ツツジは咲き、そして牡丹は(河嶌レイ)/[インタビューズ](竹内亮 )
桜は散り、ツツジは咲き、そして牡丹は2021年5月10日
歩き慣れた歩道の脇には、たくさんの花々が咲いている。もうすでに桜は散り、木の枝は緑の葉に覆われている。そして色とりどりのツツジは満開を誇り、突然雨が降り注ぐ。季節は目や耳、そして匂いで感じ取るものだ。体が季節の記憶をたぐり寄せるから。
去年の春も、同じことを考えていた気がする。丸10年住んだシンガポールより帰国してから初めての春で、もう
ぱさぱさとしたところから(門脇篤史)/ラッキーガールの道行き(生田亜々子)
ぱさぱさとしたところから2021年2月14日
去年の6月末頃、8年くらい通っているバーに久しぶりに行った。
緊急事態宣言が解除になって6月に入ると、空気はそこまで張りつめたものではなくなっていた。感染状況がぶり返して来る前に、そのバーに一度顔を出しておきたいと思ったのだ。バーは京都の繁華街にあり、私はそこから電車で1時間弱の郊外の街に住んでいる。
バーの扉を開けると、「久しぶり」とマスターが
庚子はしりがき(十谷あとり)/去年の2月頃からのこと(とみいえひろこ)
庚子はしりがき2020年10月7日
二〇二〇年の春から夏、どう過ごしていたか、思い出せることを書き出してみたい。一生活者の体験の断片も記しておくことで後々何かしら意味を持つかもしれない。そうであればいいと思う。
一月某日
中国の武漢という街で新型ウイルスによる感染症が出ているとのニュースを見聞する。観光客の移動に伴って、早晩大阪にやって来るだろう。今年の春節は一月二十五日。
二月某日
まだ手
古本屋は『普通』に開いているほうがいい(みつづみゆきこ)/パンデミックとわたしと詩歌(笹川諒)
古本屋は『普通』に開いているほうがいい
2020年7月23日
じわじわと日常が奪われていってしまうのではないか。そう思えた2020年の春。
まちのちいさな古本屋である「古書みつづみ書房」は、書店、古書店、図書館が動きを止める中でも休まず通常営業していた。それは7月の今も続けていて、結局わたしは、大半の人が過ごしていた「巣篭り」「自粛」生活を経験していない。
店を休業して自宅でじっとしていなか
[インタビューズ]私の職業は消防士です/雨虎俊寛(後編)
2020年7月11日
(前編よりつづく)
——2月あたりからの睡眠や食事、体調や精神的な変化はありましたか?
4月から極端に変わりました
4月から極端に変わりました。4月からは休みの日に寝溜めするようになりました。免疫力を保つために酒量も減らすようにしたので体調が思わしくないということが無いように過ごしました。
発熱すれば出勤禁止になりますし、周囲へ不安をかけることになるので健康管理に
[インタビューズ]私の職業は消防士です/雨虎俊寛(前編)
2020年7月11日
——「自粛の要請」や「三密の回避」「Stay at Home」などによる影響はどんなものがありましたか?
恥ずかしながら浅学なもので文章が拙く、分かりにくい内容があるかと思いますがお許しください。
私の職業は消防士です 私の職業は消防士です。自粛の要請に関しては4月に入って職場からは世間一般の方より厳しめの禁止を含むものを言い渡されました。禁止の内容としては出勤以外
[インタビューズ]笑福亭智丸/Saint Lucaの聖磔(クルス)のそらに(李花業平)/不要不急の短歌(牛隆佑)
[インタビューズ]空気のような春/笑福亭智丸
2020年6月3日
——緊急事態宣言前、宣言中、宣言解除後、どんな心境だったりどんな行動をとっていたか教えてください。
宣言より前の2月下旬からどんどん仕事が無くなり収入も無くなって途方にくれていました。これを書いているのは6月の頭ですが、今も半ば途方に暮れています。行事ごとは世の中の経済活動よりもどうしても自粛に敏感で、復活は後手に回らざるをえ
二〇二〇春のフォトブック(藤田千鶴)/公園へ(飯田和馬)
二〇二〇春のフォトブック2020年6月3日
きのう、フォトブックが届いた。この春に撮っていた花の写真を一冊にまとめたものだ。14cm角、24ページのほんのちいさなフォトブック。写真は21枚。
3月、新型コロナウィルスの流行はすでに始まっていたけれど、京都市内に勤務し、1時間をかけて通勤する日々にあっても、実感はまだなかった。3月の歌会や講演会はつぎつぎに中止になった。でもまだまだ意識は低かっ